第6話その2
ダンジョン
それは、ガイドラインの変更である。配信に関しては収益の出る配信でも使用可能とする変更が行われた。
実は、ダンジョン神のダンジョンはガイドライン変更前には炎上を防ぐ目的もあってか、ダンジョン内は配信禁止というルールになっている。
大手企業の展開するARダンジョンも、一部エリアの配信が禁止されていたりするが、ダンジョン神のダンジョンでは、それが全エリアになっていた。
これに関して、撤廃をしようというのが今回の大きな変更となる。謎のエリアも含まれるとは思うが、第4エリアまでは配信可能となっている。
第5エリア自体、まだ解禁はされていないので当然と言えば当然だが。
その一方で、ダンジョン神のダンジョン以外の場所でダンジョン神のダンジョンの誹謗中傷などを行う事を禁止にした。
今までも誹謗中傷や炎上などの関係は設定しているが、それをさらに強化したような状態と言えるだろうか。
【信じられない】
【ここまで規制強化するのか】
このような声も散見されるが、どう考えても内容をよく読まずに勢いだけでコメントして『バズり』を狙っている勢力である。
しばらくして、該当コメントをしたユーザーは消されたという事だが、ソースがどこなのかは定かではない。
【配信環境が変わるのであれば、特に気にはならない】
【むしろ、装備関係の充実をしてほしい所だが】
こうした声もある。普通に配信するのであれば、特に問題はないものだ。
むしろ、収益化配信もありというのはバーチャル配信者を呼び込む狙いもあるのだろう。
装備に関しては調整中とのことだが……。
「なるほど。現状では、こうなっているのか」
ガーディアンの男性は、SNS上でのダンジョン配信に関して調べていた。
ダンジョン神のダンジョンは別の人に任せ、自分は別のダンジョンを調べているのだが……。
様々な配信動画がある一方で、批判的な動画も存在する。
しかし、ある程度の時間を見てから動画を調べると、該当する批判的な動画が消えているのだ。
何をどうやったら、ここまで素早い動きで動画を削除するのか?
ダンジョンのネタバレ配信をしたわけでもない動画が、ここまでタイミングよく削除されるのには別の理由があった。
それが、忍者構文の元凶ともいえるかもしれない謎の忍者、
どういった原理で動画を削除しているのかは不明だが、蒼影が動いているのだけは間違いない。
その理由は動画サイトではない、別のSNSにあった。そう、我々が忍者構文と呼んでいるものである。
【忍者とはありとあらゆる炎上を阻止するために存在する、対電脳の刀。忍者とは悪意ある闇の全てを斬る存在でなければならない。彼らが斬るのはあくまでも悪意ある炎上であり、それ以外のものを切り捨ててはならない】
【あるダンジョンを批判する者が現れ、それらは他のダンジョン配信の民度さえも下げる原因となる】
【そうした発言を許さない。悪意ある炎上を誘発する、こうした発言を忍者は悪と認識し、容赦なく斬り捨てる】
【しかし、こうした発言をするものは単独とは限らない。『バズり』を目的とした者、承認欲求を求める者、利益を求める者……様々だった】
【こうした勢力を排除したとしても、世界が変わるとも限らないのだが、炎上によって得られるものは全てネガティブなものであり、存在してはならない】
【対電忍(たいでんにん)は、SNS炎上という物自体を消滅させようという正義の忍者なのだ】
これらは、いわゆるつぶやきサイトで配信され、拡散されている物である。
しかし、これだけでは単につぶやきサイトのフォーマットに合わせた小説、と言えなくもない。
これが拡散し、様々な所でイラストなどが投稿され、次々と忍者構文に書かれていることが現実化する。
そうした声が大きくなればなるほど、忍者は現実に姿を現すのだ。
『その中で、人々は願った。SNS炎上を続ける悪意ある勢力の根絶を。そして、彼は現れた。SNS炎上を根絶するために』
動画サイトで忍者構文を扱ったものに、この一文が存在する。
この文章自体は後付け文章であり、捏造されたものなのだが……人々の願いが強くなったことで、蒼影が現れたといえるのかもしれない。
「蒼影とは何者なのか、そもそも忍者構文とは……他の忍者伝説などと関係はあるのか?」
ガーディアンの男性が悩むところで、男性幹部から連絡が入る。
『調査しているところで申し訳ないが、転売ヤーが各地で暴徒化しているという報告が入った』
『ニュース番組で大きく取り上げられる前に、日本各地のガーディアンが鎮圧を行い、残るは埼玉と東京のみだ』
「その案件は、ダンジョン配信の調査を中断するほどの物でしょうか?」
転売ヤーの案件は確かに急務ともいえるレベルだが、他の部署が出動しているのであれば自分が出る幕はない、そう報告するが……。
『他の部署が出ているのは、確かにその通りだ。だからこそ、残り2エリアになったといえるだろう』
「ところで、その転売されているものというのは……」
その残り2エリアが難航している……という意味であり、メンバーこそ不足はないのだが、万が一がある、という話ではあった。
転売されているものは、一時期に転売で得た資金がジャパニーズマフィアの活動資金に転用されていたと話題になったものである。
「あのARゲームに使用されるチャフグレネードではないだけ、まだ他の部署でも対応できるのでは? 自分が出るほどのレベルなのでしょうか?」
『確かに、ダンジョン配信に関してはタケが動き出している。現在は彼の方を待つしかない』
あのチャフグレネードだったら自分が出るしかない、とは思う。自分の部署がARゲーム寄りというのもあるが。
しかし、幹部の言い方を踏まえると『タケに任せたので充分だ』に聞こえなくもない。
転売されているものも日用品や薬のような生活に影響が出るものではないこともあり、自分は出る必要性がないのでは、というのだが。
『しかし、君が出ないと……?』
幹部の方も何か別の連絡を受けたらしく、途中で話が止まる。何を言おうとしていたのだろうか?
向こうの方でも状況が状況なので慌てている様子が分かるが……。
『やはり、君に出なくてもよいことになった』
「どういうことですか? それも方針の転換、と」
『そうではない。残り2エリアの方の転売ヤーも一掃を確認したとガーディアンから報告があった』
「警察が動いたのですか?」
『警察も動いていたのは事実だが、それを一掃させたのは1体の巨大ロボットという報告があった』
「巨大ロボット!?」
まさかの展開が起こったのである。
転売ヤーを一掃したのは、何と巨大ロボットだった。それも、たったの1体。
AR技術を使用した巨大ロボットも目撃されることもあり、この日本でロボットの存在自体は珍しくなくなっている。実際、フィクションの巨大ロボットの像が飾られている観光地がある位だ。
しかし、ARゲームのフィールドがあるような場所と思えないような所にいたはずの転売ヤーが、巨大ロボット1体に一掃されるのは、何かがおかしいといえる。
一体、何が起こったというのか?
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