第55話『新たなるパルクールフィールド』

第55話その1

『覚えている人がいるかどうかは不明だけど、アルストロメリアよ』


 唐突に画面に出てきたのは、ガーディアン草加支部の支部長であるアルストロメリアだ。ビジュアルはテレビアニメ版だが……。


 彼女の場合、実写版でも出番はあるはずなのでは、と言う中の登場である。


 実際に言えば、実写版での出番はほぼ終わっているという気配もするかもしれない。オールアップ報告はないので、まだ出番はあるだろう……と言う含みか。


 アルストロメリアはガーディアン所属だが、今回は実写版の制服で登場している。


 アニメ版も実写版も制服の違いは微妙な箇所のみだが……。


『皆さんも、唐突にアニメ版最終回から実写版と言うか特撮版に移行して、思考が追いつかない人もいると思います』


『実際、この対電忍の舞台が忍者構文と言う名の存在に振り回されるメディアと言うか、コンテンツと言うか……』


【しばらくおまちください】


 彼女が何かを言おうとした瞬間、唐突にお花畑が描かれた1枚絵に文字の書かれた画面に切り替わった。


 一体、どういうことなのだろうか? BGMも流れているが、明らかに対電忍のサントラ未収録な風景とともに流れているBGMだろう。



『向こうから直球のネタバレを【まだ】ばらすな、という話が来ました』


『これがネタバレなのかは、読者のご想像にお任せしますね』


 アルストロメリアは、右手で頭をかくのだが……状況をまだ理解していない。


『実写特撮版のアバターシノビブレイカー、こちらはアニメ版とほぼラインが同じことは説明済みですよね?』


『あとは一部キャラがアニメオリジナルで、実写未登場……と。しかし、ガンライコウのような逆輸入キャラはいるので、色々と向こうも事情があるのでしょう』


 他にも説明するような個所はあるかもしれないが、またもやネタバレで放送が止まってしまうのもアレだろう。


 色々と言いたいことはあるのだが……そこは止む得ず黙るしかない。


『今回は、こういうフリップを渡されていまして……』


 視聴者と言うか読者に見せているフリップには、VRダンジョンとARダンジョンの2つとそのほかのARゲームという3つの項目が書かれていた。



『元々、対電忍がダンジョン配信をメインとしたお話なのは、ご存じだと思います。仮想空間を舞台としたVRダンジョン、拡張現実を使用したARダンジョン……この2つですね』


『それとは別に他のARゲームがあって、それを無理矢理に統一して支配しようとしたのが、ニューダンジョンしんでしたが……あっさり倒されましたね。別ゲーのかみは……』


【しばらくおまちください】


『えっ、今のもダメなの? ネタバレじゃなくて……パロディ的な意味で? 書籍化とかしたら許諾を取って公式に載せられるパターンになるとは思いますが』


 またもやアルストロメリアの画像からお花畑に変化する。まさか、またネタバレを……と思ったら、今度は違う様子。


『このパターンって、やっぱり慣れないですよねぇ……と。これもいわゆるメタ構造と言うものかもしれませんが』


 アルストロメリアが見えない場所にいるであろうスタッフに対し、愚痴……と呼べるかどうか不明なものをこぼす。


 いわゆるツッコミかもしれないが。



『とりあえず、一つだけ言えるのは……ニューダンジョン神がやりたかったのは、全てのコンテンツの統一というよりは支配なんですよね』


『現実でもあるようなライバル不在で単独会社が世界で唯一みたいな設定の、アイドルものとか……その辺り。確証は持てませんが』


『一方で、彼はダンジョン配信がドル箱コンテンツになるのではないか、とも考えていて、VRもARも関係なしに……』


『しかし、ニューダンジョン神は下手に介入しようとして、他の勢力にフルボッコされて炎上……と言うオチとは思いますが。やり方を間違えたんですよ、きっと』


『炎上勢力は、どのみちお金しか目がなくて暴走するパターンが多いので、そういう意味ではテンプレの敵ですよね』


 その後も彼女は話を続けていくうちに……。


『時間がない? このまま1話丸ごとトーク枠にして対電忍の設定解説回とかにしませんか?』


『えっ!? 実写版だとそこまで余裕がない? アニメ版だとロケ地訪問とかやったじゃないですかー。それの実写版という事ですよ』


『エンドカードとかやっておいて、実写ではエンドカードも実装せず……かなり無謀ですよね、これって。特撮でエンドカードを扱うケースって、確かにレアですけど』


『……下手にトークだけでつないでも、読者が離れる? 実際、アーカーシャチャンネルっていうVTuberのチャンネルがあるじゃないですか、あそことコラボして……』


 これ以上の単独トークを許すと、それこそ文字数稼ぎと思われてしまうためか、まさかの強制終了となった。


 やはり、このコーナーは人選を間違えると大変なことになるのは間違いない、と言うのは分かっただろう。


『……それでは、実写特撮版対電忍、お楽しみください』


 ここだけは、何とか……と言う気配になる。下手に引き延ばしたら、ネタバレを1個や2個だけではない。それ以上話しかねないだろう。



『ARパルクールに乱入した忍者軍団。それはSNS炎上勢力だった』


『それらをガーディアンが一掃していく一方で、デンドロビウムも大型ARガジェットことアガートラームを使用し、数百以上の忍者アバターを一掃した』


 本編開始時に流れる映像は、実写版ではあるのだが……デンドロビウムの使用するアガートラームの影響でアニメ版と錯覚するだろう。


 実際、アガートラームはCGで描かれているので、実写版とはいえ、アニメ版と勘違いする視聴者はいるかもしれないのだ。


 ナレーションはガーディアン秋葉原本部の本部長である男性だが、彼の名前は不明である。


 オープニングでのクレジットでは、途中で『ナレーション・秋葉原本部長』というクレジットはされているのだが、本名は不明だ。


【本作はフィクションですが、忍者構文は実在します】


 画面の下のテロップには、毎度の一文が表示されている。


 本作品は配信と言う関係で字幕放送非対応だが、地上波では字幕放送があるらしいという話はあった。


 場所の方は西新井のARパルクールフィールドだが、やはり実写版だとアニメ版とは違って見覚えのある……という視聴者が多いだろう。


『そんな中、祈羽おりはねフウマは決断を迫られていた』


 次の場面では、フウマが後ろの方を振り向こうというシーンがあった。


 丁度、この辺りで前回は終わっている。


『さて、どう動くべきかな』


 ここで、彼のナレーションにおける決め台詞が流れ、本編が始まる。


 いよいよ、ARパルクールも決着をしそうな雰囲気だった。



【デンドロビウム対フウマ、遂に決着へ!】


【勝者はどちらだ?】


 提供の上下にあるスペースでは、上に最初のテロップ、下には次の……と言う具合。


 まさかのオープニングカットである。


 オープニングがアニメで言うエンディングの位置にある実写ドラマや特撮では、オープニングカットはめったにない。


 オープニングと言う要素がなく、スタッフ及びキャストクレジットをエンディングに集約する作品であれば、このような形式でも違和感はないだろう。


 配信だと時間オーバーでも特に問題はないように見えるが、実写版対電忍は地上波でも放送されているエリアがある。


 放送時間の枠に収まらなかったら本編カットもあるため、こういう形を取った説もあるが……詳細は謎に包まれていた。

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