第68話その3
デンドロビウムの目の前に姿を見せた
意匠も異なるのだが、そこまで気にしない人間にとっては、これを蒼影としてSNS上に拡散するのは明らかだ。
(こういう形の偽物を投入してくるとは、予想外だけどね)
若干のノイズが混ざる蒼影を目の前にして、デンドロビウムはふと思う。
AIで作られたとはいえ、仮にも蒼影である。デンドロビウムは警戒し、様々なアクションで翻弄していくが……。
「やっぱり、そういう事か」
目の前の蒼影はウドの大木と言うわけではない。
だからと言って……100%劣化コピーと言うには、雑魚の戦闘兵レベルの能力ではないので……そういう事だろう。
それを把握した上での、デンドロビウムの行動は、ふと取り出したUSBメモリサイズのARチャフグレネードだったのである。
「反AI勢力であれば、これがどのような性能かは分かるだろう?」
チャフグレネードの起動と同時に、蒼影のAIアバターは瞬時に消滅した。
それだけではない。一部のギャラリーも実はAIアバターの類だったのである。
全ては、仕組まれていたといってもいい。
その後、AIではなかった一部の炎上勢力とデンドロビウムのバトルが始まるが、いわゆる格闘ゲームにも似たようなバトルシーンとなった。
特撮ではある一方で、戦っている炎上勢力はチャフグレネードの効果がなかったアバター勢。
生身ではないが、戦力差は圧倒的なものと言えるかもしれない。
「まさか、蒼影のコピーを残して、自分たちは高みの見物でガーディアンが炎上するのを待ち、覇権コンテンツが自分たち……そういうストーリーを想定していたようだが」
ある意味でも彼女が秋葉原本部の隠していた切り札と言われても、何ら膨張ではなく……事実と言える位には。
デンドロビウムの正体に気づかなかったこと、それが炎上勢力にとってもニアミスだったのかもしれない。
まさか、あの作品のデンドロビウムのオフィシャルコスプレイヤー、それが彼女の正体とは誰が思っただろう?
(敵を欺くには、まず味方からとは言うが……この場合は視聴者を含め欺く形だが)
ブービートラップの正体、それはネットミームとしての忍者構文そのものだったのかもしれない。
あれを放置すれば、いずれはSNS上で悪用されていき、それこそリアルの事件を引き起こすだろう。
フィクションの現実化、それはネガティブな意味で実現されるべきではない。
だからこそ、密かにデンドロビウムが動いていた……という事になるだろうか。
「メタ構造自体がブービートラップ、そう言えなくもない展開ではあるが」
一連の勢力を一掃したデンドロビウムは、ふと大空を見上げる。
その空は、間違いなく……。
『今こそ、決着をつける時、そう思わないか?』
一方の草加駅に姿を見せたヒャクニチソウは、女性声のボイチェンを使っているわけではなく、本物という事だろう。
外見こそは一部リニューアルが見て取れるデザインであることは、間違いないのだが。
一方で、何故にこのタイミングで、彼女は姿を見せたのか? 何故、この27日を選んだのか?
彼女としては、フェア・リアルのゲリラ配信に関心はなかったのだろう。あくまでも、目的は目の前にいる祈羽フウマだ。
むしろ、その影響がない27日ならば……と。しかし、30日までにはタイムリミットが迫っている時期だ。
何が起きるかは分からないにしても、SNSの一部勢力が30日に言及している以上、炎上勢力が行動を起こす時期が30日なのかもしれない。
「決着?」
『そうだ。
「あの忍者も、その決着に関係があるのか?」
『あれは違う。ガーディアンにでも任せる方向だ』
「何で、決着をつける気だ?」
『このバトルで決着を付けよう……と言いたいが、あの炎上勢力が原因で逆効果になることは避けたい』
「つまり、あの勢力は関係ないと?」
『どうとでも受け取るがいい。こちらは、あの勢力に便乗したと認識されるのは困るのでな』
ヒャクニチソウとしては、明らかに向こうの便乗勢力とは無関係なことをアピールしたいのだろう。
表情を乗せない発言にも聞こえるが、心境としては……。
『勝負は2日後、29日に……』
この発言の後、何かが続くような展開ではあったが、ここでエンディングテーマが流れ始める。
まさか、この発言がフラグだったりするのだろうか?
「制作委員会やお気持ち表明勢力、SNS炎上を行うようなインプレスパム……そうした勢力を完全一掃する仕上げは……」
スマホを片手に、ある動画を目撃していたのはガーディアンの秋葉原本部長の男性だった。
今まで出番が最後のナレーションだけな状態が続いたため、出番がないのでは……と言う中での出番である。
彼のいる場所は秋葉原駅のホームではなく、改札口より少し離れたエリアだ。
そこには、様々なライトノベル作品の宣伝を行うデジタルサイネージが展開されており、その中には……。
【
しれっとだが、池袋支部支部長に似たデンドロビウムがメインビジュアルを飾る劇場版のデジタルサイネージも存在していた。
「これだろうな」
彼が視線を向けた先、そこにはあるARゲームの開催を知らせるデジタルサイネージが展開されていたのである。
スタッフクレジットなどは特撮版なので、最初のオープニングの段階で全て……という事なので、普通にエンディングテーマが流れている状態でも本編は続いているだろう。
【ARバトルフェスタ、9月29日・30日の連日開催! 出場者、当日エントリー枠を含めて募集中】
それは秋葉原の特定エリアを貸し切って行われるARゲームだったのである。ビジュアルには、ゲスト枠で参加するリアル配信者の姿も見受けられるだろう。
その一方で、様々なプロゲーマーも出演予定で、ある意味でもここに炎上勢力が襲撃してくるのでは……というフラグも考えられる。
更に言えば、当日エントリー以外の事前エントリー枠は受付終了しているというおまけ付きだ。
こういう時には、デジタルサイネージだと修正が容易なので……と言うのはあるかもしれない。
紙のポスター時代には、日程の変更部分だけをシールで貼って修正したり、と言うアナログな手段が用いられていただけに。
『次回、アバターシノビブレイカー、対電忍は……』
ナレーションは秋葉原本部の本部長の男性。天丼かもしれないが、テレビアニメ版のガンライコウとは違う人物である。
実際、今回のオープニングでも彼の名前はクレジットされていた。
オールアップしたという報告は公式ブログなどでもないため、スケジュールの関係でナレーションのみが続いていたのかもしれない。
今回、まさかのサプライズともいえる出番にはなったが。
その中でも、相変わらず、エンディングテーマは引き続き流れ……。
【コンテンツは、加速度的に入れ替わっていく】
このテロップが表示されている場面では……。
「これが、あの真実!?」
自宅でSNSのトレンドを調べていた
それはヒャクニチソウに関するものだったのだが……。
その記事がピックアップされると思われた、次の瞬間には秋葉原にあるARサバイバルゲームを扱うゲーセンの様子が映し出されていた。
まさか……?
【秋葉原全域を巻き込む、ARサバイバルゲーム、その真相とは?】
この場面には、まさかともいえるヒャクニチソウの姿もあった。ただし、ARメットは外していないので正体不明のままだが。
その一方で、実写版という事でアクション場面の吹き替えするためのスーツアクターやスタントマンがヒャクニチソウを……という疑問も浮上するのは事実だろう。
実は、ヒャクニチソウのARメットをかぶっていない素顔はオープニングの段階でシーンとして挿入されていたからだ。
秋葉原で行われていたのが、ARゲームとしてのサバイバルゲーム……いわゆるARゲーム版FPSと言うべきか?
「炎上勢力が恐れていた30日の真実、それは……」
この場面で登場したのは、まさかのツバキである。彼もゲーム配信者なので、ここに姿を見せることは想定されていそうではあるのだが……。
彼が告げようという真実、それは何なのか? その内容は、あの時に見た事実と半径があるのか?
どちらにしても、次回は炎上勢力等が関与する余裕はないのだろう。
実際、今回で炎上勢力と思われた忍者はガーディアン草加支部とヒャクニチソウとフウマの二人によって一掃されたのだから。
【次回:ブルーオーシャンオブコンテンツ】
このテロップが表示されたシーンに姿を見せているのは、サバゲ―で使われているようなスーツを着たレインボーローズと
、一体、これが示すものとは何なのか? やはり、アニメ版でもやったロケ地訪問のような展開なのか?
本編自体が今回で決着していないのは明らかだろう。ヒャクニチソウと祈羽フウマの決着も持ち越され、他の課題はまだ残っている。
ブービートラップも無事に解除され、炎上勢力の勢いも減ったのは目で見てわかるが……。
30日まで、あと2日しかない。何を……行おうというのか?
「思いっきり、ここで戦っちゃいますかなぁ、と。覚悟してくださいね、レインボーローズさん、月坂ハルカさん!」
次の場面では、レインボーローズとハルカの目の前に足だけが見える状態である人物が姿を見せる。
ボイチェンなどをしていなければ、この声の主はフェア・リアルという事になるが……。
【祈羽一族とは違うコンテンツの可能性を模索する】
【その答えを、30日までに出せるのか?】
提供テロップが別の意味でもメタ発言を展開している。
30日とは、やはり決着までのタイムリミットではなく、コンテストなどの締め切りのような期限としての30日なのかもしれない。
提供バックでは、レインボーローズとハルカのペアが、フェア・リアルとある人物のペアとARサバイバルゲームでバトルをしており、その場面で長く時間を取っているように見えた。
一体、どういうことなのか?
【次回もお楽しみに】
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