第一話、畑の話

 ある農家で採れた芋を蒸して割ったところ、中から人間の指としか思えない骨が現れた。

 芋を買った他の者たちも皆、毛髪や歯、喉仏の骨などが次々と出たという。


 畑の持ち主を問いただすと、昨年妻を殺して畑に埋めたと白状した。

 男が捕まった後、土を掘り返して現れた女の白骨死体はところどころが欠けていた。


 しばらくして何も知らない余所者が家と畑ごと土地を買って住み始めた。畑にはまた芋が成った。


 間もなく余所者は逃げるように村を去った。

 畑に残った芋を割ると、また泥に塗れた歯や毛髪や骨が現れた。村人総出で畑を掘り返したが、芋の根以外出てこなかった。


 事情を知らない人間がやってきて、畑で芋を作るたびに、ひとの身体の一部が混じる。


 今まで出てきたものを掻き集め、ひとの形に繋ぎ合わせると、全部でもう六人分になる。

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