第69話『ブルーオーシャンオブコンテンツ』

第69話その1

【9月30日】


「これが、あの真実!?」


 自宅のパソコンでSNSのトレンドを調べていた雪華ゆきはなツバキは、何かを発見して驚く。


 時は流れ、遂に9月30日、ARバトルフェスタの最終日でもある。


 その中で前半に当たる29日にもイベントは実施され、その内容こそがヒャクニチソウに関するものだった。


(忍者構文、それが実はSNS上のトレンドを独占するために仕組まれたものと言う噂もあるが、こういうこととは)


 ツバキはニュースサイトの記事を見て、ふと思う部分はあった。


 ダンジョンしんのダンジョン、転売ヤー炎上の流れ、秋葉原決戦……様々な事件が忍者構文と類似するタイミングで発生している。



 この場面の後、次に切り替わったのは……西新井にある駐車場ともいうべき場所だった。


 駐車場と言うには、車は一切止まっていないように見えるが、解体作業中などではない。


 車を一切入れない状態で撮影されている、と言うような展開である。


「この場合は久しぶりと言うべきか」


 次の場面で駐車場に姿を見せた人物、それはARメットを装着したホワイトクラッカーだった。


 何故に彼が、このタイミングで登場したのかは定かではない。どういうことなのか?


「一連の忍者構文を巡る事件、それは先代の祈羽おりはね一族によって、300年前から行われていたシミュレーションだという事が判明した」


「それも、今のようなSNS炎上などを起こさないようにするための……」


 彼は周囲を見回し、何かを察する。周囲にいるのは、おそらくは撮影スタッフのみだろう。


 何故、周囲を見回したのかは分からないが。


「あの時のフェア・リアルの配信は、全てここにつながっていた。と言うべきかもしれない」


「SNS炎上で得をするのは、ごく一部のインプレスパムや特定のインフルエンサーだけだろう。大多数は得をしない」


「だからこそ、こうした悪質な勢力を一掃しようというキャンペーンで展開したのが、一連の流れだったのだ」


「それに加え、この対電忍は元々がSNS炎上の仕組みをざっくりと解説するために作られた作品でもある」


 ホワイトクラッカーは、まだ話を続けている。


 対電忍と言うコンテンツが生まれることになったきっかけ、SNS炎上で得をする勢力はわずかであること……様々なことを語っていた。


「以前にもコンテンツ炎上を目的とした勢力がいることは語ったが、それでも炎上勢力は未だに残っている」


「対電忍が放送され、ヒットしたとしてもそれは変わらない。結局は他の作品で炎上させ、利益を得ようとする勢力がいる限り……この戦いは終わらないだろう」


「それは残念ながら……リアルでも一緒と言える。我々が求めるのはただ一つ、SNS炎上と言うワード自体が表舞台で使われることのない世界だ」


「フィクション内でそれを何度言及したとしても、それがリアルのユーザーに伝わって、本当の意味でSNS炎上がなくなるのかは……」


「やめておこう。一連の決着が図られた中で、どのようなことを言ったとしても後付け設定として片づけられてしまう可能性は高い」


「対電忍は、完結したのだ。このエピソードをもって」


 一体、彼が何に言及しようとしていたのかは分からないが、一連の決着が図られたのは事実らしい。


 そして、それがもしかするとツバキの目撃したもののいったんなのかもしれない、と。



『前回の、対電忍はーーー!!』


 次のシーンでは、天丼ネタではあるのだがガンライコウのナレーションで始まった。


 特撮版なのに、アニメ版のガンライコウのナレーションという……?


 そういえば、先ほどのホワイトクラッカーのシーンはどういう流れで挿入されたのか?


 あのシーンが冒頭のトークパート代わりで挿入されたとしたら、このナレーションは……!?



『フェア・リアルが暴いた祈羽一族の真相、それが全世界に配信されたことで、一連のSNS炎上を含めた事件は終わりを告げることに』


『更に言えば、池袋支部の支部長、デンドロビウムの正体が……まさかの、という展開でしたね』


 流れている映像はフェア・リアルの配信シーン及びデンドロビウムのシーンが使われている。


 以前のような意図的な割愛シーンはないように思えるが、ナレーションで言及されていないシーンはカットされているだろう。


『その一方で、シノビ……じゃなかった、新宿支部長が何か含みを持っている発言していますよね』


『おそらく、アニメ版経由の人にとってはネタバレになる可能性が……という伏線。アニメ版と特撮版ではクール数も違いますし』


【本作はフィクションですが、忍者構文は実在します】


 対電忍のアニメ及び特撮版はフィクションである。しれっと、ナレーションのシーンで例のテロップが表示された。


 ナレーションとは別に、デンドロビウムのシーンも描写されているが……言及為しだろうか?


『とにかく、ブービートラップも何とかなりましたし、それに……ここは言っちゃうと別のネタバレになるから、言わなくてもいいかな』


 しれっとだが、デンドロビウムの正体は言及なしに。やはり、アニメ版との兼ね合いか。


『それでは、本編の方をどうぞ!』


 そして、本編は始まろうとしていた。


 そこで描写されるシーンは、色々な意味でも想定外の物だったのである。



【9月30日】


 まさかの9月30日には驚きを隠せない視聴者も多いだろう。


 その一方で、29日の部分はコミカライズやスピンオフでフォローされるのではないか、という視聴者もいる様子。


 それを踏まえると、ある意味でも最終回直前で30日に言及されるのは……そういう事かもしれない。



 場所は秋葉原、駅前は既に大勢の人だかりができているといってもいい。まるで、土日の歩行者天国解放日を思わせるだろう。


 出勤と言うサラリーマンもどういう集まりなのかは分からない、と思われたが近くのデジタルサイネージに足を止め……それを見て把握する。


【ARバトルフェスタ、9月29日・30日の連日開催! 本日最終日。豪華カードも実現!】


 最終日という事もあり、イベントプログラムの記述なども変更されている。これが別の意味でもデジタルサイネージ海苔店だろうか?


 ポスターの場合、記述変更もそうかもしれな一方で、悪質な転売ヤーなどがポスターをはがして盗むという事もザラだった。


 そういったケースを踏まえると、アナログもデジタルもほぼ似たような気配かもしれないが。


 このタイミングでオープニングテーマが流れ始める。



「バトルフェスタ、か。まさか、こういうイベントが用意されていたとは」


 秋葉原にあるARゲーム施設、そこで開催されたのがバトルフェスタだった。


 バトルフェスタのフィールドは屋内と屋外の2種類があり、今回のメインとなるのは屋外イベントである。


 屋内でもバトルは展開されるが、ARリズムゲームとARパルクールの屋内トライアルバトルの2種類で在り、雪華ゆきはなツバキには若干のジャンル外と言えるだろう。


 ARパルクールに関しては、姉のアルストロメリアがプレイヤーなので、その縁でプレイしているのだが。


 下段にはオープニングが流れている中で、キャストクレジットがあり、最初に表示されたのは雪華ツバキと祈羽おりはねフウマだった。


 その次は、まさかともいえる……。


【レインボーローズ】


月坂つきさかハルカ】


春日野かすがのタロウ】


 2番目は、まさかの3名と言えるだろう。ツバキとフウマも単独クレジットではなく、2名同時で役名の下にキャストがクレジットされている形だ。


 確かに本編としても色々な意味でメインキャラだった3名であるのは間違いないが……。


【ビスマルク】


【リーガルリリー】


【ガンライコウ】


 3番目もガーディアンメンバーとしては順当だが、こちらも想定外と言えるメンバーだった。


 別勢力の人物だったビスマルクとガーディアン渋谷支部支部長のリーガルリリー、特撮版ではゲスト扱いのガンライコウ。


 ガンライコウは、補足として(声)とクレジットされていたので、ナレーションとは別に声だけ出演なのだろう。


 他にも様々なキャストが出演するが、サプライズゲストなキャストは、まだ出てこない。


【デンドロビウム】


 クレジットも終盤の方になり、やはりというかデンドロビウムがいる。


 彼女がある意味でも特撮版ではメインというか、ラストのクレジット枠なので……と思われた矢先、ある人物のクレジットが表示された。


【フェア・リアル】


 ガーディアン草加支部のメンバーでもあるフェア・リアルが今回は最後にクレジットされていたのである。


 キャストは、実在するVTuberであるフェア・リアル本人。


 いわゆる、別キャラを担当している声優が本人出演する際、キャスト名のみクレジットされる、あのパターンだ。


 これが意味するものとは一体何なのか? 真相は、この後に分かるだろう。 

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