第十一話「戦闘訓練と一組の実力たち」(中編)

もう一体のロボの攻撃を避けた私たちは

武器を構えてロボに向かいあう。


直前まで攻撃に気づけなかったのは

ロボが家を壊して

不意打ちをかけてきたせいみたい。


橋倉はしくらさんが居なかったらと思うとゾッとする。


橋倉さんはこの班の生命線って思った方が

良さそう。


「私と千波ちばくんでこのロボを倒すよ。

文脇ふみわきくんは橋倉さんを守りながら

もう一体の動きに注意して!」


千波君は「了解」と

ほかの二人は頷いて了承してくれた。


ロボが攻撃を仕掛けてくる。

さっきの叩きつけだ。


私は横に回避したが

千波君は動かない。


それどころか攻撃を受け止める。


千波君の霊、山内一豊やまうちかずとよの能力、鬼胆きたん

ほとんどの攻撃にひるまない胆力を持つ能力。


でもあの攻撃は胆力で

どうにかなるものじゃない。


(鍛えてるとしても限度があるよ…)


軽く引きつつ、頼りになると感じる。


私はロボの攻撃後の隙を狙い攻撃を仕掛ける。


ロボに剣先が刺さった後、

能力の形状変化で薙刀に武器を変化させる。

変化した分、武器のリーチはかなり伸びる。


狙い通り、ロボのかなり内部まで

穂先が届く。


すると内部にダメージを負ったロボは

狂ったように暴れだす。


それに振り回されつつも

何とか穂先を内部のコアにまで刺す。


ロボは大きな断末魔を出すと動かなくなった。


何とか倒せたらしい。


しかしロボの断末魔を聞いたもう一体が

私を狙って攻撃をしてくる。


「させない。」


そういって文脇君がロボの腕を切り落とし、

返しの一手でロボの首を落とす。


ロボはそれでも必死に攻撃をしようとするが

頭がないせいで攻撃は明後日の方向へ向かう。


その隙を逃さず千波君がロボに止めを刺す。


ロボの断末魔が終わると

軽快な音が訓練場に響く。


「怪異の殲滅を確認。

各員は直ちに帰還せよ。」


終わったみたい。


私は武器の形を元に戻す。


内心ほっとしつつ私達は

「帰還ゲート」と書かれたところを通った。


――第一班、訓練終了。


訓練を別の部屋で見ていた俺は

安堵の息を吐いた。


訓練用に調整してあるとはいえ

かなり危ない場面もあった。


千春ちはるはやっぱりすげえな。

それに橋倉って子の能力、

戦闘向けじゃないけど

実戦ではかなり重宝される能力だ。


次は第二班…正明まさあきたちの班だな。


「正明、頑張れよ。」


訓練場に向かう正明に声を掛ける。


正明はこちらを見据え

「ああ」と短く答えた。


―――――――――――――――――――――

―第二班、菅原すがはら 正明視点


僕たち二班も凪さん達同様、

待機室に通された。


能力については事前に話し合っている。

準備は完璧だ。


アラームが鳴り放送が流れる。


「ビル街に怪異が出現。

確認されている個体は重装体が一体。

各員は直ちに出動しこれを撃破せよ。」


「重装体だって!?

そんなのどうしろってんだよ!

無理ゲーだろ!」


榎波えなみ君がいきどおる。


重装体。

全身を固い外骨格に包み

ほとんどの攻撃を受け付けない強敵だ。


「落ち着け、榎波君。

確かに手ごわい相手だが

このチームの敵ではない。」


「お?なんかよさげな策でもあるんかいな?」


遠野とおの君が聞いてくる。


「あぁ、いい考えがあるんだ。」


訓練場の中は放送の通りのビル街だった。


どうやらこの訓練場は

様々な状況を再現できるようだ。


「作戦通りに動こう。

状況開始だ。」


僕たちはまずこの辺りで一番高いビルに

上った。


(想像通りだ。

かなり見通しがいい。)


重装体の姿も見える。


次に学宮まなみやさんの能力、

鷹画ようがで絵に描いた鷹を召喚する。


「…お願いね、鷹丸…。」


「マカセロ!」


(しゃべるのか…。)


鷹丸が榎波君の測定デバイスを咥えて

飛んでいく。


「こりゃ便利だな。

定期的に使わせてもらいたいぜ。」


榎波君はそんな事を言いつつ

自前のパソコンを操作する。


彼は鷹丸が送った地形情報で

即席の地図を作り、

そのうえで

ロボの予測進路を演算してもらっている。


彼の能力である超演算は

今回は使わないらしい。


そしてそれをもとに遠野君が狙撃位置に着く。


彼には重装体の装甲の隙間越しの

コアへの狙撃を頼んでいる。


「移動完了や。

よー見えるでー!」


彼は能力の遠眼えんがん

かなり遠くの景色でもはっきりと見える。


「わかった。

指示を待ってくれ。」


遠野君と電話でやり取りをする。


後は僕の番だ。


僕の能力、先見さきみは数秒先の未来を見る。


確実に倒せる未来を見た後、

遠野君に指示を出す。


僕が見た未来通りに重装体は崩れ落ちる。


そして軽快な音が響く。


「怪異の殲滅を確認。

各員は直ちに帰還せよ。」


そして僕たちは「帰還ゲート」をくぐった。


――第二班訓練終了。


「凄いな…。」


それを見ていた俺は思わずつぶやく。

チームの能力を把握し

迅速に戦闘を終了させる。


正明はリーダーに向いているのだろう。


次は第三班。


伊佐木いさきって奴がリーダーのところだな。


―――――――――――――――――――――

―第三班、伊佐木 浩二こうじ視点


待機室に入り少し経つとアラームが鳴り響く。


「首都周辺に怪異が出現。

かなりの数が確認されている。

迅速に殲滅せよ。

首都には一体たりとも入れるな!」


「防衛戦だな!これは燃えるぞ!」


日比野ひびのはかなり気合が入っている。


残りの二人も気合い十分に見える。


(…存分に使わせてもらうか。)


―――――――――――――――――――――


「なんだ…これ…」


俺は画面に映る三班の戦闘を

呆然と眺めていた。


日比野は能力である飛槍ひそう

ロボを二、三体纏めて倒す。


津中つなかは能力で腕力を強化しつつ

鬼のようにロボを薙ぎ倒す。


雉蔵きじくらは能力で作った壁で侵攻を食い止めつつ

刀で斬り伏せている。


これだけなら優秀な奴らというだけで済んだ。


しかしただ一人、伊佐木は違った。


伊佐木の能力は限定的空間操作。


三枚の札で印をつけた空間を

操作できるという能力。


伊佐木はその能力で戦場を支配していた。


溜めが必要な日比野の飛槍の時間稼ぎを

雉蔵が生成した壁を空間操作で瞬間移動させ

難なく稼ぎ、

津中が能力による疲労で動けなくなれば

津中自身を安全地帯に瞬間移動させる。


まるで盤上のコマを移動させるように。


そして一分が過ぎた頃には大量にいたロボは

完全に殲滅されていた。



―あとがき

霊能戦記第十一話「訓練ノ刻」(中編)いかがでしたか?


初めての戦闘の為、

あまり派手でもない戦闘でした。


ただ、一~三班の優秀さは

伝わったのではないでしょうか。


伊佐木の戦闘描写は色々と考えたのですが

今回書いたような第三者視点のものが

一番しっくりきましたのでこうなりました。


台風が過ぎてからより一層暑くなりましたね。

日中はもちろん、夜も定期的に水分をとって

安全に過ごしましょう。

…まぁ、僕は

夜にあまり水分補給しないんですがね。


では次回

「戦闘訓練と一組の実力者たち」(後編)で

お会いしましょう。ノシ

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