第二十二話「鬼達の秘策」
「
トドメの万雷を打ち込むと
二体目の怪異は断末魔を響かせ
動かなくなった。
(やっぱ、一人で二体はキツイな…)
なんとか倒したが体力をかなり使ったし
ダメージも蓄積している。
なにより今はテストで精神的に
かなり擦り切れている。
さっさとあの
一回休みたいところだ。
あちらの三体も倒したようだ。
(仕掛けるなら今だ!)
俺は嘉崎の死角に回り込み斬りかかる。
しかし嘉崎は
難なく俺の一撃を
「穏やかではないですね~。
いきなり斬りかかるとは…
かなり焦りが見えますね~。」
嘉崎は相変わらず
余裕そうな薄笑いを浮かべていた。
「…お前たちはなんで
そう簡単に人を殺せるんだ。」
嘉崎は少しの間考えた後、
口を開く。
「…そーですね~。
ボスの言う人類の進化、
私はそれに興味があります~。
そして彼の下に居れば私は自由でいられる。
怪異とは奥深い存在でしてねぇ~、
私の知的欲求を刺激してくれる!
おまけにどんな改造を施しても
誰からも文句を言われない!
あの環境は正に!私の
嘉崎は両手を広げ、さぞ嬉しそうに語った。
「「自分の欲の為なら誰が死んでもいい」
あんたはそう言いたいのか?」
俺は怒りを抑え問う。
「私は人の生き死になど
どうでも良いのですが…
まぁ、そうなりますかね~。
…っと、そろそろメインを出しますかね~」
嘉崎はにやりと笑う。
嘉崎が指を鳴らすと空間の一部が歪み
そこから見たこともない怪異が現れた。
鹿のような角と鋭利な爪と牙を
ギラリと光らせている。
獣の王、そんな言葉が似あう怪異だ。
「これは私の研究成果の一つ。
脳を重点的にいじり
超常的な能力を開花させた個体です。」
怪異は何かを唱えると
手を前に出した。
空間が歪み現れたものは
ロープで拘束された市民だった。
十人はいるだろうか。
見えない力で空中に浮いてた。
俺は
「私は貴方に興味がありました。
特に目立った成績も無いのにも関わらず
貴方は「ピエロ」を落した候補として
リストに挙がっていた。
…しかし、あれは思い違いのようですね~。
面倒ですがここで死んでもらいましょうか。」
嘉崎は冷たい眼でそう言った。
―――――――――――――――――――――
場所は変わり首都中心部。
「避難して下さい!
ここは危険です!」
隊員が発したその言葉は
パニックになっている住民には聞こえない。
前には波のように押し寄せる怪異。
後ろには守らなくてはいけない市民。
絶対絶命。
そんな状況だった。
(頼む!誰か助けてくれ!)
『マイクチェック、マイクチェック』
隊員の心の叫びに応えるかのように
その声は首都全域に響き渡る。
戦闘中の隊員や怪異、
パニックになっていた住民も
その声に反応し動きを止める。
「首都全域放送…か?」
隊員の一人が呟く。
それは今は使われなくなった
アナログ式の放送のことである。
(誰が放送しているんだ?)
『俺は「
我々鬼人衆はこれより!
住民の安全確保を目的とした避難誘導を行う!
家を離れたくねぇジジババも
泣いてばっかの女、子供も
全員まとめて避難所に
ぶち込んでやるから覚悟しろ!
鬼人衆!
衆長の顔に泥塗るようなへましたら
承知しねぇぞ!
全力で取り組みやがれ!』
それで放送は終わった。
するとメガホンを持った鬼人衆の一人が
「おい!こっちだ!
死にたくなけりゃついて来い!」と叫ぶ。
住民達に先ほどまでのパニックはなく
鬼人衆のその態度に呆れつつも笑っていた。
隊員達もその声に苦笑しつつ
体制を整える。
鬼人衆がこうやって誘導したりするのは
これが初めてではない。
喧嘩のときなどはいつもこんな風に
避難誘導をしていた。
怪異の侵攻、
その「非日常」に怯えていた人達は
いつもの「日常」を見て勇気を貰っていた。
そしてそれにより形勢は逆転していく。
―――――――――――――――――――――
放送を聞いた俺は苦笑する。
「そこまで再現しなくてもいいだろ…。」
あれは俺が衆長だった頃に
放送していた内容とほぼ同じだった。
(あいつらが来たときに備える必要が
あるな。)
鬼人衆は怪異に対抗する力はない。
拘束されている住民を鬼人衆に引き渡すには
あの怪異から住民を奪い返さないと…。
「恐らくあの怪異は
嘉崎からの命令で動いている。
俺が嘉崎の注意を引いて
指示を出させないようにする。
千春、
住民を取り戻して鬼人衆に引き渡してくれ。」
二人は頷く。
「くれぐれも注意してくれ。
あの怪異は未知な部分が多い。」
「君こそ。
あの嘉崎と言う男には十分注意を。」
正明の言葉に頷く。
「作戦開始だ!」
合図を出すと同時に
俺は嘉崎に向かって走りだす。
(あいつらが頑張ってるんだ。
衆長の俺も頑張らねぇと
あいつらに示しがつかねぇ!)
「やるぞ!由銀!」
―あとがき
霊能戦記第二十二話いかがでしたか?
この襲撃での戦闘は
場面を切り替えながらなので進めにくいです。
今回、あまり話的には進んでいませんし…
今後もこういう場面を切り替えながらの
戦闘があるので
それに慣れようという意図もあります。
でも、今回は鬼人衆を活かせたので
自分的にはオッケーです!
では次回
「全力」でお会いしましょう。ノシ
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