第44話『アバターシノビブレイカー対電忍の裏側、ロケ地探訪いたします!』

第44話その1

『皆さん、初めまして。自分はアーカーシャチャンネルの管理人です』


 突如として読者の前に姿を見せたのは、どこかのファミレスを思わせるような改造メイド服に若干の巨乳、ポニーテールの女性だった。


 もしかすると、あの時に言及された小説サイトで活動するVTuberと言うのは、彼女の事だろう。


 担当イラストレーターも、前回のエンドカードを踏まえると……そういう事かもしれない。


『今回の対電忍は特別番組となっております。テレビアニメ化した場合には、色々と細部補完がされる可能性はあると思いますが……』


『MCの二人はあえて、あの表記ですが仕様となっております。担当声優がMCを行っている番組であるとイメージしていただければ、と。もしくはARアバターを使用しているようなパターンとか』


 しゃべり方が、どう考えても『あの』アーカーシャチャンネルに似ているかもしれないが、あくまでもこちらのアーカーシャチャンネルは別人である。


 いわゆるスターシステム的な客演であり、コミカライズなどでは人物自体が差し替えの可能性も高いだろう。


 彼女はあくまでも観測者に過ぎないのだ。作品に干渉できるような能力を持っているわけではない。


『それでは、アバターシノビブレイカー対電忍、特別番組の方をご覧ください』


 そして、アーカーシャチャンネルは姿を消す。


 一体、このタイミングで出てきた意味は……と思われるが、特に関係ないかもしれない。



 時間となり、今回は唐突にオープニングの方が先に流れるという演出となった。


 アバンなしのアニメは色々と存在し、後に様々な事情からアバンタイトルという概念が追加された、のかもしれない。


 ただし、今回のオープニングには何か微妙におかしな部分もあった。


 一部のクレジットがさくっとカットされているのである。オープニングテーマ、オープニングアニメーション、音楽担当などの主要なところは外れていない。


 それなのに、ストーリー構成などの一部クレジットがないのだ。これも一種の特殊OPなのかもしれないが。


 一方で、新規カットにダンジョンしんのバージョン2ともいうべき姿の人物がいたり、ウェルウィッチアが本格解禁されていたり……変更箇所もある。



「みなさーん、ここがどこか分かりますか?」


 次に映し出された場所、そこはオケアノスだが……CGアニメとしてのオケアノスではなく、まさかの実写だ。


 ある意味でも晴天なのだが、映し出されているのがオケアノスなので……と言う気配はするが。


 入り口には『ハッキングオブウォーゲーム』のアートギャラリーイベントも開催中の電光掲示板タイプの立て看板もある。


 この声自体、おそらくは聞き覚えがあると思う。レインボーローズだ。


「私たちは、埼玉県草加市にあるゲームアミューズメントパーク、オケアノスに来ております」


 こちらの声は月坂つきさかハルカである。今は二人とも声だけで、姿は見えていない。


 一体どこにいるのだろうか……と思われた次の瞬間、カメラが2人のいる場所を映し出す。


「今回のアバターシノビブレイカーは特別番組。対電忍本編に登場した実際のロケ地を巡りながら、本編をおさらいしていこうという形式となります」


 次の瞬間に登場したのは、レインボーローズとハルカの二人なのだが……コスプレをした担当声優、もしくはARアバターと言う形での登場だ。


 対電忍本編で登場する二人とは、若干の外見は異なるが……そういう事なのだろう。


 番組の方で表示されているテロップで左にいるのがレインボーローズ、右にいるのが月坂ハルカという事はわかる。


「早速ですが、こちらのアートギャラリーを……ではなく、内部に潜入したいと思います」


 レインボーローズの方はアートギャラリーイベントの入口へと向かおうとしたが、ハルカに制止されて別の方の入口へと向かった。


 向かう先はARゲームエリアである。混雑しているわけではないのだが、ある程度の客は着ている様子。ロケがあるからと言っても貸し切りでやっているわけではないようだ。


『二人が向かっている場所は、すでに開催が終了しているダンジョン配信王決定戦の行われたARダンジョンです』


『まさか、対電忍で展開されていたダンジョン配信王がリアルでも開催されていたとは予想外でしょう?』


『正直に言うと、自分もびっくりしました』


 どこかで聞き覚えある男性の声がする。どうやら、彼がナレーション担当の様子。


『対電忍特別番組のナレーションは、雪華ゆきはなツバキがお送りします』


 ナレーションは、雪華ツバキが担当する様子。さすがに、この辺りの人選は……と言う気配か。


 進行役の二人的な意味で、ナレーションは春日野かすがのタロウと思われたが……それではアートギャラリーが実施中の『ハッキングオブウォーゲーム』の宣伝になってしまう。


 あくまでも今回は対電忍の特番である。それを踏まえると、この人選に落ち着いた具合か?


 この後、CMに入って、ARダンジョンの紹介となった。



「このダンジョンは、いわゆる謎解きダンジョンゲームのような要素ではなく、アクション的な部分を強化した施設となります」


 MCの二人にダンジョンの紹介をしている人物は、オケアノスのスタッフの男性である。


 当然だが、彼は対電忍本編には出演していない。普通にオケアノスのARダンジョン担当のインストラクターだ。


「確かに言われてみれば、そういう風にも見えますよね」


 入り口の方を見回すハルカは、ダンジョンの出来にも驚くのだが、周囲の壁を生み出している技術にも驚いていた。


 AR……拡張現実の技術で生み出された特殊フィールド、このフィールドのおかげでARゲームの安全性が保障されているといってもいいものである。


 このフィールド自体はフィクションではなく、現実に存在するものだ。


 ゲームの技術が、ある意味でもゲーム外に転用できそうなチート技術を生み出しているとは、別の意味でも驚かされるだろう。


「ARでアクション要素が強いって、それこそ以前のアレですよね? パルクールの大会とか」


 レインボーローズは、ふと思い出すのだが……さすがにブラックバッカラ事件を直球で言及するわけにはいかないので、そこは言葉を濁した。


「そうですね。ARゲームの進歩は、ロボット系のガジェットを扱うARパルクールが普及しだしてから変化したような気もします」


「安全性を前面に出したARゲームも次々と出ていますし、それに……最近出てきた電動キックボードもARゲーム化されるという話もありますね」


 インストラクターの方も、ここぞとばかりに話すが……さすがに開発中の社外秘を出すわけにはいかないので、こちらも若干だが言葉を濁す。


『そろそろここで、本編のおさらいというかARダンジョンに関してをサクッと解説をやってしまいましょう』


 ツバキのナレーションが入り、ここで対電忍のプロローグと一部のリアルダンジョンが絡んだ部分の映像が出てくる。


『ARダンジョンはそもそも、ブラックバッカラ事件よりも前にも一部でダンジョン運営はしていたのです』


『丁度、あの時期は大ARゲーム時代と言うか、様々なジャンルのARゲームが生まれていました。ブラックバッカラ事件もその辺りが絡んでますね』


『ブラックバッカラって、AIアバターらしいという話もありますが本当なのでしょうか。SNS上でも様々な考察がいまだにされていて、謎が多い存在なのですが』


『それに、今ほどにダンジョン配信がブームになっていたわけではありませんし、ダンジョン配信もWEB小説で言及されているだけの世界だったという』


『その隙間に入ってきたのが、ダンジョン神のダンジョンで、VRダンジョンの人気を上昇させた立役者っぽいのですが……何かありますよね、あのやり方だと』


 映像の方を見てナレーションをしているのかと思ったら、まさかのナレーション台本は基本の進行以外の記述がない様子。


 それに加え、どう考えてもその先を知っていそうなツバキの発言の仕方も気になる所。


 何故、先を知っているような発言なのか? 何故、実在するオケアノスだけでなくゲームセンターが登場し、エンドカードに実在のファストフード店の許諾を得たコラボが実現していたのか?


 その理由はただ一つ、この対電忍こそが実際に起きた事件をベースにして作られたWEB小説だからである。


 それならば、微妙な箇所で矛盾するような個所があったとしても『存在しない光景』や『一部で捏造箇所がある』という風にもできるだろう。


 実際、ガーディアンが一部勢力の摘発を行った事実は対電忍本編とニュースでは一致する箇所もあるが、名前に関しては触れられていない。


 これに関して言えば……色々と諸事情はあるのだろう。


「このあとも、まだまだ続きますよー!」


 映像の方は色々と流れているようだが、ここでCMの模様。時間的には15分が経過した辺りか?


 ちなみに、この発言をしたのはレインボーローズの方である。

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