第53話その2
【ARパルクールのバトルが、まさかの中止!?】
【その中で、まさかの人物が姿を現す!】
提供枠の部分で、上と下でテロップというか……そんな感じの文章が表示されている。
もしかすると……と言うのはあるかもしれない。
こちらに関しては、テレビ放送された際に使われるものの様だが、何故に阪神版でも貼っているのだろうか?
確か、実写版対電忍は地上波解禁されたという話もある。
実写版対電忍は有料配信サイトにおける配信なのだが、動画の途中でCMは入らない。
さすがに有料枠なのにCMが入るのは……と言う気配はする。下手をすれば、クレームもあるだろうか?
無料枠で1分以上のCMが頻繁に入るのも、問題と言えば問題かもしれないが。
「ARパルクール、私が走る!」
提供枠の次のシーンで、あのシーンが再びリピートされる。
その声を聞いたデンドロビウムが、声のした方を振り向くと……そこにいたのは、
その姿はARガジェットにARスーツを装着しており、ある意味でもニンジャの意匠を持ったスーツで現れた。ARメットは装着していないが……。
何故に彼がやってきたのか、この際どうでもいいかもしれない。
彼は過去にとあるアトラクション番組で、難関と言われる第3ステージまで到達したことがあるほどの実力者だ。
しかも、この記録は初出場で記録したものであり、余程の物だろう。
「祈羽フウマ、確かに実力としては折り紙付きなのはわかる。しかし、これはARパルクールだ。テレビ番組のアトラクションとは訳が違う」
デンドロビウムはフウマの運動神経を疑っているわけではない。しかし、それでもテレビ番組とARパルクールでは仕様も違う。
それを踏まえると、フウマを走らせるには無理が……とデンドロビウムは考えている。
彼女の方はARパルクールでも上位ランカーと呼ばれるレベルの人物であり、知名度の方も高かった。
だからこその発言……なのかもしれないが。
「走らせればいいじゃないか。デンドロビウム、まさか彼を恐れているのでは……」
フウマを走らせることに賛成しているのは、渋谷支部の支部長であるリーガルリリーだ。
リーガルリリーは、あのテレビ番組がどれだけの知名度を誇り、そのアトラクションが実際に世界でも行われていることを知っていたのである。
海外からも日本版へ参加を希望している人物は多い。その中で選ばれた100人、それがフウマでもあった。
直近では、国際的なスポーツ大会でも番組のアトラクションを参考にした競技が実施されたと聞く。
だからこそ、リーガルリリーは考える。彼をデンドロビウムにぶつけるのも一つの手、と。
どういった意図でぶつけるのかは、彼女のみぞ知る……という感じだが。
【リーガルリリー、次なる一手】
ここでサブタイトルが右下に表示される。実写版なので、サブタイ演出なども含めて、全てが異なるという事だろうか?
(これでフウマが勝てば、忍者が健在であるとアピールできるし、デンドロビウムが勝てばランカー勢の……)
リーガルリリーとしては、どちらに転んでも炎上勢力に対してのカウンターにはなるだろう、と言う考えがあった。
そうでなければ、ここまでの事はしないだろう。さすがに、ニューダンジョン
「祈羽フウマ、君の相手はARパルクールの上位ランカー、それこそ実力者の一人あるデンドロビウムだ。それでも走るつもりか?」
リーガルリリーはフウマに対して問うが、向こうはやる気ともいえるだろう。彼は無言でうなずいた。
「デンドロビウム、向こうがやる気である以上、拒否をすれば他の上位ランカーも同レベルか、とネット上で叩かれるのは目に見えているが、どうする?」
そして、デンドロビウムにも問う。こうなってくると、リーガルリリーの術中にはまったといえるかもしれないが。
「確かに、最近噂で聞いている忍者の噂も気になるし、データを見るとそこまで回プレイヤーと言うわけでもない。受けるよ、その勝負!」
デンドロビウムはARパルクール用の大型ロボットタイプのガジェットに乗り込み、準備を整える。
そこで確認したデータを見る限り、始めたてのプレイヤーではない。ARパルクールの予選でも上位に入るスコアも記録していた。
本戦の方は……かもしれないが。
デンドロビウムの言葉を聞いたフウマは耳に装着したアクセサリーと思わしきものに手を触れ、ARメットを無言で展開した。
(上位ランカーのデンドロビウム。その映像は何度か見たこともあるが……)
フウマ自身は、デンドロビウムのプレイを何度か見たことがあった。ロボットタイプのARガジェットを操り、高い壁すら突破する光景は驚くしかない。
(確かにあの番組の知名度は高い。しかし、それは番組内でしか過ぎないだろう。ARパルクールとは……違う!)
デンドロビウムもザッピングしていたテレビで、フウマの第2ステージを突破する場面は目撃していた。
あっさりと突破されると、本当にナレーションでも言及されていた忍者の末裔と言う個所も嘘ではない、と思う。
ARパルクールには2つの部門が存在し、巨大ロボットにも似たようなタイプのガジェットを操作して走るタイプと、等身大ガジェットを使用して走るタイプだ。
障害物の難易度に関して言えば、両方とも似たようなものである。
「しかし、想定コースが大型ガジェット部門専用になっている、か」
リーガルリリーはコースのチェックを行うと、所々で大型ARガジェット前提なコースもいくつかある。
これに対してハンデになってしまうのでは……と思う個所はあるだろう。それでも、容易に突破してしまうランカーがいるのは事実だが。
『距離を踏まえれば、1キロの2周コース……問題はないだろう』
これに対して反応したのは、まさかのフウマの方だった。
ガジェットの使い方によっては通常ガジェットでも大型に匹敵する……ようなレースもある。
それで1位を取ってしまったジャイアントキリングなプレイヤーだって、探せばいるだろう。
それを踏まえ、フウマは問題ないと答えたのである。
『こっちも問題はないけど、1対1で問題ないの?』
確かARパルクールには1対1という概念が存在せず、複数人前提のコースが多い、とも聞いている。
ARパルクール自体、8人で走るような競技であり、対戦格闘ゲームのような1対1なんて滅多にないのだ。、
確か、シングルルールはあったのか……とデンドロビウムは思う。
「ギャラリーでも募集してみる? ハンティング系ARゲームでもレイドバトルで救援募集をかけるケースもあるみたいだし」
リーガルリリーは、ある意味でも衝撃的な一言を2人に告げた。まさかの乱入歓迎レースにしようと言うのである。
ARパルクール自体、最低でも4名は必要なのだが、ニューダンジョン神はダミープレイヤーを使うことを想定していたとも受け取れそうな気配がした。
つまり、やろうと思えばレース中に妨害を仕掛けることも出来たわけである。
最終的には
「まさか、こうなるとは予想外というか……想定内と言うべきか」
ガーディアン秋葉原本部の近くにあるゲームセンター、そこでARパルクールの配信モニターをチェックしている女性がいた。
この場所にはイレギュラーとも言えるようなメイド服を着ているが、そこまで露出度は高くない。
それに加え、黒髪のセミロングにメカクレと言う……異色な外見は、周囲にギャラリーが集まるレベルだろう。
(どちらにしても、ARパルクールは続行されそうだけど)
盗撮を仕掛けようとしている人物に対し、鉄拳制裁でも仕様かと考えるが、場所が場所なのでトラブルは起こしたくない。
そう考えた彼女は、背後を振り向いて警告しようとしたのだが……振り向いたころには盗撮しようとした人物は、いなかった。
(気のせい、だったのかな?)
彼女の名前はガンライコウ……って、確か冒頭でもテレビアニメオリジナルキャラだったとは明言されているのに、どうして実写版に?
その理由は簡単だろう。アニメでガンライコウの人気があることを把握した実写版スタッフが登場オファーをした、と言うべきか?
本来であればアニメオリジナルキャラのはずが原作に逆輸入されることは、珍しい事ではない。
だからと言って、メジャーと言うわけではないだろう。一歩間違えれば、炎上することだってあり得るような状態だからだ。
しかも、この場合は小説版に逆輸入ではなく、実写版に逆輸入しているので……割と一歩間違えれば炎上不可避である。
「とにかく、ガーディアンはどうするべきかねぇ、と」
彼女としては、ガーディアンがどうなるかに興味があるわけではない。
アニメの方だと秋葉原本部の本部長だったが、実写版ではアニメでは影武者だった人物が本部長をやっている。
今回のガンライコウは、ガーディアンとは別枠で行動する人物として追加された、と言ってもいいだろうか?
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