第十九話「泣いた青鬼」
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―現在
俺はうずくまり
津中は息は切らしているがまだまだ体力に余裕がありそうだ。
津中は俺たちが潰した組織
「
元々の実力は同じくらいだが
霊能で差がついているようだ。
「…流石”黒鬼”だ。
能力が無いくせに
中々手こずれせてくれるな。」
戦況は一見イーブンに見える。
だが、それも長くは持たない。
津中は多少の息切れはあるが
まだまだ戦えそうに見える。
対して俺は正直立っているだけで辛い。
「…嘘つけ。
全然余裕そうじゃねぇか。」
津中はにやりと笑う。
「本当ならもう終わってる予定だったんだぜ?
…その武器はなんだ?
前見たときは全然切れてねぇ黒いなまくらだったはずだろ?」
…そうか。
あの事件から今日まで
召器を使った授業はなかった。
まだ夢斬の事を知っているのはごく一部だ。
「まぁいい。
そういや、なんでてめえは
鬼人衆を抜けてやがるんだ?
てめぇらは鬼の面をつけてやがるから
素顔もわかんねぇしで
探すのが大変だったんだぜ?」
「……お前には関係ない。」
津中は槍を肩に担ぎ
「まぁそうだな。」と呟く。
津中が歩み寄ってくる。
…トドメを差すつもりなのだろう。
ちらりと小林を見ると
今にも泣きそうな顔をしていた。
(泣き虫は変わらねぇらしいな。)
…あの時も小林はあんな顔してたっけな。
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鬼人衆を設立してから二年が経った。
この頃には獄神も倒し
「日本のいじめは根絶された」
そう言ってもいいくらいに
いじめはなくなっていた。
そんなある日、耳を疑う報告が上がった。
赤鬼が裏切りいじめをしているというものだ。
「九条!
どういうことだ?説明しろ!!」
小林も「なんでこんな事!」と叫ぶ。
九条は鼻で笑う。
「何がおかしい!」
「あーすまん。
そんな必死になってるもんで笑えてきてよ。」
九条は
廃工場を出ていこうとする九条に
「まだ話は終わってないぞ!」と叫ぶ。
九条は一旦足を止め振り返る。
「止めたけりゃ来いよ。
もちろん"黒鬼"あんた一人でな。」
そう言い残し九条は去っていった。
「小林。」
「…
どうするつもりっすか。」
「俺はあいつを止める。
…後は頼む。」
小林は驚いた顔をした。
「頼むってなんすか。
まさか…」
「…察しのとおりだ。
俺は鬼人衆を一旦抜ける。
九条の性根を叩きなおす。
それまで俺は戻らない。」
小林は涙を流していた。
「そんな顔すんな。
…俺さ、夢があるんだ。
小さい頃からの夢だ。
だからどの道一旦抜ける予定だった。
それが早まっただけだ。」
それでも泣き止まない小林の頭を撫でてやってから
「…小林、お前ならやれるさ。
鬼人衆を…俺たちの家を頼んだぞ。」
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―現在
津中は俺の目の前まで来て
槍を構え始める。
(零士、こやつは強い。)
(あぁ、俺だけじゃ無理だ。
力貸せよ。相棒!)
津中が槍でトドメを差す瞬間に
俺はバックステップで回避しつつ立ち上がる。
「悪いがこんな所で終わる気はねぇんだ。
…だから俺たちも本気を出すぜ。」
「今まで手を抜いてたみてぇに言うじゃねぇか。」
俺は刀を構える。
「あぁそうさ。
だから本気を出すって言ってるんだ!」
津中は槍を構えると
オーラのようなものが津中の周りにみえた。
(あっちも本気ってわけか。)
「行くぞ!!」
津中は渾身の突きを放ってくる。
俺は槍の穂先に狙いを定め
ひらりと交わしつつ穂先を斬り落とす。
一瞬驚いた津中だがすぐに体制を立て直し
今度は穂先を失った槍を棍棒代わりにして殴りかかってくる。
それを俺は転がって避ける。
「出雲流 居合」
居合の構えをとると
津中はもう一度槍で殴りかかってくる。
「
すれ違いざまに一太刀を浴びせる。
振り向くと津中は槍を支えにして
かろうじて立っている状態だった。
「…霊井零士。
お前は…やはり…強い…な。」
そう言うと津中は倒れた。
それを見届けた後、俺も意識を失った。
ーあとがき
霊能戦記第十九話いかがでしたか?
なんか普通に使ってる「出雲流」ですが
零士君は由銀から暇があれば教わっているようです。
現在、空気な正明君ですが一応いるんですよ?
…喋る隙がないだけで。
では次回
「テストと影」でお会いしましょう。ノシ
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