第十五話「消えた赤崎と覚醒する刀」

表桜先生の部屋に着くと呼び鈴を鳴らすが

一向に表桜先生は出てこない。


焦りが募る。


(表桜先生は赤崎を狙っている。

…その赤崎は今、行方不明。

となるともしかして…。)


俺は急いで部屋に戻った。


「正明!まずいかもしれない。

俺は夕日さんの部屋に行く。

正明は千春を起こしてきてくれ!

…柳葉君は他の先生に

応援を呼んできてくれ!急いで!」


それだけ言うと俺は夕日さんの部屋に向かう。


彼女の能力は索敵に優れている。

それに彼女なら直ぐに来てくれる…かも。


夕日さんの部屋に着き呼び鈴を鳴らす。

彼女はすぐに出てきた。


霊井たまいっち?どしたのこんな時間に。」


「すぐに来てくれ!君の力が必要なんだ!」


「…よくわかんないけど、

後で何か奢ってくれるならいいよ!」


奢るのかよ。


「…わかった。

奢れる範囲内で頼む!」


「りょーかい!」


――――――――――――――――――――


集まった後に簡単に事情を説明した後、

俺たちは赤崎と表桜先生を捜索し始めた。


(間に合え!)


そんな思いの中、

夕日さんからメッセージが届く。


どうやら見つかったようだ。


(近い!)


俺は最短距離でその場所に向かう。


―――――――――――――――――――――


俺が到着すると赤崎が倒れていた。


その隣に表桜先生が立っている。


「赤崎!」


俺は叫ぶ。


「…てめぇ何で…。」


「おや、霊井君。

どうしたんだい?こんなところで。」


表桜先生は普段と変わらない態度でありながら

表情は冷徹さがうかがえるものだった。


「…表桜先生。赤崎に何をしたんですか?」


「…何って。

彼が倒れてしまったから運んでやろうかと…」


「嘘…ですね。

ただ倒れただけでは

赤崎のその全身の傷に説明がつかない。」


赤崎は傷だらけだった。

それだけではない。

そこら中に戦闘の跡がある。


「貴方の事は調べがついています。

もう逃げることはできませんよ。

表桜先生。

…いや、愚者フールの構成員。

コードネーム「ピエロ」。」


表桜先生の表情は見えない。


「貴方は学校に潜入して教員の立場を利用し

フールに引き込める生徒を探していた。

フールの戦力増強という「任務」を遂行するために。

そして赤崎に目を付けた。」


「…流石だな。霊井零士。」


表桜先生は真顔でそう言い放つ。


「確かにお前の言う通りだ。

…だが、それを知ったところで何が出来る?」


表桜の言う通りだ。

それを知っても今の俺だけじゃ何もできない。


「最初にお前にデータを見たときは目を疑ったよ。

お前の潜在能力値は歴代最高数値だそうだ。

だが、お前はその能力を使いこなすどころか

それに振り回されている。

そんなお前が俺を止めれるのか?」


…潜在能力値。そんな話初めて知ったな。


「俺だけで貴方に勝てるとは思ってません。

ですが…四対一ならどうです?」


草むらに隠れていた三人が出てくる。

それを見ても表桜は眉一つ動かさない。


「いいだろう。

掛かってこい。ひよっこ共。」


そういうと表桜は手袋を外した。


(あの紋は…!?)


「こいよ。斎藤道三さいとうどうさん!」


斎藤道三。

下剋上大名として有名な武将だったはず。


「…相手はひよこか。手早く済ませよう。」


そういうと斎藤道三は表桜に憑依し

戦闘態勢を整える。

彼の得物は槍だった。

リーチ的にはこちらが少し不利になるな。


こちらも戦闘態勢を整える。


「皆!行くぞ!」


それを合図に俺たちは一斉に攻撃を仕掛ける。


――――――――――――――――――――――――


「息まいていた割にはこんなものか?」


数分後には全員が返り討ちにされていた。


表桜はフールである前にプロだ。


勝てるとは思っていなかったが

まさかこんなにも隙が無いとは。


「もう何もするな。ひよっこ共。」


表桜は赤崎の元に向かう。


「…まだ…だ。」


俺は立ち上がり表桜を見る。


「うぜぇな。

お前らの相手をするのにも

もう飽き飽きなんだよ!」


表桜に蹴り飛ばされ

俺はまた地に伏せる。


それでも俺は立ち上がる。


「…ここで貴方を逃がせば

俺は一生後悔する。」


表桜を見据える。


「俺はひよっこでも霊能士だ!

こんな所で諦めて何が霊能士だ!

俺は絶対に諦めない!」


そのとき、握っていた刀が光りだす。


そして脳裏に今朝の夢が

鮮明に映し出される。


あいつの…

いやこの刀の真の名前は…


(これは…?)


由銀が驚きを隠せない様子で声を上げる。


刀を真正面に構える。


いにしえの武具「」よ!

我が矛となれ!」


刀は一層輝きを増す。


光りが収まる。


俺の持っている刀は

もうあの黒い刀ではなかった。


まるで刀自体が輝いているかのように

月の光を反射する刀身。


重さを感じないその刀は

芸術品と言っても差支えのないものだった。


そして今まで憑依状態でも何の変化もなかった体も

いつもより軽く感じる!


「体が…軽い!」


(吾輩も力が湧いてくる…!

記憶も少しではあるが思い出してきたぞ!)


表桜は流石に驚いた様子だ。


「行くぞ!表桜冬裏。

第二ラウンドだ。」



−あとがき

霊能戦記第十五話いかがでしたか?


次回で第一章も一旦の区切りがつきます。


そこまでいったら霊能戦記をちょっとでも広めようと思っています。


では次回「反撃の時間」でお会いしましょう。ノシ

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