第二十六話「嵐のような」
一時間前、東京近郊。
「報告です!」
通信士の男が慌てた様子で
僕の前に走り寄ってくる。
「なんだ!急ぎの用か!!」
大柄のいかつい顔の男
プロ集団「
半ば怒鳴るように言う。
「…はぁ、何故貴方は
そのような言い方しかできぬのです?
彼も怯えているではないですか。」
細身の
プロ集団「
呆れながらそう言った。
そして僕、プロ集団「
トップ霊能士、
今、僕たち…
来る東京奪還作戦の下見に
この東京近辺に着いたばかりだった。
「…それで報告は?」
通信士の男は僕たちに
首都で起きている事件について
要点をまとめて話した。
「ブールだか何だか知らんが
俺達がいないときに襲撃とは舐めた真似を。」
藤浪さんは怒りを
「「ブール」ではなく
貴方は名前を覚えることも
出来ないのですか?」
そして二人はまた言い合いをしだす。
「そんなのはどうでもいいけど、
お客さんがいるみたいだよ。」
僕は周りから
ひしひしとプレッシャーを感じていた。
どうやら二人も気づいたようで
戦闘態勢を整えている。
(今の最優先事項は首都への到着。
…だったらここで足を止めるのは
そこまで考えた後、僕は二人の肩を軽く叩き、
「…まぁ、ここは任せてくださいよ。」
と軽く言い放つ。
藤浪さんは「小僧が
杉木はお手並み拝見という様子だ。
「じゃあ、遠慮なく。
…借りるよ、ご先祖様。」
僕はそう言うと指を鳴らす。
すると、僕の周りには無数の鉄砲兵が現れる。
鉄砲兵は何も言わずに銃を構え、
僕の合図を待つ。
「…撃て。」
僕の合図で鉄砲兵は一斉に銃を撃ち始める。
たちまち
発砲音と硝煙の匂いに支配される。
少しして鉄砲兵が消えたときには
周りに潜んでいた怪異達は地に伏せていた。
「…相変わらず惚れ惚れするのぉ。
やはり鉄砲は最高じゃ。」
鉄砲兵が消えた位置にいた人物は
そう言いながら僕の隣に立つ。
「やっぱ、強いね天下の信長鉄砲兵は。」
「褒めても何も出てこんぞ。」
そう言って笑うこの人物は
僕の霊でご先祖様の
「ふっ、この程度
我の鉄砲兵共にかかれば造作もない…。」
…信長は鉄砲マニアらしい
とりあえず鉄砲をほめておけば
色々やってくれる。
僕の中にあったかっこいいご先祖様の像は
とっくの昔に壊れているのだ。
「…さて、急ぎましょうよ。
首都の状況が心配ですし。」
僕の言葉に杉木は無言で首を縦に振るが
藤浪さんは
「お前さんに言われんでもわかっとるわ!」
と吐き捨てるようにいった。
僕たちは乗ってきた車に戻るが…
「これはっ?!」
藤浪さんは驚きを隠せずにいた。
僕たちの乗ってきた車達は
一台残さず壊されていた。
「これでは首都に急ぐことは無理ですね…」
杉木も苦虫を潰したような顔でそう答える。
「まぁ、そうなるよね。」
さっきの襲撃があった時点で予想はしていた。
「一台残さず綺麗に壊されてる。
これはもう芸術の
僕は適当な事をいいつつ
大きめのトラックの荷台に近づく。
「どうするんだ!
こんな
慌てる藤浪さんを横に
僕は荷台の鍵を開け中を確認する。
「うん、大丈夫だね。」
僕はそれに乗り込む。
するとトラックの壁が開きそれが露わになる。
「持ってきててよかったよ。ほんと。」
それは最近試作されたばかりの多目的ビークル
名を「
このビークルの凄い所は
飛行なども出来る点だ。
これならそうかからずに首都に戻れる。
杉木はポカンとした顔で
藤浪さんは…怒り
それもその
この五月雨はまだ持ち出し禁止なのだ。
ルールに厳しい藤浪さんのことだ
後でお説教確定だが……まぁいいか。
「さぁ、行きましょう!
首都のみんなが我々を待っていますよ!!」
―――――――――――――――――――――
首都近郊まで来て僕は重大な事態に直面する。
「やべ、燃料足りねぇや。」
五月雨は飛行モードだとかなり燃費が悪い。
試作型な為、最適化が済んでいないのだろう。
このままでは墜落する。
「どっどうするつもりだ!?」
藤浪さんは嫌な予感でもしたのか
顔を青ざめさせながら問う。
「とーぜん!
不時着しかないでしょ!!」
その瞬間、五月雨は急降下を始めた。
「あーでも僕、
飛行機とか操縦したことねぇわ。」
「「…はぁ?!」」
市街地まで降下した五月雨は
家にぶつかり…爆破した。
その直前で僕は二人を抱え
離脱していたため僕達は傷一つない。
「いやぁ~、
…危なかったね。」
二人から物凄い殺意を向けられるつつも
僕は戦闘準備を済ませ怪異の一団に突っ込む。
(後が怖いなぁ~。)
―――――――――――――――――――――
怪異を殲滅し一息ついていると、
駐留の人から学生二人の捜索を頼まれた。
二人からの殺意の籠った目から
喜んだ僕は二人の特徴を聞き捜索に向かう。
―――――――――――――――――――――
捜索は案外早く終わった。
もう戻らないといけないのかと
思いつつ二人に近づく。
「…まじか。」
二人とも全身ボロボロだ。
赤髪の方は出血もかなり酷い。
もう一人は
「とりあえず救急班に知らせないとな。」
僕は携帯を取り出し連絡を入れる。
「頼んだ。」
僕は連絡を終えると携帯をしまう。
そして出血の酷いほうへ向かい
応急手当をしようとするが
足元から気配を感じ目をそちらに向ける。
内傷の酷いほうが
僕のズボンの裾を引っ張っていた。
それ自体に驚きはないが
彼からは目を疑うほどの霊力が見えた。
「…安心しろ、
僕はお前らを助けに来たんだ。」
僕がそう答えると彼はかすれ声で
「本隊…か?」と短く問うた。
それに頷くと彼は安心したのか気絶した。
僕は急いで彼らの処置を済ませ
医療所に向かことにした。
彼を失うのは惜しいと判断してのことだ。
そして帰る道すがら僕は
今日一日の事を思い出し
「今日は嵐みたいな日だったな。」
―あとがき
霊能戦記第二十六話どうでしたか?
今回は実力者たちに
少し焦点があたった回でした。
定番の信長も出せて
なんだかノルマを達成した気分ですね。
杉木と藤浪さんの霊も
近い内に出せればいいのですが…。
そして復帰したというのに
また遅くなりすみません。
久しぶりに小説を書いてみたら
結構時間がかかってしまったんですよね。
継続は力なりと言うのは本当ですね(・・;)。
恐らく今回が今年最後の投稿になりそうです。
出来れば明日にも投稿したいんですけどね…。
それでは次回
「傷跡」でお会いしましょう。ノシ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます