第十話「戦闘訓練と一組の実力者たち」(前編)

身体測定の翌日。


俺たちは着替えてから

グラウンドに集合していた。


表桜先生が点呼を取り終えると

福田先生が話始める。


「さて、諸君。

今日は君たちの戦闘能力を見がてら

初めての戦闘訓練を行う。」


(いよいよか…)


「訓練では

こいつらがお前たちの相手をしてくれる。」


そういうと福田先生は手を鳴らす。


出てきたのは怪異…を模した

訓練用のロボだった。


怪異同様、種類も豊富だ。


「こいつらは特殊な金属を使っている。

怪異と同じく、霊能による攻撃でしか倒せない。」


「あとですね、

このロボは怪異の攻撃力も再現できます。

…まぁ訓練なので出力は押さえますが

当たったらかなり痛いですよ。」


福田先生の言葉に表桜先生が補足をする。


その補足に周りがざわつく。


当然だ。


ほぼ怪異と同じロボと

戦えと言われているのだから。


福田先生が手を叩き、

みんなの注意を自分に向ける。


「戸惑う気持ちもわからんでもないが

君たちは霊能士の卵だ。

ここを卒業し霊能士となるなら

怪異との戦闘は必然。

ここで経験しておいた方が得策だ。」


その言葉にみんなが黙る。


「よし、では班分けを配る。

各自、自分の班を確認し

班全員の能力や出来ることを確認しておけ。」


班は四人で一班、全部で五班。

そのうち俺は最後の五班だった。

――――――――――――――――――――


・班分け表

一班 

千波空也ちばくうや能力:鬼胆きたん

凪千春なぎちはる能力:形状変化けいじょうへんか

橋倉友恵はしくらともえ能力:危機察知ききさっち

文脇一喜ふみわきかずき能力:真目まことのめ

二班 

榎波将えなみしょう能力:超演算ちょうえんざん

菅原正明すがはらまさあき能力:先見さきみ

遠野成俊とおのなるとし能力:遠眼えんがん

学宮由香里まなみやゆかり能力:鷹画ようが

三班 

伊佐木浩二いさきこうじ能力:限定的空間操作げんていてきくうかんそうさ

雉蔵和家きじくらかずいえ能力:早工そうく

津中亮つなかりょう能力:鬼武蔵おにむさし

日比野克之ひびのかつゆき能力:飛槍ひそう

四班 

赤崎刀祢あかさきとうや能力:無双撃むそうげき

有為幸奈ういゆきな能力:一之太刀いちのたち

坂上文乃さかがみふみの能力:魚群ぎょぐんらん

猫道蒼汰ねこみちそうた能力:かたり

五班 

小早川潔こばやかわきよし能力:怒涛無双どとうむそう

霊井零士たまいれいじ能力:なし

柳葉典樹やなぎばのりき能力:天魔覆滅てんまふくめつ

夕日灯ゆうひあかり能力:空蹴からけ


以上二十名、各班リーダーを決め

表桜先生に報告するように。


霊能学教師 福田


――――――――――――――――――――


班分けの紙を見ていると


「あんたが霊井だな!今回はよろしく!」


と、いきなり声を掛けられた。


俺は少し驚きつつも目の前の人物の

名前を思い出す。


「よろしく。…小早川君。」


そういうと小早川は

「君はつけなくていいぞ!」と笑う。


「そんなことはいいから

リーダー決めようよ~。」


そんな事をいいながら

横から急に女の子が出てくる。


「あっ私、夕日 灯ね。

よろしく~霊井っち。」


霊井っち!?初めてそんな風に呼ばれたぞ?!


「よ…よろしく、夕日さん。」


そういいながらもう一人いることを思い出す。


「もう一人…柳葉君は?」


「ん?あぁ…おーい柳葉!お前も挨拶しようぜ!」


小早川が遠くにいた人物に声を掛ける。

その人物は急いで走ってくる。


「ハァハァ…柳葉典樹…です。‥‥よろしく…」


大丈夫か?


柳葉は昨日の体力測定のときも、

息切れをしていた。


あまり体力はないのかもな。


「よろしく、柳葉君。」


―――――――――――――――――――


「リーダーを決めるんだったよな。」


俺がそういうと雑談をしていた小早川と夕日が

「そうだった」という顔でこちらを向く。


「俺は正直リーダーって器じゃないと思う。

だから俺は立候補しない」


その言葉に柳葉も「僕もです…」と言った。


「なら俺が立候補しよう!」


「あ、じゃあ私も。」


小早川と夕日はにらみ合い口論を始めた。

…元気だな。


だが結局、夕日が折れたらしく

小早川が表桜先生に報告に行った。


――――――――――――――――――――


各班のリーダーが決まった後、

表桜先生が

各班のリーダーの名前を読み上げる。


「一班は凪さん、二班は菅原君、

三班は伊佐木君、四班は有為さん、

五班は小早川君。

以上五名が各班のリーダーだ。

各自、

頑張って自分の班を引っ張っていってね。

…福田先生。」


表桜先生がメガホンを福田先生に渡す。


「各自、最善を尽くせ。

この訓練は実践に近いものだ。

それを胸に刻み込んでおけ。」


―――――――――――――――――――――

―第一班、凪 千春視点


私たち一班は訓練場の待機所に通されていた。


(訓練が始まるまで少し時間があったから

皆の能力はもう頭に入ってる。

あとは訓練が始まるのを待つだけ…。)


そんなことを考えていると

突然アラームが鳴る。


「市街地にて怪異が出現した。

霊能士各員は速やかにこれを撃破せよ。」


福田先生の本番さながらのアナウンスを聞いて

千波くんが

「いよいよだな。」って呟いている。


訓練場の扉が開く。


「いこう!皆!」


私の声に皆が頷く。


訓練場に入った私たちは驚いた。

何処からどう見ても市街地だったから。


家が立ち並び、

空がかなりリアルに表示されている。

ここが訓練場だってことを忘れそう。


市街地を観察していると

突然、遠くのほうで大きな音がした。


怪異ロボだ。


(今は訓練中!集中しないと。

この班のリーダーは私なんだ!)


「皆!今のうちに戦いの準備をしておこう。

橋倉さん、何かあったら教えてね。」


「わ…わかった。まかせて!凪さん。」


橋倉さんの森蘭丸もりらんまるの能力は危機察知。

危険を知ることが出来る能力。


橋倉さんから離れない限りは

不意打ちをされることはない。


憑依と召器を行い

戦闘態勢が整った私たちは、

音のした方に向かった。


(…!居た!)


「皆、止まって。奥にロボがいる。」


「…俺が先行する。

皆はその後についてきてくれ。」


千波君の提案に私は頷く。


「…!何か来ます!」


橋倉さんが叫ぶ。


とっさに避けた私たち。


大きな音がしたと思うと同時に

怪異ロボが腕を叩きつける!


「ロボ!?何で!」


そう叫んだ私はとっさに

さっき見つけたロボを見る

あのロボはまだそこに居た。


そして私は気づく。

思い込みによる失敗に。


(一体だけじゃなかったの!?)


敵は何も一体だけではなかったのだ。




―あとがき

霊能戦記第十話「訓練ノ刻」(前編)

いかがでしたか?


十話という節目の回から

ようやく戦いが見えてきました。


次の回からは本格的に戦闘回です。

上手く描写できているといいんですが…。


では次回第十一話「戦闘訓練と一組の実力者たち」(中編)で

お会いしましょう。ノシ

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