第三話「猛る赤と委員長?」

降霊の儀が終わった俺達は

教材を受け取ったり連絡事項を聞いた後、

解散となった。


千春はクラスの女子達に囲まれて

何やら楽しげに話し込んでいる。


昔から千春は友達作りに苦労している様子は

見た事がない。


そして俺に友達がいるマウントをとってくる。


(…俺もいち早く男友達を作る必要があるな。)


さて話やすそうなヤツはいないものかと

軽く辺りを見渡してみる。


…何故だろう、

すげーガラの悪そうな奴に睨まれている。


気のせいかもしれないと思いつつ、

チラッと見る。


…やはり睨まれていた。


赤い髪を逆立て、

顔を歪めこちらに睨んでくる。


まるで鬼だ。


あいつの名前は確か…そう赤崎刀祢あかさきとうやだ。


触らぬ神に祟りなしだ。

俺は全力で目をそらした。


「おい、てめえシカトすんなや。」


そう言いながら赤崎は一気に俺に詰め寄る。


(やっぱりこうなるか…。

初日からこれだと先が思いやられるな…。)


「…いや、あんなに睨まれて

たら目をそらすだろ。普通。」


「てめえが何で一組にいるんだ?」


話のキャッチボールが成立しないぞ。


「このクラスは実力者集団のはずだ。


だがてめえは入学試験の成績がいいわけでも

霊能の才能があるわけでもねぇ。


そんなてめえが何で一組にいる?」


実力者集団…初めて聞いたな。

確かに俺の頭はさほどよいわけではない。


「霊能の才能がないなんて

なんで分かるんだ?」


まだ授業が始まったわけでもないのに何故、

才能の有無がわかるのか。


俺はそれが疑問だった。


「決まってんだろ。

てめえ名のねぇ武将を召喚したからだ。


ここで降霊の儀をすれば

ある程度才能がある奴なら

最低限、名のある武将を召喚出来る。


…てめえはそんなことも知らねえで

この学校に入ったのか?」


…なんか千春が

そんなこと言ってたような気がする。


でもだからと言ってなんで一組にいるか

なんて聞かれてもわからない。


そんなことを考えていると俺と赤崎の間に

真面目そうな人物が割って入る。


ザ・真面目と言えばいいのだろうか

学級委員とかしてそうなオーラ?を

纏っている。


たしか名前は菅原正明すがはらまさあきだ。


「赤崎君、さっきから聞いていれば

初対面の相手に向かっての暴言。

わけがあるのなら聞こうか?」


赤崎はその言葉を聞き

おもむろに面白くないというような顔をした。


「…まぁいいぜ。

てめぇが落ちこぼれとして下にいてくれれば

俺たちは最下位にまで

落ちるこたぁねぇからな。

感謝するぜ落ちこぼれの霊井たまい君。」


そういい捨てると赤崎は教室から出て行った。


それを見届けると菅原はこちらに向き直る。


「助けてくれてサンキューな菅原君。」


「礼には及ばないさ。

後、僕のことは気軽に

正明と呼んでもらいたい。

苗字だとどうも堅苦しい。」


そう言って菅原…もとい、正明は笑った。


「なら、俺のことも零士れいじでいい。」


話をしていると肩を軽く叩かれたので

振り返る。


振り返ると千春がいた。

どうやら話は終わったらしい。


「菅原くんと話してたんだ。

菅原くんも一緒に帰らない?」


「いいだろう。

僕も君達とは話したいと思っていた。」


――――――――――――――――


帰る途中、正明は俺に由銀のことに

ついて聞いてきた。


「由銀は話を聞く限りだと

名のあった武将のようだが

何故今は知られていないんだろうな。」


「それ私も思った、なんでだろうね。」


「んー。俺も気になってるし聞いてみるか。」


そう言い由銀を召喚しようと紋に手を伸ばす。


「なんじゃ?吾輩に用か?」


突然前に現れた由銀に驚いた俺は、

転びそうになったところから

なんとか体制を立て直して転ばずに済んだ。


「?どうした。

突然ヘンテコな踊りをしおって。」


「誰のせいだと思ってんだ!?

…ってか何でいるんだよ!

まだ召喚してないぞ?!」


俺の言葉に由銀は首を傾げる。


そんな俺に千春は飽きれた顔をしていた。


「…零士。

降霊の儀で契約した霊たちは召喚されるまでは

自由に動いてもいいことになってるんだよ。」


「…そうなのか?」


「…私、ちゃんと教えたよ。」


「補足すると自由期間は現世にいるのもいいし

もちろん霊界に帰ってもいいんだ。

…一応霊能士の常識だね。」


「我が主ながら心配になってくるぞ…」


散々な言われようだ。

このままだとマズイ気がする。

こういう時は…


「…とりあえずその話は一旦置いて

本題に移ろう。」


逃げるに限る。

呆れた顔で見られているような気がするけど

気のせいだ!


「…まぁいいや。」


「その話をする為に呼んだんだからね。」


―――――――――――――――――――――――――――


「なるほど、それで吾輩を呼んだのか。」


由銀は悩んでいる様子だった。


「なんだ?言えない内容なのか?」


その言葉に由銀は

「いや、そうではない」と答える。


「…何故か知らんが吾輩、

記憶が欠けておるのじゃ。」


俺たちは目を合わせる。


「生活のことや友のことは思い出せる。

しかし戦いのことや吾輩の死因などが

どうしても思い出せんのじゃ。」


「そうか…わからないならいいよ。

ありがとう由銀。」


その後、

二人と別れ部屋に戻った俺は考えていた。


名はあるはずなのに

伝えられることはなかった武将、出雲由銀。

由銀の不完全な記憶。


謎はあるが明日から授業も始まる。


俺は早めに休むことにした。


―あとがき

霊能戦記第三話「交流ノ刻」どうでしたか?

次回は個性的な一組の面々を

紹介できると思います。


後、一応補足を。


由銀は昨日のコメントへの返信の通り

オリジナルの武将です。


歴史上の人物たちは小説で登場させようと思うと数が少ないんですよね…。


なので今後、由銀と同じように

オリジナルの武将が出てくるかもしれません。


後、オリジナルの武器なども出てきますので

ご了承ください。


では次回「十人十色な自己紹介」でお会いしましょう。ノシ

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