第十四話「霊と魂と」

朝、目が覚めて起き上がる。


何か夢を見ていたような気がするんだけど…。


(まぁ…気のせいか。)


「なんだ、零士君。

起きていたのか。」


正明が驚いた様子で話しかけてくる。


「君のことだから

また起こしてやらないといけないかと

思っていたよ。」


正明は千春と一緒に

起こしに来てくれることが多い。


「…今日は何か目が覚めたんだよ。」


正明は少し笑いつつ

「それはよかった。」と言った。


その後、俺たちは朝食を食べ

霊使街にバスで移動してから

千春と合流した。


二日目の自由散策での班は

俺、正明、千春、文脇ふみわき君の四人だ。


文脇君とは班分けのときに初めて話した。

訓練のときに興味が湧いていたからだ。


そのときのえんで今回、同じ班になっている。


「どこに行く?」


千春の言葉に俺たちは顔を見合わせる。


「「「どこでもいい。」」」


俺たちはノープランだった。


――――――――――――――――――――


結局、歩きながら決めようということで

落ち着いた俺たちは霊使街を歩いていた。


「おい、坊主たち。

お前ら…学生か?」


突然、後ろから声を掛けられた。


「そうです。…貴方は?」


正明がその人物…四十代くらいの男性に

問いかける。


「俺はこの辺りに住んでる、こがらしってもんだ。

お前らが将来、霊能士になりてぇってんなら

やめておけって忠告しに来たんだ。」


凩の発言に

俺は「なんでだよ?」と言い放つ。


「お前たちの使役しているそれ

相棒とかじゃねぇ。…そいつらは悪魔だ。」


「どういう意味ですか」


千春が怒りを露わにしつつ問う。


「…ここじゃなんだ。

ついてこい。」


―――――――――――――――――――――


凩の後をついていった俺たちは

凩の家に招かれていた。


客間に通されると俺は仏壇が目に入った。


そこには女性の写真が置かれていた。


「…この人は?」


「俺の嫁さんだよ。」


俺の問いに凩はそう答える。


「…俺の嫁さんは殺されたんだよ。

そいつらにな。」


「殺されたって…」


千春が声を漏らす。


「17年前、

政府は霊能士を増やすために

無茶な政策をしやがった。

適正のない奴らにも

霊を契約させようとしたんだ。」


凩は苦い顔をして言う。


「お前らは何故、適正のねぇ奴が

霊能士になれねぇかを知ってるか?」


俺たちは揃って首を振る。


「適正が無くても召喚は出来る。

だが、適性のねぇ奴が契約をすると

魂を抜かれるんだ。」


魂を抜かれる。


降霊の儀のときに表桜先生が

魂を抜かれないようにといっていたが

そんなことが本当にあるのか?


「魂を抜かれても体は死にはしない。

廃人になるんだ。


…俺の嫁さんは廃人になっちまった。

「霊能士に近しい者ならいけるのでは?」

とかいうデマに踊らされたんだ。


俺の嫁さん以外にも

そうやって廃人なっちまった奴はいる。


…俺は廃人になった嫁さんを

見ていられなかった。

だから、楽にしてやったんだ。」


凩はそういうとうつむいてしまった。


「…凩さんは嘘は言ってないよ。」


文脇君がそう言った。


文脇君の能力は真目まことのめ

嘘を見抜く力。


「俺も霊能士だったが

霊能士になったっていいことはない。


場合によっては

家族を巻き込む可能性もある。


夢だけ見てると痛い目を見るぞ。

…この俺のようにな。」


―――――――――――――――――――――


霊使処に戻った後、

レクリエーションゲームをやることになった。


しかし俺たち四人は

どうしてもそんな気になれずにいた。


夕食も食べ終え部屋に戻っても

昼に聞いた話が頭から離れることはなかった。


―――――――――――――――――――――


就寝時刻も近づき

先に寝てしまった小早川にならうように

俺たちも寝ようとしたとき

部屋の呼び鈴が鳴った。


扉を開けると遠野君がいた。


「なぁ、赤崎知らんか?

夕飯の後からいなくなってんねん。」


「いや、知らないな。」


「そうか…。夜分遅くにすまへんな。

おおきに!」


遠野君はそう言うと部屋に戻っていった。


「どうしたんだ?」


正明に今の会話を伝える。


「それは心配だな‥・。」


「…嫌な予感がする。

表桜先生の部屋に行ってくる。」



―あとがき

霊能戦記第十四話いかがでしたか?


今回はかなりシリアスな感じでしたね。

降霊の恐ろしさも伝わったかなと思います。


本当に怖いのは人間ですね。


では、次回第十五話

「消えた赤崎と覚醒する刀」で

お会いしましょう。ノシ

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