お隣の美人七姉妹は今日も俺を逃がさない。〜親の借金を肩代わりしてくれたと思ったら監禁されたので脱走します。あ、見つかった〜
ナガワ ヒイロ
第一章 屋敷編
監禁生活0日目 プロローグ
今日から日記を書こうと思う。
別に大した理由は無い。
ただ自分の行動を改めて振り返る時、便利かなと思って日記を書く。
さて、まずは俺が陥っている状況を明瞭かつシンプルに表現させてもらおうか。
――俺は今、美人七姉妹に監禁されています。
何だそれ自慢か?
と、思われるかも知れないが、一旦冷静になって聞いて欲しい。
数年前、俺の身に何が起こったのか。
最初から覚えている限り、順を追って説明したいと思う。
『いるの分かってんだよゴルァ!! さっさと貸した金返さんかい!!』
扉の向こうで怒鳴っている人がいる。
俺の名前は
よく女の子みたいな名前と言われるが、ちゃんとした十六歳の男子高校生である。
さて。
俺の自宅前には今、借金取りの怖いオッサンたちが来ている。
両親が借りた金を取り立てるためだ。
では、その金を借りた両親二人はどこに行ってしまったのだろうか。
残念ながら、二人の行き先は俺にも分からない。
「あ、あのー」
「あん? てめぇ、あの二人のガキか?」
「あ、はい」
「ちょうど良い。さっさと親出せやゴルァ」
いい加減扉をぶっ壊して突入してきそうな雰囲気だったので、俺は恐る恐る扉を開いた。
すると、人を何人も始末してそうな凶悪な顔をしたオッサンが目の前に一人。
鋭い眼光でオッサンが俺を睨みつけてくる。
「その、非常に申し上げくいんですが、蒸発しました」
「あん?」
「えっと、その、息子である俺を置いて、親二人が失踪しました」
「……マジか?」
「マジです」
俺の言葉に、オッサンが激昂する。
「んだとゴルァ!!」
「ひっ、す、すみません!!」
そりゃそうだろう。
金を貸していた相手が蒸発したら、貸した側としてはキレたくなるのも分かる。
すると、オッサンは俺の顔を見ながら呟いた。
「……チッ。だったらガキのてめぇに請求するしかねぇなぁ」
「え? あの、俺ですか?」
「おうよ。てめぇ、野郎にしちゃあ綺麗な面してんじゃねーか。専門の店で働きゃあすぐ返済できんだろ」
専門の店。
要は金が払えないなら、身体で支払えという意味だろう。
「あの、そういうのって普通、若い女の子とかがするもんじゃ……」
「このご時世だからな。野郎を相手にしたいって野郎も少なくねーんだよ」
「よりによって男相手!? ちょ、あの、俺ノーマルなんですが!!」
「ああ、安心しろ。ヤッてるうちにそっちの道に目覚める奴も少なくないからな」
「やだ!! やめて!! 俺、本当にノーマルだから!! お願いだから別の方法で!! いぃいいいいやぁあああああッ!!!!」
夜中に絶叫する俺は、きっとご近所迷惑だろう。
しかし、背に腹は変えられない。
ここで大騒ぎすれば、きっとオッサンもすぐに退散するはず。
「空澄ちゃん? どうしたの?」
「あん?」
「あ、
家の前を偶然通りかかったのは、長身の綺麗な大人の女性だった。
目鼻立ちがくっきりした、人形のように恐ろしく整った顔立ちの絶世の美女である。
身長は190cm程だろうか。
お胸がとても大きく、腰はキュッと細く締まっており、太ももがムチムチでお尻は肉感的。
グラビアアイドルですら裸足で逃げ出すであろう完璧なスタイル。
たしかドイツ人とのハーフだったか。
黄金の髪は月明かりを反射して輝いており、エメラルドグリーンの瞳が美しい。
彼女の名前は
百を超える大企業を経営している女社長らしく、俺の家の隣にある大豪邸で暮らす、美人七姉妹の長女だ。
「なんだ、てめー。関係ねー奴はすっ込んでろ」
「関係無いことないわ。空澄ちゃんとは昔からの知り合いだもの」
オッサンが茜音さんを睨む。
しかし、茜音さんの身体を上から下まで舐め回すように観察すると、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべた。
何となく、オッサンが次に言うであろう台詞が分かってしまった。
「だったら、お前さんにこいつの借金を返済してもらおうか。出来ないってんなら、身体で支払ってくれても良いんだぜ?」
「借金? 空澄ちゃんが?」
「あ、いや、俺じゃなくて両親です。蒸発しちゃって」
「……そう。空澄ちゃんのご両親は、その、控えめに言ってクズだものね……」
茜音さん、全然控えめじゃないです。火の玉ストレートですよ、それ。
「それで、借金はおいくらなの?」
「ちょ、茜音さん!? まさか払うつもりですか!?」
「うふふ、大丈夫よ。こう見えてもお姉さん、お金持ちなんだから」
朗らかに微笑む茜音さんに、オッサンがニヤニヤしながら口を開いた。
多分、あわよくば茜音さんの身体を堪能しようと画策しているのだろう。
「そこまで言うなら、元金利息合わせて500万、この場でキッチリ払ってもらおうか。払えねーなら」
「あら? 思ったより安いのね」
「……え?」
「これで足りるかしら?」
バッグから札束を五つ取り出し、おっさんにポンと手渡す茜音さん。
オッサンが目を見開いて動揺しているのが伝わってくる。
「あら? 足りない?」
「あ、いや、えっと、足りてます」
「なら良かったわ。借金の返済完了証、くださる?」
「あ、どうぞ」
オッサンが困惑したまま懐から紙を取り出し、茜音さんに手渡した。
そして、その足で帰ってしまう。
「災難だったわね、空澄ちゃん」
「……その、なんてお礼を言ったら良いか。500万はバイトして絶対に返しますので……」
「うふふ、良いのよ。ご近所さんなんだもの。そんなことより、ご両親が蒸発したって本当?」
「え? あ、はい」
「……そう。なら、チャンスね」
チャンス? 一体何の話――
「えいっ」
「!?」
不意に茜音さんがバッグからスプレーを取り出して、俺の顔面に吹きかけてきた。
突然の出来事に、俺は思わず困惑する。
しかし、状況を理解する前に意識が遠退いてゆくのを感じた。
俺はそのまま倒れるようにして、茜音さんの大きなおっぱいへ顔を埋める。
「茜音……さん……何、を……」
「うふふふ♡ 大丈夫よ♡ 今日から私が君のママになってあげる♡ クズ親なんて忘れなさい♡ 私と、私たちと一緒に暮らしましょうね♡」
まるで女神のような、されど捕食者のようなギラギラした目で微笑む茜音さんに薄ら寒いものを感じながら、俺の意識は完全に落ちるのであった。
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