第43話その3

(??)


 とあるログが流れてきたのを月城つきじょうアサギが確認する。


 内容を見ると、それは決勝ラウンドに残った2名がリタイヤになったというものだった。


 確か、ハンゾウを追っていたような気がしたが……何があったのだろう?


 色々と困惑はするが、アサギはひたすらにゴールを目指す。


(向こうに駆けつけても意味はないだろうし、自分は自分のダンジョン配信を……)


 協力プレイもありと言えばありなのだろうが、今回はダンジョン配信王決定戦である。


 優勝者はAR部門でも1名だけだったのを踏まえると、VR部門も選ばれるのは1名だけだ。


 判断が鈍れば、逆に優勝を他の配信者に奪われる。もしくは決勝で全員リタイアにでもなれば、繰り上げされる可能性だってあるだろう。


 それを踏まえ、ルートを信じてアサギはゴールを目指すことにした。



(まさかの展開じゃないですかー、これは)


 ハンゾウの方は、別の意味でも打つ手なしな状態になっていた。


 何故かと言うと、あの忍者が残した置き土産に苦戦をしているからだ。


 巨大モンスターの類なので、VRダンジョンの敵キャラとして認定され、バグとも認識されていない。


 もしかしなくても、サーバー攻撃の元凶はこれなのでは……と言う疑いさえある。


 雑魚敵は仮に一掃できたとしても、これがスコアに集計されるかは不透明だ。


 逆にデータ的な意味でスコアに含まれたら、巻き添え失格になる可能性もゼロではない。


 むしろ、これをきっかけに大会が止められた場合、大損害もあり得るので……。


(これはさすがに最終手段を……)


 このまま大会を中止にでもしたら、それこそある人物に激怒されそうな気配はする。


 そして、最終手段として探索放棄ドロップアウトを選択するのも……と思われた1分後、まさかの展開が起きた。



『VR部門のダンジョン配信王は、月城アサギの手に!』


 男性解説の声を聞いたハンゾウは、別の意味でも驚いていた。


 まさか、雑魚敵を一掃しているような途中で決着するとは……と言う意味でも。


 探索放棄ドロップアウトは最終手段だったので、それを踏まえれば……その切り札を切らなくてよかった、と言う光景があった。


「そういえば、サーバーの方は?」


 ハンゾウの正体でもあるダンジョン配信者のアサギ……更に言えば、スノードロップでもある。


 彼女は、ある意味でも囮としてダンジョン配信王に参加していたのだ。その予感は、悪い意味で的中したが。


『何とかしましたよ。リーガルリリーの協力を得て、ね』


 通信経由のウェルウィッチアは、別の意味でも油汗をかいているのかもしれない。


 結局、色々と説得してリーガルリリーの力を借りてクラッカーを撃退したのだ。その条件は、色々とアレ過ぎるのだが……。


「どんな条件を付けたのですか?」


 それを聞こうとしたスノードロップだが、ウェルウィッチアは両手を合わせて無言のお願いをした。


(聞かないで、という事か)


 周囲の空気を察して、スノードロップは聞かない事にする。


「さすがに指定したイラストレーターのイラスト書いて……とか、メタすぎて言えませんからね。しかも、この後の……」


 ウェルウィッチアが全てを言い終わる前に、別のシーンに切り替わった。


 ちなみに、今の彼女がいたのはパソコンショップのレジだったりする。ものすごいタイミングで、客が来たというのもあるようだが……。



 その後、エンディングテーマが流れ、そこではある人物のやり取りが言及されることに。


 丁度、キャスト及びスタッフクレジットもこのタイミングで流れている。


『あの敵をどう思う?』


「所詮、あれは烏合の衆。ガーディアンにも及ばないような存在ですよ」


 サウンドオンリーと表示された人物とやり取りしていたのは、新宿支部長ことシノビ仮面である。


 今までは覆面をしていない印象だったが、ここにきて白銀の覆面を着用していた。サウンドオンリーの人物とはいえ、向こうには顔が見えているのはあるだろう。


 向こうに素顔がバレるのは都合が悪いのか……別の理由があるのかは、ここでは置いておく。


『アサギと言う人物が優勝した件については? 噂によると、彼女は例の大将軍と言う話もある』


「忍者構文の大将軍ですか。初耳ですね」


『あくまでシラを切るつもりか?』


「とんでもない。初めて聞く名前なだけですよ。もう片方のハンゾウの正体は……予想外でしたが」


『予想外とは? 大将軍よりも懸念する事なのか?』


「ええ。彼女はダンジョン配信者のアヤネですよ。SNSフォロワー数は150万……今は200万に到達しているかと」


 大将軍の方はスルーし、アヤネの方を逆にピックアップするシノビ仮面に対し、サウンドオンリーの人物は別の意味でも論点のすり替えをしているのでは、と思い始める。


 もしかしなくても、ガーディアンが何かを隠したうえでダンジョン配信王決定戦を行ったのでは、と。


 そして、最後に脚本担当と演出担当のクレジットが表示され、そのタイミングで……。


「ただ、彼女には別の顔もあります。ブラックバッカラ事件の影の立役者、スノードロップとしての」


 そして、シノビ仮面は通信を切った後に仮面を外す。ある意味でも普段の新宿支部長に戻った。


 その後に新宿支部の支部長室を彼は見まわし、ある物の置いてあるところで視点を止めた。


(まぁ、今回に限っては彼女の力を借りました、ね)


 そこに置かれていたのは、リーガルリリーが普段持っているはずのARガジェットだった。


 形状は明らかにスナイパーライフルのソレを思わせるのだが……。



『次回、アバターシノビブレイカー、対電忍。アバターシノビブレイカー対電忍の裏側、ロケ地探訪いたします!』


「次回は草加市のロケ地……というか聖地巡礼していきますよ。お楽しみに」


 CM明けに次回予告のロゴが表示される……と思ったら、まさかのこのタイミングで総集編である。この場合だと特別番組と言うべきか?


 総集編が入る場合、放送スケジュール上の都合、制作が間に合わないなどのパターンが多い。


 しかし、対電忍の場合は特殊な撮影技術などの関係もあってスケジュールの遅延はあり得ないのだが……。


 もしかすると、リアルの方で事件などが起きてしまって差し替えせざるを得なくなった、という事もあるかもしれない。


 つい最近、総集編は事前に作っておき、それを終盤に入る前のタイミングで流そうと思ったら……総集編を動画配信サイトで配信する羽目になった作品もあるとか。



 しかし、ロケ地と明言されている。


 対電忍はフル3DCGを駆使したアニメのはずで作画的な意味のスケジュールの都合上……というはずはない。


 ロケ地という事は、いわゆる特撮的な撮影方法も駆使し、あのCGを再現しているのだろうか?


 バックの背景は、草加駅前。そういえば、以前にエンドカードか何かで実際に草加駅に存在するお店が出てきたこともあった。


 もしかすると……? そういう事かもしれない。


 ナレーション担当は、まさかの月坂つきさかハルカとレインボーローズ。両者が一緒に読みあう的なノリの次回予告でもある。


 ハルカはナレーション扱いだが、レインボーローズは役名ありでクレジットされていたので、そういう事なのだろう。


 テンションはいつぞやのダンジョン配信王決定戦と同じだ。



 今回のエンドカードは、アルストロメリアとガーディアン春日部支部長のホップの二人。


 服装はガーディアンの制服ではなく私服だが、アルストロメリアが自宅のテーブルに置いているのは新型ゲーム機である。


 何かをプレイしているであろう光景なのはわかるが、アルストロメリアとホップ以外の登場人物は一切いない。


 モブキャラでも最低限いそうな雰囲気ではある一方で、二人でアクションゲームでもプレイしているのではないか……と言う光景にも見えるだろう。


 相変わらずだが、このゲーム機は実在する機種でメーカーの許諾済みだ。


 プレイしているゲームに関しては画面が表示されていないような角度のエンドカードのため、どんな作品をプレイしているかは分からない。


 誰の自宅かと言うのは、アルストロメリアの自宅で間違いはないだろう。テーブルのデザインも一致する。


 ゲーム機の横に飲み物などが置かれている様子はなく、別のテーブルから持ってきている可能性があるだろう。


 もしかすると、エンドカードの外に誰かがいる可能性もゼロではない。


 その一方で、何故にこのタイミングでこのエンドカードなのかは謎が残るだろう。


 しかし、そのエンドカードを担当した人物、それは『ヴァーチャルレインボーファンタジー』の挿絵担当イラストレーターだったのである。


 それに加えて、異色ともいえる小説サイトのVTuberを行うチャンネルの管理人のイメージイラストも担当していた。


 つまり、これがリーガルリリーの言っていた引き換え条件なのだろう。



【次回をお楽しみに】



「君たちは、現実と虚構の両方を走るランナーがいるといって、信じるだろうか?」


 対電忍放送終了後、突如として挿入されたのはこのセリフだった。ナレーションの声は対電忍には出演していない男性声優の様子。


 右上の違法ダウンロード対策のテレビ局のロゴのすかしもそのまま入っているのもあり、前回の予告の続きになるのだろうか。


 画面は黒バックではなく、あの一文に男性主人公と思わしきランナーのイラストが表示されていた。


 画像に関してはモザイク付きと言うわけではないのだが、不鮮明な箇所もあるのでまだ放送時期が決まっていない可能性も高いだろう。


 先週の放送でもこのセリフが登場したときは、対電忍が終わるのか……と言う話も拡散されたレベルの衝撃があった。


 今回も、その傾向は高いだろうか?


「パルクールは今、現実と非現実の境界線を越えて、新たなフィールドを走り出す!」


 次の画面では前回と同じ草加市が映し出されているが、対電忍とは違う施設なども映し出されているので、微妙に異なるというべきか?


 デジタルサイネージ広告には、何故か対電忍が映し出されている。これはどういう事だろう。


 フィールドを走るランナーも映し出されており、その装備は駅伝やマラソンランナーのようなものではなく、まさかのパワードスーツである。


 更に言えば、対電忍でも登場していたガジェット類にも似ており、これはいわゆるARガジェットなのではないか……というつぶやきも散見された。


「疾走せよ! 様々な思いを乗せたランナーたちよ!」


 ここは新たなナレーションパートで、そこに5人1組のようなグループで組まれているメンバーが何組かイラストで紹介された。


 その内の1チームは【チーム箱音はこね】と書かれているのを確認できたのだが、ユニフォームに書かれているわけではない。


 チーム箱音に限って言えば、男性3名と女性2名という構成で、いわゆる戦隊シリーズを思わせるようなメンバー構成でもある。


 このチーム名が示すものとは何なのか?


 そして、タイトル表示とともに……。


【パルクール・サバイバー・クロス・ビルド】


「カミングスーン」


 新番組予告は、微妙に新規情報が開示された程度の変化しかないように見える。


 カミングスーンではあるものの、10月放送予定と言う記述も新規で追加されていた。


 10月放送予定だが、正確な日時は決まっていない……と言うべきだろうか。


 今回も相変わらずの15秒のCMだが、気になる個所は存在したといえる。



『アバターシノビブレイカー、ブルーレイ、登場!』


 その後のCMで流れたのは、対電忍のブルーレイBOXのCMだった。


 このCMは右上にすかしがないので、放送外のCMと言えるだろうか?


 この掛け声を担当しているのは、祈羽おりはねフウマである。


【各巻12話収録。各4話収録×3枚BOX仕様】


【各BOXにCGモデルチームによる撮りおろしピクチャーボックスが付属】


【同封ブックレットは、デジタルバージョンのダウンロードコード付属】


【映像特典あり。BOX1はオープニング及びエンディングのノンテロップ版とCM映像及び特報映像を収録】


【BOX2はプロローグ+特典映像を収録予定】


 各特典は初回限定ではなく、永続特典になる模様。期間限定生産などではないので、入手に関しても予約すれば確実に手に入るだろうか?


 CMを見る限り、書き下ろし小説などはつかない様子。


 映像を見る限りでは第1話と第2話の映像が集中的に使われており、BOXなので第12話までは収録される割には……と言う気配も。


 ネタバレに配慮している可能性は否定できないが。


『BOX1は11月1日発売!』


 まさかのリリース日に驚く視聴者も多い。BOX1は11月1日に発売されるとのこと。


 値段の方もBOX1で9800円(税別)なので、お買い得感が大きい。BOX2以降も同様の値段の様子。


 これで採算がとれるのか……と言う声もあるが、特典を可能な限り同梱せずに値段を抑えた、と言うべきか?

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