第6話『オーディエンスを探せ』

第6話その1

 雪華ゆきはなツバキのやってきたゲーミングパソコンショップ、それは埼玉県内ではそこそこ有名な店舗である。


 それを踏まえれば店の前の駐車場が満車だったのは納得できるだろう。一方で……という店構え。


 その中で、ツバキは店長と思わしき人物に出会った。


(彼が、あの有名プロゲーマーの春日野タロウ…)


 ツバキは、自分が店内で最初にあった人物、それが春日野かすがのタロウであることを把握する。


 彼もプレイヤーネームこそは違うが、そこそこ有名なプロゲーマーだ。その彼が、どうしてゲーミングパソコンショップの店長をやっているのか。


 疑問は色々とあるが、とりあえずは並んでいる商品をチェックすることにするが……。


「まさか、あの有名な連続配信記録などを持っている……配信者である雪ツバキに遭遇するとは、これも縁という物かな」


「こちらとしても、あの春日野タロウにリアルで遭遇するとは、思ってみませんでしたが」


 お互いに探り合いな状況なので、若干の空気が重い。


 しかし、タロウの方も他の客の対応があるので、あっさりと姿を消した。


 瞬間移動的に姿を消したわけではなく、歩いて別方向へ向かっただけなのだが。


「一体、このお店は……」


 その後、ツバキは店内を巡回するものの、今回は大きな収穫はなかった。


 ウインドウショッピングで終わらせず、気になったデザインのゲーミングパソコン用コントローラーを一式購入したのみだが……。


 ゴーグル自体は既に購入済みなので、そこと値段を比べて若干安い程度だったのもあるだろう。


 こちらで扱っているものは比較的に中古品が多い。その一方で、一部のARゲーム用ガジェットなどは新品で置かれている。


 ARガジェットに関していえば、扱う店舗数が埼玉県内でも少ない事情もあるのだが……。


 買おうと思えばネットサイトにガジェットは売られているので、安価のガジェットに手を出すユーザーは少ない。


 それでも新品しか置かれていないように見えたのは、気のせいではないだろう。中古品といっても、数回使用した程度のレベルの物しかない。


 ジャンク同然の商品も他の物であればあるのだが、ARガジェットだけはそういった商品がないのだ。


「そういえば、ARダンジョンというのもあったような」


 ダンジョンゲームを探している際に、リアルフィールドを使用したARゲームとしてのダンジョンが存在することも知った。


 バーチャル空間のダンジョン、リアルダンジョン、拡張現実を使用したダンジョン……ダンジョン配信はこの三つ巴ともいえる状態になり、混沌となろうとしているかもしれない。



 その一方で、ダンジョンしんのダンジョンでも動きがあった。


 とある動画がピックアップされていたという情報自体は、いくつか寄せられていたのだが……。


「これは、まさか……?」


 モニターに表示されていたのは、ダンジョン神のダンジョンを扱った動画である。


 ここ最近のダンジョンの来客数を調べていた時に、この動画が『バズり』、その流れで増えていた事実が判明した。


 寄せられた情報の一部は、この動画が由来の物である。


 問い合わせの中には「この配信者に宣伝依頼したのでは?」というものもあるが、ダンジョン神は宣伝の必要性は感じているものの、実際に依頼は行っていない。


「なるほど。こういう事情があったのか」


 色々と調べていくうちに、炎上案件なども発見されたが、そちらはダンジョン神自身も無関係だったので、そこはリセットして仕切り直し学習を続けている。


 その中で発見した動画は、あの動画だった。


『リアルのダンジョンでは、大手以外はほぼ撤退しているのですが……その中でこのダンジョンを発見しました』


『このダンジョンを、私はダンジョン神のダンジョンと名付けたいと思います』


 ダンジョン神の名付け親みたいな展開になっている動画を見て、ふと疑問も浮かぶ。


 確かダンジョン神とは自分で……。


「この動画が炎上している理由が分からない。何が……」


 ダンジョン神が動画の炎上理由を検索した結果、とある記事を発見する。


【ダンジョン神、本人が動画に降臨か?】


 記事のタイトルを見て、コーヒーなどを含んでいたら吹き出すような勢いの記事タイトルである。 


 内容もダンジョン神が動画を視聴した感想などが書かれているが、自分が関与していないのは見ても明らかだ。


 自分が集めたフェイクニュースのテンプレといっても過言ではないようなケースに対して、彼は何かを考える。


(これは、本格的に動く必要性がありそうだな)


 そして、ダンジョン神は今のタイミングで行うべきだと考える。


 ダンジョンにおけるガイドラインの強化を……。



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