第六話「憑依の授業と鬼教官?」

いよいよこの霊能科のメイン科目である

霊能学が始まる。


霊能士になる為に欠かせない科目だ。


教壇に鋭い目つきにしかめっ面の人物が立つ。


「霊能学担当の福田益明ふくだますあきだ。

これから二年間、

君たちを立派な霊能士にする為に

霊能の基礎から応用までを叩きこむ。

全力でついて来い。」


風貌も言動も正に『鬼教官』って感じだな。


福田は黒板に憑依についてと書く。


「今回は霊能士の初歩的な技術の一つ

『憑依』について実践を交えた授業を行う。


まず、憑依とは霊を己の肉体と同化させ、

身体能力を向上させるものだ。


だが霊との関係が悪かったり波長が合わないと逆に下がったり場合によっては

憑依が出来なくなるときがある


霊の信頼を勝ち取ることは

霊能士の基礎と覚えておけ。」


そこで雉蔵が手をあげて質問をする。


「先生、霊の信頼を勝ち取るコツは

何かありますか?」


福田は「いい質問だ。」と褒めた。


「信頼を勝ち取るには地道に

コミュニケーションをとることが必須だ。


後、彼らは自らの死後、関係のあった者たちや土地がどのようになったのかを

知りたがったりする。


ともにその後を調べたりすることは

霊の事を深く知るいい機会であると同時に

信頼を勝ち取る方法とも言える。」


福田は俺たちを見回し

他に質問がないことを確認すると

自身の手の甲の紋に触れ霊を呼び出す。


「私の霊、土方歳三ひじかたとしぞうだ。

今から実際に憑依をして見せる。

よく見て覚えるように。」


福田はもう一度紋に触れ唱え始める。


「汝、土方よ。我が身に宿れ。」


土方は「承知。」と短く唱えると

福田と一体化した。


「これが憑依、熟練のものなら

唱えずとも出来るようになる。

次はみなの番だ。」


その言葉を合図に

みんながそれぞれの霊を召喚し、

次々と憑依を成功させる。


(よし!俺も!)


心の中でそう意気込んだ俺は、手の甲の紋に触れ由銀よしかねを召喚する。


零士れいじ殿、吾輩に何用か。」


「憑依を試すんだ。頼むぜ、由銀!」


それを聞いた由銀は大きく頷き

「心得た!」と答える。


わくわくしながら紋に触れる。


「汝、由銀よ。我が身に宿れ!」


由銀が頷くと俺と一体化し

身体能力が向じょ……あれ?


不思議に思った俺は辺りを見回す。


憑依に成功した者達は口々に

「体が軽い。」と言い、調子が良さそうだ。


俺はというと……全然そんな気がしない。

何でだ?個人差があるとかか?


福田は満足そうにみんなを見回していく…が俺を見て満足そうな笑みが消えた。


福田が名簿を見て俺の名前を呼ぶ。

前に行くと福田が不思議そうな顔をしていた。


霊井たまい、お前…

霊と上手くいってなかったりするか?」


俺の頭に、はてなが浮かぶ。


「…上手くいってると思いますけど・・・。」


福田は難しそうな顔で

「ふむ…」と黙り込んでしまった。


「お前は、憑依は成功している…が

身体能力が向上していないようだ。


身体能力が上がっていれば

霊力が目に見えて増幅するから

私なら一目でわかる。」


「え。」


「原因はわからん。

名のない霊が憑依しても普通なら

多少は身体能力が向上するはずなんだが…。」


「…つまり?」


福田は物凄く躊躇した後、俺に言った。


「・・・つまり、霊井は憑依したとしても

得はほぼない。…ということだ。」


その言葉に俺は愕然とした。

嘘だと叫びたくなった。


「そう気を落とすな。

何も憑依だけが霊能士の取柄じゃない。」


その言葉は今の俺には

全く刺さる言葉ではなかった。


休憩時間になっても

俺の心は一向に暗いままだった。



―あとがき

霊能戦記第六話「憑依ノ刻」どうでしたか?

今回の話、書いているとき

凄い暗い気分になりました。


クラスで一人だけ劣っているっていうのは

悲しいものがありますよね。


…僕も経験がありますよ。

次回で少しはよくなるといいんですが…。


それでは次回「召器の授業と最初の挫折」で

お会いしましょう。ノシ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る