第十二話「戦闘訓練と一組の実力者たち」(後編)

伊佐木いさき…やはり別格か…。」


福田先生の呟きは

静まり返っていた室内に

やけに響いて聞こえた。


「けっ、

名門のボンボンがいい気になりやがって…」


赤崎が悪態をつく。


それで思いだした伊佐木家は優秀な霊能士を

数多く輩出はいしゅつしている名門だ。


「才能だけの野郎なんかに

負けていられるか!!」


赤崎は一人で部屋を後にした。


「待て!赤崎!」


四班の班長、有為幸奈ういゆきなが赤崎を追いかける。


残された四班の人達もその後を追い

出て行った。


―――――――――――――――――――――

――第四班、有為 幸奈視点


「はぁ…」


思わずため息が出てしまう。


(なんで

リーダーなんて引き受けちゃったんだろ…)


今更後悔しても遅いのはわかる、

けれど考えずにはいられない。


団結力はチームにおいて必須事項。

なのに赤崎と猫道ねこみちは全くまとまらない。


そんな中アラームが鳴り響く。


「商業街で怪異の出現を確認。

確認されているものは歩兵体が二体。

各員は直ちに出撃し敵を殲滅せよ。」


「やっとか…。

いい加減こいつの相手も

嫌になっていたとこだ。

助かるぜ。」


赤崎がうんざりとした顔で言う。

猫道本人はあくびをしていた。


訓練場に入ると赤崎の姿が見当たらない。


「あらら、赤崎はもういないや。」


猫道はずいぶんと軽く言い放つ。


「皆、赤崎を捜索しつつ怪異を討伐するぞ。

…離れるなよ。」


既に離れようとしていた猫道は

「ばーれーてーたー」と気楽に言う。


「…大変だな、有為。

私もサポートする、頑張ってくれよ。」


坂上さんの言葉に救われる。


「最善を尽くそう。」


―――――――――――――――――――


「止まれ。…ロボが一体いる。

私が飛び込み、奴の足を奪う。


二人はその隙に攻撃し撃破してくれ。」


「わかった。…無茶はしないように。」


猫道は返事をせずに

また、あくびをしている。


(こいつは頼れないな)


「行くぞ!」


私は飛び出しロボの両足を切り飛ばす。


ロボは足を失い前に転ぶ。


その隙を逃さず坂上さんの能力の魚が

ロボを叩き壊す。


ロボは断末魔を上げる暇もなく沈黙した。


「凄いな…この魚。」


「魚群の乱。舐めていたら痛い目を見る。」


坂上さんはこちらに来ながらそう答える。


そのとき遠くでロボの断末魔が聞こえた。


恐らく赤崎が仕留めたのだろう。


「おっ、赤崎来るよ。」


猫道が言った通り

赤崎はすぐに合流してきた。


「そっちも倒せたか。」


「あぁ。」


「ん~?なんかいるよ~?」


猫道がいる高台に上り

猫道が指をさす方に目を向ける。


「斥候体だ!」


斥候体は身軽な体を活かしつつ

かなりのスピードでこちらに迫る。


坂上さんが魚で攻撃を仕掛けるが

赤崎が飛び出して魚を蹴散らす。


「赤崎!まだ突っ「うっせぇ!指図すんな!」


赤崎は斥候体に攻撃を仕掛ける。


斥候体は避けたものの、壁に激突してしまう。

その隙を見逃さず

赤崎は能力の無双撃むそうげきでトドメをさす。


軽快な音が鳴り訓練終了を知らせるが

私は一向に納得が出来なかった。


―――――――――――――――――――――

――第五班、霊井たまい 零士れいじ視点。


俺たちは待機室で早めに待機していた。


四班の戦いは途中で見るのをやめたので

後で見てた奴に聞くことにする。


アラームが鳴る。


「工場地帯に大型の怪異が出現。

各員は出動しこれを殲滅せよ。」


「…大型…。」


柳葉やなぎば君が心配そうに呟く。


「よし!行くぞ!」


小早川こばやかわは気合いが入っているらしい。


訓練場に入った俺たちは戦闘態勢を整える。


夕日は能力の空蹴からけで空を飛んだ後


「あっちにいるね~」


そういって指を指した。


「あっちか!」


「どうするつもりだ?」


俺が聞くと小早川は

「とりあえず突撃だ!」と走り出す。


(…こんなことなら

立候補した方がよかったか?)


小早川を追いながら俺はそう思った。


―――――――――――――――――――――


「…あれか!」


小早川の前方に巨大なロボがいた。


「よし!やるぞ!」


それを見ても臆さず突っ込もうとする小早川を

必死に押さえつける。


「あんなのに攻撃されたら

ただじゃすまないんだぞ!?

なんで突っ込もうとする!?」


俺は必死に小早川を説得する。


「そうはいっても…あっ。」


小早川が突然、素っ頓狂な声を出す。

それだけではなくほかの二人も

俺の服を引っ張りだす。


(…いやな予感がする。)


俺は小早川達の向いている方向を見る。


巨大なロボと目があった。


「…やべ。」


ロボの腕が動く。


「…全力で!逃げろー!」


小早川の声を聞き俺たちは走り出す。


後ろでズドーンという大きな音がしたのは

近くにあった工場に飛び込んだときだった。


ロボの攻撃は地形をかなり変化させていた。


分かっていた事だが

まともにやって勝てる相手ではない。


俺は皆に作戦を伝える。


「俺はこの作戦しかないと思う。

これ以上にいい作戦があるなら言ってくれ。」


三人は首を横に振る。


「ならこれでいこう。

…作戦開始だ。」


―――――――――――――――――――――


俺は工場から飛び出し

巨大ロボを眼前に見据える。


ロボも俺を認識したようだ。

まるで俺を笑うかのように

鈍い駆動音を響かせる。


「来い!デカブツ!」


俺は走り出す。


ロボは巨大な体を動かし俺を追う。


(これでいい!)


そして繋いである携帯に

「いまだ!夕日さん、柳葉君!」と叫ぶ。


あの二人には

ロボの足関節の破壊を頼んでいる。


少し経ってロボの足関節付近で

小爆発が起きた。


ロボが膝立ちになる。


「やってくれ!小早川!」


『了解!』


小早川は能力の怒涛無双どとうむそうを交えて

渾身の剣戟を叩きこむ。


装甲が切り刻まれ内部のコアが見えたとき、

ロボが暴れだし小早川を投げ飛ばした。


「小早川!大丈夫か!?」


携帯越しに叫ぶが応答はない。


(あと少しなのに……!)


この距離では走っても

援護には間に合わない。


悩んでいる俺に由銀が語りかけてくる。


(零士殿、吾輩が行こう。

霊の吾輩なら零士殿より早い。)


霊はその特性上

すり抜けや飛行が出来る。


俺が行くよりは断然早い。


(わかった!任せたぞ由銀!)


(心得た!)


憑依を解くと

由銀は物凄いスピードで

ロボの前にたどり着き、刀をロボに突き刺す。


ロボは断末魔をあげながら暴れたが

数秒後には沈黙した。


あの軽快な音が流れる。


「怪異の殲滅を確認。…よく頑張った。

各員は帰還ゲートをくぐり帰還せよ。」


俺たちは小早川を回収した後、

帰還ゲートをくぐった。



―あとがき

霊能戦記第十二話いかがでしたか?


初めての戦闘描写だったので

よく書けたのかいまいちわからないです。


最近色々とやったおかげか

PVなんかも増えてきてモチベがかなり上がっています。


一章もかなり終わりが見えてきましたし

二章の設定も書き上げないと…。


次回は日にちが進んで

レクリエーション合宿が始まります。

お楽しみに!


では次回

「霊能士の街」でお会いしましょう。ノシ

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