第61話その2
【フェア・リアルの配信中】
次のシーンで映し出された場所、それはガーディアン新宿支部の支部長室だった。
アニメ版と特撮版で支部長室が変更されていることはないのだが、新宿支部のみは小道具などで変更が複数ある。
何故かと言うと、アニメ版ではシノビ仮面とある時期から名乗っていたのが理由だろう。
特撮版では新宿支部長でクレジットされているので、アニメ版経由で特撮版を見ている視聴者は「?」と頭の上に浮かんでいるかもしれない。
この支部長室、実はと言うと誰もない無人の部屋だ。何故かと言うと、あるものがリモートで起動しているから……と言うのが理由のひとつである。
その起動していた機械と言うのが、支部長の机に置かれている小型サーバーにも似たような機械だった。
『何を考えている? 新宿支部長』
小型サーバーの起動後、そこに姿を見せたのはブラックバッカラである。彼女は、いわゆるアバターなので実体は持たない。
ここに呼ばれたことは彼女としても想定外らしく、疑問を抱いているのだが……。
過去に草加支部のガーディアンメンバーであるブラックローズが、ARガジェット経由でブラックバッカラのデータを運用したことはある。
しかし、その時に起動できたデータでもすべてと言うわけではなく、その後に新宿支部長がひそかにデータ収集をしていたのだ。
なお、このデータ収集に関してはアニメ版では言及はない。特撮版オリジナル要素と思われがちだが、そうとも言い切れない箇所はある。
その辺りを深く言及したとしても、横道にそれるため……ざっくりと割愛。後のメディアミックスでフォローされるかもしれないが。
「忍者構文……あの配信を見ていて、もしかして、と思ったが。こういうこともできるとは」
別の忍者ロボットを思わせるような姿で現れたのは、新宿支部長本人である。入り口から入ってきたのだが……その外見は、ARアーマーのそれとは全く違うといってもいい。
このアーマー自体、新宿支部がひそかに作っていた物であり、これは忍者構文とは無関係に作っていたものだ。
ブラックバッカラの復活に使用した技術とは全く違う。むしろ、ガーディアン独自に忍者構文の技術をコピーしようとしていた、と言うべきか。
『貴様も、そちら側の人間という事か。制作委員会とは違った……』
「制作委員会はガーディアンとは違う。そして、炎上系配信者やアンチ勢力、炎上で利益を得ようとする一般市民やインプレスパムなどとも違う」
『それだけの能力を持ち、更に忍者構文の再現として私を復活させた。お前は何を望む?』
「望むもの? それはガーディアンの共通認識だよ。違った物を望むわけがない」
ブラックバッカラは、あまりにも新宿支部長のやっていることに対し、自らが神になる……つまり、ダンジョン
しかし、彼はそれをブラックバッカラの口から言わせることさえも阻止する。
『それだけの力を……それ以上の力を求めてもなお、目的はコンテンツ流通の炎上阻止とでもいうのか? ばかげている!』
ブラックバッカラは、AIアバターではあるが……それでも、この発想をするガーディアンに対し、否定をした。
あまりにもふざけているとしか思えない回答に対し、最後の方は彼女も叫んでいる。
「令和に突入した段階で、この世界は戦争と言うものから解放されているのだ。すでに忍者構文が、それを達成させたといってもいい」
新宿支部長は、右手の指を鳴らすと……そこに表示されたのは……フェア・リアルの配信だった。
『そこで我々は、ネットガーディアンと名乗る勢力と接触をしました。彼らの技術は、
『蒼影の完全覚醒、それによって世界は最悪ともいえる戦争の脅威からも脱した。ある意味でも地球消滅は回避できたといってもいいでしょう』
『しかし、蒼影の力だけで300年前の世界に巨大ロボットを根付かせ、昭和初期にはロボット同士によるバトルが戦争の代わりに行われることとなった』
『このロボット同士のバトルはアニメでもなければ、ゲームの世界における話でもありません。歴史の教科書にもある、忍者構文の歴史に記載されている事実……』
『事実と言ってもピンとこない方々もいるでしょう。実際は、とある事象をきっかけに世界線が変動し、このルートになったというのが……』
配信中、
その正体は別の意味でもブラックバッカラが困惑するものだったのは間違いない。
「もうわかるだろう。これはフィクションではない。【コンテンツ】だ」
新宿支部長は断言した。安易なフィクションとは桁が違う。
対電忍が伝えようとしているもの、それは別の意味でも炎上勢力を出さないようにするための学習素材としてのコンテンツだ。
それが忍者構文の正体と言えるだろうか? 正体と言うよりは、忍者構文の実態、かもしれない。
忍者構文をただの文章として切り捨て、それこそ炎上勢力が利益を得ようとするために様々な改変等を繰り返し、炎上していった。
それらの構文は二次創作の二次創作……それがエンドレスに続くのである。
二次創作に対しての危機管理、それが求められる状況なのだが……無法地帯となっていった結果が、この令和におけるSNS炎上などにつながっているといえるのだろう。
『フィクションとコンテンツに何の違いがある? どちらも……』
ブラックバッカラが何かを言おうとするのだが、それを阻止するかのように新宿支部長は話を始める。
まさかのブラックバッカラを論破しようとでもいうのだろうか?
「君はフィクションと言うものを理解していても、それが単なる怪文書なのか、小説なのか、フェイクニュースの記事なのか……そのラベリングしていく段階で失敗していた」
「コンテンツのテキストであると認識していれば、行間や言及されていない部分でどのような可能性があるか……それを認識できたはずだろう?」
「所詮、高性能AIアバターとはいっても、人間に対して無敵ではなかった。この時代で無敵のAIがあれば、海外で軍事転用は確実だろう」
「だからこそ、あの時の最終決戦でレインボーローズと
「友情、努力、勇気、敗北フラグ、テンプレ展開……そういった部分を学習していれば、あの時に君が取ろうとした選択肢も変わっていただろうな」
更に事実を突きつける場面、そこではブラックバッカラが過去に起こした事件が映像で流れている。
レインボーローズと月坂ハルカ、彼女たち二人はARゲームのバトルでブラックバッカラに勝利した。ある意味でも英雄と言ってもいい。
カバーストーリーとしては二人の英雄にブラックバッカラが倒された、と言うことにはなっている。
しかし、実際にブラックバッカラのオリジナルはそこにいた。それが意味するものとは何なのか?
『そういう話をするために復活させたとでもいうのか?』
「行間を読め、さっきも言ったはずだ。知識量では遥かにお前の方が上だったが……それでも負けた理由はなんだ?」
新宿支部長はブラックバッカラに嫌がらせをするために復活させたわけではない。それは確実だろう。
しかし、その真意を彼女は分からずにいる。
「これだけは言っておく。ブラックバッカラが最終決戦で消滅後、それを容易に復元できないよう分割したのは、ネットガーディアンだ」
「炎上勢力や軍事転用で儲けようという死の商人の手に渡らないよう、意図的に分割したのだが……それが裏目に出ることになるとは」
『裏目? どういうことだ』
新宿支部長の語る中、ブラックバッカラは質問をする。
「隠した場所だ。それがダンジョン神によって復元され、更には……」
『そういう事か。蒼影が、全ての鍵だったと』
新宿支部長は全てを言及していないが、彼の喋り方などから考えを予測し……答えをはじき出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます