第十三話、出しての話

 山の奥にある、随分前から廃れて朽ち果てていたお屋敷を解体することになった。



 どんな一家が住んでいたかは知らない。

 門だけで古城の見紛うほど荘厳な屋敷に住んでいたから、金持ちだったことだけはわかる。その屋敷を捨てたのか、屋敷と共に滅びたのか。


 屋敷は壁に穴が開き、襖は破れ、梁が落ちて傾いていた。

 真っ暗な中進むと、廊下の最奥に錆びた鎖が落ちていた。奥を塞ぐ木戸の半分は倒れ、もう半分は傾いている。



 不気味な様子だが、作業をしていた者全員で意を決して入った。一歩足を踏み入れた瞬間、目を疑った。


 壁一面には血のような赤い文字で「出して」と書かれていた。若い者はえづいて外に飛び出し、一番年嵩の者は暗い顔で手を合わせた。


 何があったのかはわからないが、ここに囚われて不遇な生涯を終えた者がいたのだろう。

 哀れに思い、解体作業はこの部屋から始めた。


 壁を壊すと、開かずの間に光が差し込む。

 年嵩の者が「せめて明るくところに行かせてやりたいな」と頷いた。



 そのとき、朽ちた廊下に倒れた半分の木戸が陽光で照らされた。

 暗がりでは見えなかったが、筆で「決して開けるな」と書かれていた。


 思わず開かずの間の方に目を向ける。

 埃の溜まった暗い部屋の壁一面に「出られた」の文字が燦然と輝いていた。

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