第2話その3

『忍者とはありとあらゆる炎上を阻止するために存在する、対電脳の刀。忍者とは悪意ある闇の全てを斬る存在でなければならない。彼らが斬るのはあくまでも悪意ある炎上であり、それ以外のものを切り捨ててはならない』


 忍者構文が300年以上前から存在していたのかというと、様々な疑問はある。


 しかし、忍者といわれても戦国時代から江戸時代辺りまでしか活動していなかったのでは……という声も諸説ありだが、存在しているらしい。


 対電脳の刀とは言うが、300年以上前に『電脳』というものが定義されていたのか、疑問は残るばかりだ。


「もしかすると、ここで定義されている300年前と我々の歴史の300年前が違うのでは?」


 クーラーも若干効いているような部屋で情報を探していたのは、男性社員である。


 今回は特に企業側のオファーを含めた商談があるわけでもなく、担当している案件が消えたわけでもない。


 時間に若干余裕ができたことで、お昼を食べ終わったあたりからネットサーフィンを始めていたのだ。


 これも、いわゆるダンジョンしんに関係する手がかりを発見するきっかけにもなるかもしれないし、正体を探ることも可能だろう。


 その中で、彼はとある事件に関する記述を発見した。


(このニュースは……? 海外では取り上げられたようだが)


 ニュースの内容としては『海外で大量破壊兵器が無力化された』という内容だった。


 日本として無縁ともいえる話題かもしれないが、そもそも日本で大きく報道された形跡はない。


 報道されても、小さなネットニュースやコンパクトにまとめられたオチではあるのだろう。


(大量破壊兵器が無力化された原因は……AI?)


 この事件の真相は、今も語られる気配はない。


 一連の大量破壊兵器無力化をきっかけにして、海外ではざっくりと言えば『デスゲーム禁止法』が成立した。


 これがあるからこそ、今の地球には一切の戦争がない。


 今はSNS上における炎上や転売ヤーなどの暗躍、コンテンツ流通を妨害しようという勢力に差し替えられただけである。


「そもそも、海外でも同じようにダンジョンが生み出されていた、という事なのか?」


 海外でもダンジョン神のようなAIが存在し、ダンジョンを生み出していたのか?


 それ以外の分野で似たようなアバターを生み出し、新たなコンテンツ流通を生み出していたのか?


 真相は分からずじまいだった。


 考えるよりも手を動かした方が早い、そう考えた男性社員は別の案件に関する情報を集めることにする。



 その一方で、ダンジョン神のダンジョンを配信した動画が『バズり』していることに関しては、様々な所で声が聞かれることに。


【本当にダンジョンなのか?】


【ダンジョンというより、街なのでは?】


【テーマ―パークとかイベントなどの完成予想図を仮想空間に作ったパターン?】


 そういった声も多い。この時にはリアルダンジョンが縮小傾向にあり、それこそ拡張現実を使用したダンジョンが増え始めている時期でもある。


 現在進行形で、拡張現実タイプのダンジョンは増えているのだが……。


「仮想空間のダンジョン、か」


 自室のパソコンで該当する動画をチェックしていたのは、祈羽おりはねフウマだった。


 一連のテレビ番組では祈羽の名前が知られることとなり、ある意味でも認知という意味では成功したかもしれない。


 その一方で、まとめサイトなどの炎上勢力にも名前を知られたのもあり、そこを利用されてしまう結果にはなったが。


 なお、その悪用しようとしたまとめサイトはガーディアンが一掃をしている一方で、その事実をフウマは知らなかった。


「特に用意するものは……」


 ダンジョン神のダンジョンでは何かが市販されていることはなく、自前で用意する必要性がある。


 アバターを用意するのは必須になるだろうが、作る必要があるのか、買う必要があるのかさえ分からない。


 アバターを用意できても、そのあとにパソコン以外の機器を買う必要があるのか……手探りの連続にはなるし、予算の問題もあるだろう。


「相談するか」


 フウマはテレビ出演の際に両親へ相談したときは許可をもらえたが、今回もうまくいくとはわからないこともあり、若干不安にはなる。


 それでも、彼には祈羽一族を盛り上げるという使命があった。両親も盛り上げようと頑張っているだけに、それを無駄にはしたくはない。

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