第十四話、従兄弟の刺青の話

 法事で数年ぶりに会った従兄弟は、また刺青が増えていた。


 従兄弟は昔から血の気が多く、一度荒れると手がつけられないことが多々あった。

 十九で日の下を歩けない仕事を始め、勘当されたらしい。

 新年の祝いにも帰ってこないが、親戚筋の法事のときだけはこうして呼ばれて顔を出す。


 伯父の三周忌で殴り合いの喧嘩をしてから更に居づらくなったのか、従兄弟は挨拶も早々に寺の隅で煙草を吹かしていた。

 自分が覗き込むと、従兄弟は咥え煙草で「おう」と手を挙げた。


 自分は風聞にも親戚付き合いにも大した興味がなく、そこが気安く思われたのか、従兄弟は自分にだけは朗らかに話しかけてくる。

 怒鳴られたことも殴られたこともないから、自分も気負うことなく話しかけた。



 また増えたのかと聞くと、従兄弟は自慢げに喪服の上着を脱いだ。

 白いシャツに透ける肌には素の色がほぼない。腕には和彫りの鯉や牡丹、背中にはぐるりと骸骨が抱きついている。


 それほど増やす訳を聞くと、「隠してるんだよ」と答えが返った。

 何をと問うと、従兄弟は「業だよ」と笑う。


「誰にも言うなよ」

 シャツを脱いだ従兄弟の身体は、鮮やかな落花流水や髑髏の下に無数の手の痕があった。


 仕事を続ける限り、見るたびに刺青は増え、いずれ全身を覆い隠すのだろう。

 背の骸骨は、従兄弟が死んで火葬された後も、抱きついているのだろうと思った。

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