第二話、AIイラストの話

 AIイラストってあるでしょ。今話題の。


 うちみたいな零細のグラフィックデザイナーにとってはありがたい話ですよ。

 まだ法律もないからやれるうちにやっとけっていうのが上司の意向で。


 ネットに上がってる風景画なんかを軒並み学習させて、ゲームの背景として安く売ると結構ダウンロードするひとが多くて、そこそこ儲けになりました。


 まあグレーですよね。もうやってませんよ。

 倫理とか法とかそういう話じゃないんです。



 よく使わせてもらってたアマチュアのイラストレーターがいたんです。

 湖とか森とかを描くひとで使いやすいし、無名だから訴訟にもなりづらいだろうって。


 知ってます?

 AIって何度も画像を抽出するとちょっとした歪みが出るんですよ。空の雲を白い犬と誤認して動物っぽく描き出しちゃったり。


 そのイラストレーターの絵も、何度か抽出すると、

 元の風景にはいなかった女みたいなのが出てくるようになったんですよね。

 ちょっと不気味だけどその後も繰り返してたら、その女がだんだん大きくなってくるんです。


 大きくなるっていうか、画面のこっちに近づいてきてるんだって気づいたとき、もうやめました。



 しばらくして、自分の仕事用のアドレスに知らないアカウントからメールが来たんです。

 例のイラストレーターからでした。

 訴訟とか言われたらまずいな、もうやってないし許してもらえないかなと思って、嫌々メールを開いたんです。訴訟のがまだマシでした。


 文面はたった一行でした。

「あともう少しで完成だったのに、何でやめてしまったんですか?」って。


 今はもう転職しましたよ。

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