第3話『対電忍を名乗る資格と刺客』
第3話その1
7月も大詰めになったある日、ダンジョン
近くに設置している冒険者カウンターというモニターには、数千人単位で人数が刻まれているのだ。
キャパシティとしては10万人位は何とかなるかもしれないが、それはエリア単位ではなく全体である。
現状で第5エリアを解放するわけにはいかないので、そうならないように人数調整は行うかもしれないが。
「人が誰もいないことが当たり前なダンジョンに、人が集まってきている?」
第5エリアにあるモニタールームから状況を見ていたダンジョン神は、驚きの表情でモニターに表示された光景を見ていた。
表情といっても、彼の場合はフルフェイスを装備している関係上、それを外部の人間が知ることは出来ないが。
ダンジョンに配置したモンスターも討伐報告が出ており、ダンジョンに人が入ってきたことは喜ばしい限りかもしれない。
しかし、オープン初日から一週間位は人がほとんどいなかったようなダンジョンに、このタイミングで大量の冒険者がやってきたのは想定外だ。
一体、何がきっかけとなったのか……ダンジョン神は動画などをチェックする。
「この動画か……リアル配信者ではないようだが、一体?」
該当する動画を発見し、内容をチェックするが普通の動画配信者とは何かが違うように思い始めた。
リアルの動画配信者がダンジョン配信するという動画はあるが、それらはリアルのダンジョンを配信するものが多い。
ダンジョン神のダンジョンは、いわゆるバーチャル空間ではあるのだが……。
その後、動画配信者及び配信サイトの実況者リストを調べ、該当する名前を探すも……発見できず。
その結果、動画を最後まで見た所でその詳細を知ることができた。
「なるほど。アバターと配信者の外見が同一だったのは、そういう事か」
ダンジョン神は、いわゆるバーチャル配信者の存在を知らなかった。
ダンジョン配信の情報を仕入れていくうちに配信者の存在は知っていたが、あくまでもリアルでの配信者のみである。
該当カテゴリーの動画を配信していないバーチャル配信者にまでは、さすがに手を伸ばしていなかった事情もあったのかもしれない。
その後、ダンジョン神は何かを考えるのだが……。
「ダンジョン配信がブームになって、色々と環境が変わりつつあるわね」
草加市にある、ゲーミングパソコンを扱うパソコンショップ、そこではオーナーと思われる男性が客をさばき、バイトがパソコンを修理する光景が目撃された。
その中で約1人だけが、修理とは別枠のノートパソコンでダンジョン配信の動画をチェックしている。
こちらもバーチャル空間系のダンジョンだが、ダンジョン神のダンジョンではない。
リアルのフィールドで行うダンジョン配信が迷惑配信者の影響で減り、逆に拡張現実やバーチャル空間のダンジョンが伸びつつあった。
そんな現実を彼女は目撃していたといえる。
身長は157センチ位だが、身長のわりに……という人物かもしれない。私服は安物だが、露出は非常に少なめを徹底している。
20代前半という割には……という外見の女性だ。
「あの調子だと、現状で引き上げて正解かな?」
彼女もダンジョン配信者の一人ではあったが、リアル配信者による迷惑行為動画の拡散などもあって、引き上げようとも考えている。
それだけでなく、ここ最近は忍者構文などの存在も、それに拍車をかけたといえるだろうか?
彼女も忍者アバターで活動していたので、下手に忍者構文の忍者と同一では、と拡散されては
さすがに、そこまで悪意を持って炎上させるような勢力は……いるかもしれないが、埼玉県内ではガーディアンの活動もあって、そこまで騒動にはなっていないと言える。
『修理班で空いている人がいたら、連絡頂戴!』
耳につけているインカム経由で、男性の声が聞こえる。
お客が故障したゲーミングパソコンを持ってきたので、その状態を見てほしいという事だろう。
声を聞いて、彼女はマスターだと認識はしたが、自分は修理班ではないのでスルーを決め込む。
丁度、彼女の隣にいた女性が修理班だったので、彼女の方が向かう事にはなったが。
「バーチャル空間のダンジョンが流行りだしたら、それはそれでうちの方が大変になるのかねぇ……と」
VR系のRPGも流行っているが、こちらで本格的なダンジョン物というと、指折り数える程度しかない。
それを踏まえたうえでダンジョン配信が流行っている可能性もあるが……どちらにしても「諸説あります」などで正確なソースはないだろう。
「対電忍とは、一体……」
彼女は忍者構文に言及されている
バーチャル空間で活動する忍者という意味であれば、それこそ無名のバーチャル配信者などもいるだろう。
それこそ忍者構文に便乗し、『バズり』狙いで対電忍を名乗るものもいるかもしれない。
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