第二十三話「全力」
怪異は私たちを見ると一吠えして構える。
「どうやら迎え撃つつもりらしい。
私は少し考えてから
「私も剣術が使える。
時間さえ稼いでくれれば
私があの怪異を倒すよ。」
「…なるほど、その策で行こうか。
未来で君の作戦は成功している。」と答える。
そっか、正明くんは未来が
「古典的な策だが、それ
失敗は許されないな。」
正明くんの霊、
私の提案した策を
「それなら安心なされよ。
千春殿なら成功させるとも。」
「その言葉は嬉しいけど
プレッシャー凄いなぁ~」
私は苦笑いをしながらそう答える。
そんなことを話していると
「ちょっ、んな事はいいから早く戦え!」
と苦情を入れてきた。
私と正明くんは気合いを入れ直すと
戦闘態勢を整えた。
作戦は単純、
だけどチャンスは一度きり。
剣技は体力と霊力を消耗する。
零士は結構余裕あるみたいだけど
私はそうはいかない。
「正明くん、お願い!」
「了解!」
そういうと正明くんは
怪異に走って近づいていく。
怪異はまた何かを唱える。
すると突然、地面が
正明くんは未来を視たのか
かなり余裕をもって避けた。
その後も、怪異は攻撃の手を緩めない。
正明くんも後一歩近づけずにいる。
「後少しなのに…」
私は思わずそう呟いていた。
――――――――――――――――――――
俺は
相手の出方を探っていた。
嘉崎は巨大なメスを斬りつけてくるだけで
それ以外は特に目立った行動はない。
巨大なメスは何もない所から現れた。
つまり俺達と同じ
なら能力があってもおかしくない。
(せめてこいつの霊が分かれば
話は早いんだが…。)
残念ながら俺は武将しか知らない
メスを使うのなら医療関係の霊だとは思う。
(その事だがあやつの性格からみるに
「まっとさいえてすと」とかいう
奴なんじゃないかの?)
(「マッドサイエンティスト」な。)
(それじゃ。
歴史上でそれに近い
あそこまでの輩は
少なくとも記録上ではおらん。
…もしかすると
吾輩と同じような奴なのかもしれん。)
(
つまりは本来なら名のある人物のはずなのに
忘れ去られている人物ってことか?)
だとすると霊から予測するのは不可能だ。
(それと千春殿達は何やら苦戦している様子
あやつに危害を加えれば
気を
相手の能力がどんなものなのかは未だ不明だ。
でも、ここまでの戦闘で
能力を出さなかったということは
戦闘向けではない能力である可能性が高い。
(考えてても仕方ない!
このまま押し切るぞ!)
嘉崎はふと、怪異の方を向き
怪異に指示を出そうとする。
俺がずっと相手の出方を探る為、
こちらからあまり
攻撃を仕掛けなかったのが幸いしたのだろう。
今しかない。
俺は全神経を集中させて刀を構える。
流石に感づいて
慌てて防御しようとするがもう遅い。
「
刀は嘉崎のメスを断ち切り
肩口に浅い傷を作る。
嘉崎は衝撃で地面に転がっていった。
(武器を斬りつつ傷は浅めに
それでいて衝撃はそのまま、
我が主ながら変態的な剣の腕よのう…。)
怪異は俺の狙い通り
こちらに意識を向けた。
(道は作ったぞ、千春。)
――――――――――――――――――――
ずっと攻撃を続けていた怪異は突然
意識を零士達の方に向けた。
(今しかない!)
「正明くん!」
正明くんは言うよりも早く
怪異の
怪異の悲鳴が響く。
そんなことお構いなしに
私は刀を薙刀に形状変化させて構え
深呼吸、全神経を集中させる。
狙うは怪異のコア。
地面を蹴り怪異に
「
研ぎ澄まされた鋭い突きが
怪異のコアに吸い込まれていき…
断末魔を上げる暇もなく
怪異はピクリとも動かなくなった。
それを見届けると私は薙刀を抜き
息を吐く。
「見事な突きであったぞ。」
憑依を解除すると
直虎が誇らしげにそう言った。
―――――――――――――――――――
「まさかあの怪異がやられるとは
思いませんでした。」
嘉崎はそう言うと立ち上がる。
「ですが良いデータが取れました。」
嘉崎は先程までの興味を失った様子から
最初の薄ら笑いに戻っていた。
「…今日の所は
これで失礼させていただきます~。
また逢えるときを心待ちにしていますよ。」
嘉崎はそう言うと
怪異に抱えられ去っていった。
逃走用に一体、
残していたということだろうか。
「と、それはいい。
皆、大丈夫か!」
俺は千春達の安全を確認した後
怪異に捕らえられていた住民たちを救出し
鬼人衆に引き渡した。
「かなり時間を
俺はこのまま本隊と合流する。
正明は千春と後で来てくれ。」
千春にはかなり疲労が見られる。
今は休ませるのが
「それでしたら市街地の方に
向かってください。
そこに駐留の
そこなら戦況がわかるかも。」
鬼人衆の一人が俺にそう言ってくる。
「わかった。
後は頼んだぞ。」
「了解です!
くれぐれもお気を付けて!」
敬礼をしてきた鬼人衆に軽く
俺は市街地に向けて走る。
(何か…嫌な予感がする。)
俺は走るスピードを上げた。
―あとがき
霊能戦記第二十三話いかがでしたか?
今回、千春さんが剣技を使いましたね。
一応、これ以外にも
後三種類ほど剣技は出てきます。
次回にはその内の一つを
お披露目することになると思います。
お楽しみに!
では次回
「愚者第二位の男、豪楽猛。」で
お会いしましょう。ノシ
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