第八話「身体測定と不審な先生」(前編)

由銀に起こされ布団から出た俺は、

大きく伸びをした。


昨日はあの後、遅くなるまで素振りをしたり

いかにして強くなるかを由銀と議論していた。


そのせいで少し寝不足気味だ。


由銀達は物に触ったり掴んだりできるらしく

俺が素振りのトレーニング中に

由銀は朝食を作ってくれた。


由銀は戦国時代の人間なので

和食しか作れない。…それも結構質素な。


一応、暇なときに

料理の研究をしたりしているらしいが。


その後、俺は一人で学校へ行った。


千春ちはる達にその事は伝えたので

すれ違いになることはない。


…というか昨日の今日だと

すげえ話しづらいのが本音だ。


少し余裕を持ち教室に着く。


昨日から始めたトレーニングは

当然ながらすぐに身に着くものでもない。


しかし憑依と武器の練習には

ちょうど良いものだった。


少なくとも

昨日よりは良くなっている…はずだ。


そんな事を考えていると千春と正明まさあき

教室に入ってくるのが見えた。


…今は話しづらい。

俺は目をそらした。

…話しかけられることもなかった。


表桜先生が教室に入り号令をかける。


「皆さん

今日は昨日連絡した通り体力測定を行います。

体操服に着替えてグラウンドに

集まってください。」


(体力測定?聞いてないぞ。)


…そうか昨日、連絡事項を話してたけど

俺その時聞いてなかったな。


体操服は今日持ってきてない。

先生にその旨を伝えようとすると

正明が体操服を渡してきた。


なんで正明が俺の体操服を持ってるんだ?


「……千春さんが

どうせ忘れているだろうからと

僕に連絡をくれたんだ。

…早いうちに謝れよ。」


(…あいつは何でもお見通しか。)


「‥・ありがとう、なるべく早く謝るよ。」


そういうと正明は笑う。


「吹っ切れたようだね。頑張れよ。」


その言葉に俺は笑いながら

「わかった。」と返した。


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――――――――


着替えた俺たちはグラウンドに集まった。


グラウンドには表桜先生と

福田先生が待っていた。


「それじゃあ、初めて行こうか。

福田先生お願いします。」


福田先生は前に出ると順番に行っていく

項目を読み上げる。


項目は握力、上体起こし、長座体前屈、

反復横跳び、持久走、50m走、立ち幅跳び、

ハンドボール投げの8項目だ。


「この体力測定は

憑依をした状態で行ってもらう。

化け物記録を期待しているぞ。」


(…まじかよ。)


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午前の測定が終わり休憩時間となった。


午前は

握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳びの

4項目。


結果は憑依があまり関係がない

上体起こしと長座体前屈は上のほうだが

握力と反復は下から3番目だった。


そんなに体力がないわけではない…が

やはり憑依によるボーナスはかなりでかい。


化け物記録が出まくりで

追いつける気がしない。


…ちなみに下2人は

元から体力がないもの達だった。


休憩しているとふと表桜先生が

みんなにバレないように

こっそりとグラウンドから

離れていくのを見た。


俺は不審に思い後をつけていった。


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――――――――


表桜先生は校舎裏の

あまり人目につかないところにある木陰で

携帯を取り出す。


俺は近くの草むらに隠れた。


表桜先生は画面を見て舌打ちをした後、

携帯を耳元に持っていく。


「なんの用だ。

今は掛けてくるなと言ったはずだが?」


電話に出た表桜先生はまるで別人のような声で相手に話しかけた。


「こちらも手が離せん。

…全く、面倒な任務だ。

ガキの子守なんて任務を押し付けやがって。」


任務…なんの話だ?


「それに関しては良い報告が

近い内に出来るさ。

…あいつは素質の塊だ。

口は悪いが

あれは組織の人間にはちょうどいい。

伸びしろもある。

…育てれば幹部級は間違いないかもな。」


口が悪い奴は内のクラスには赤崎くらいだ。

おそらく彼の話をしているのだろう。


「あぁ、問題ないさ。

誰も俺がフールの人間だってことは

しらねぇさ。」


フール。聞いたことがある。

確か最近出来たテロ組織だ。


(表桜先生はテロ組織の人間だったのか!?)


「じゃあな、定時連絡のときに

また改めて報告する。」


電話を切った表桜先生は

「上から指図しやがって。」と

怒りを露わにしていた。


「…さて、そろそろガキのお守りに戻るか。」


そういうと表桜先生は

グラウンドに戻っていった。


「ふう。」とため息を吐いた俺は

今の話を整理することにした。


表桜先生は最近出来たテロ組織、

愚者フールの人間で任務で教師をしている。

そして赤崎を

フールに引き入れようとしている…

そういうことだろうか。


…こんな話をしたところで

赤崎に信じてもらえるとは思えない。


なら俺が何とかするしかない。


俺は携帯を取り出し

頼りになる人物にメールを送る。


この時、俺はまだ知らなかった。

これをきっかけに始まる

世界を巻き込んだ大事件と

それに巻き込まれる俺たちの運命を。



―あとがき

霊能戦記第八話「測定ノ刻」(前編)

いかがでしたか?


表桜先生の裏の顔が

チラ見えした回でしたね…。


そして零士がメールを送った

頼れる相手とは…!


その答えは後々の話で明らかになります!


今回と次回は体力測定の回ですが

皆さんは学生時代体力測定はどうでしたか?

余裕でしたでしょうか。

僕は苦手でした。


では次回第九話「身体測定と不審な先生」(後編)で

お会いしましょう。ノシ

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