第二十一話「愚者の行進」
学校からの帰り道
それは突然に起こった。
首都全土まで届くアラート音。
この首都で聞こえてはならない音。
「これって…」
小さく呟く。
そのアラートは
怪異の首都内出現を意味するものだった。
「…不味い事になったね。
今、主力は東京で情報収集の途中だったはず。」
しかし、余裕と言えるものは無いようだった。
「主力が到着するまでの時間は
どれくらいだ?」
俺の問いに正明は
「およそ三時間。」と短く答える。
それを聞いた俺は走りだす。
主力が出払っている今、
残存する勢力は各組織の二軍と俺たち学生だ。
「零士!どうするつもりなの?!」
千春が俺に追いついてきて聞いた。
「残ってるプロ達と合流して
少しでも時間を稼ぐ!」
俺は走りながらそう答える。
「そうは言っても
僕たちが来たところで足手まといに…」
「止まれ!」
俺の制止の声で二人は止まった。
「あんた誰だ。」
俺たちの目の前には科学者のような男がいた。
「やはり、私の推測通りですね~。
…おっと失礼、私が誰かという問いに
応えなければいけませんね。
私は
コードネームは「ハート」と申します。」
嘉崎と名乗った男は
薄ら笑いを浮かべながらそう答えた。
「さて、そろそろでしょうか~。」
嘉崎は小型のデバイスを地面に置いた。
するとデバイスは突然開き、人が現れた。
…いや正確にはホログラムの人間だ。
「このデバイスは
首都の至るところに設置されています。
首都の皆さんで見れるようにという
ボスの配慮です~。」
嘉崎はそう補足した。
『愚かなる人類の諸君。
私は愚者のボス、
コードネームは「ジョーカー」。』
「ジョーカー」と名乗る人物は顔を仮面で隠し
声も変成器で変えていた。
『我ら愚者の目的はただ一つ。
人類の次なる工程への移行…、
つまり進化である。
今の
進化により人類はより高次元の存在となる。
だが進化は
選ばれた強者のみに与えられるものである。
…よって、弱者には消えてもらうことにした。
しかし、弱者の中には
まだ目覚めていない強者がいる可能性もある。
生き残りたければ抗え!
戦い、自身が進化の器足りえると
証明して見せよ!
人類諸君の健闘を祈ろう。』
そこでホログラムは消え
デバイスは元の形に戻った。
まるでそれが合図だったかのように
首都の中心から爆発と悲鳴が聞こえてきた。
「おっ、始まりましたね~。
ではこちらも…」
嘉崎はそう言うとビー玉のようなものを
懐から取り出し放り投げた。
ビー玉のようなものは地面に落ちると
形を変え始めた。
巨大な体と鋭い爪を持つ
…それは教科書で見た怪異そのものだった。
千春と正明は初めて怪異を見たのだろう
明らかに
怪異をあんな風に小型化して
収納しておけるなら
まだ持っていてもおかしくない。
(怪異は五体…、
もっと増やされる可能性もあるし
あの嘉崎とかいう奴を
早いとこなんとかしねぇと。)
「…二人とも気持ちはわからなくもないが
放心してる暇はないぞ。」
二人は俺の言葉で正気を取り戻した。
「まずは目の前の怪異を倒すぞ。
千春と正明で左の三匹を
俺は右の二匹をやる。」
「無茶だ!
怪異との戦闘は
最低でも二人組で遂行しないと!」
正明は必死に訴えかけてきた。
「安心してくれ。
死ぬ気はない。」
そう言い終わると俺は戦闘態勢を整えて
右の二体に突っ込んでいく。
―――――――――――――――――――――
その頃、
首都中心部では怪異との戦闘が発生していた。
臨時の司令部では愚者の策力により
情報が錯綜しており混乱が広がっていた。
「住民の避難は?!」
二軍…正式名称を駐留隊という…の指揮官が
補佐官の男に問う。
「現在住民の間には混乱が広がっており
避難に遅れが発生しています!」
補佐官の男は切羽詰まった声でそう答える。
避難訓練は定期的に実施されている。
しかし怪異への恐怖による混乱が
それを無に
指揮官は苦々しい顔をし
「…「黒き春」の再来…か…」と呟いた。
対応は完全に後手にまわり
愚者の思い通りになっていた。
状況は刻一刻と悪化の一途を辿っていく…。
―――――――――――――――――――
「状況はどうっすか?」
小林は鬼人衆の一人に問う。
「後少しってとこかな。
…にしても上手くいくんですか?」
「まぁ、そこは俺の腕の見せ所っすかね。」
「こばさん!こっちは終わりました!」
機材をいじっていた男が小林の声を掛ける。
それに小林は頷いて見せた。
「さーて。
いっちょやりますか!」
―あとがき
霊能戦記第二十一話いかがでしてたか?
零士達は幹部の一人に絡まれ
首都はまだ避難すら出来ていない…
そんなヤバい状況で終わりましたね。
ですが、鬼人衆は何か秘策があるようですね。
この状況をどうするつもりなのか…。
では次回
「鬼達の秘策」でお会いしましょう。ノシ
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