監禁生活28日目 親方ぁ!! 空から女の人がぁ!!





「や、やばい。そろそろやばい!!」



 俺は豪華客船で貸し与えられた部屋に籠もり、頭を抱えていた。


 茜音さんの話によると、目的地の島まではあと三日もかからず到着するらしい。


 つまり、猶予が無いのだ。


 今すぐにでも逃げなければ、本格的に脱走が難しくなってしまう。


 問題はその手段が無いことだが……。



「うーん、非常時用のエンジン付きゴムボートがあっても現在地が分からないもんなぁ」



 仮に現在地が分かったとしても、ガソリンが足りないと海の上を漂流するハメになりそうだし。


 ……仮にそうなったら、茜音さん辺りが財力をフル活用して捜索してくれそうだけど。



「……ちょっと潮風に当たろうかな」



 これは考えても仕方がない。


 まずは心を落ち着かせるために、俺は豪華客船の甲板に出た。


 海特有の磯っぽい香りが俺の鼻をくすぐる。


 太陽はすでに水平線の向こう側へ沈みかけており、海が黄金に染まっている。

 中々の絶景だった。



「ん?」



 ふと、水平線の向こう側から、太陽を背に何かが飛来する。


 シュゴォオオオオオオオオッ!!!!


 という、凄まじい音だ。



「な、なんだあれ? 戦闘機?」



 明らかに音速を超えているスピードで、一瞬のうちに豪華客船の上空を通過した。


 そして、ちょうどそのタイミングで黄昏の空に点が浮かび上がる。

 先程の戦闘機から何かが落ちてきたようだ。



「んん? あれは……」



 目を細めて、その何かに目を凝らす。

 その何かは、人であった。それも俺が知っている人物だ。


 翠理同様、後から合流する予定だった黄鈴先輩であった。


 あの人、何やってんだ!?

 と思った矢先、黄鈴先輩がパラシュートを開いた。


 どうやら豪華客船に着地するつもりらしい。



「お、おお、凄い。ちゃんとヘリポートの方に降りようとしてるんだ……ってあれ? なんか、こっちに向かってきてない?」



 急に進路が変わり、ヘリポートではなく、俺が立っている甲板へ向かってきているような気がしなくもない。


 お、おお!?



「はははっ!! 久しぶりだね、空澄くん!! すまないが受け止めてくれ!!」


「え、ちょ!! うわあ!?」



 親方ぁ!! 空から女の子がぁ!!


 しかし、困ったことに俺は人を一人受け止めるだけの筋力が無い。


 必然、俺は黄鈴先輩と正面からぶつかる形で受け止める羽目になってしまった。


 黄鈴先輩が身に付けていたパラシュートが、遅れて俺たちを覆い、何も見えなくなる。



「むわ、ま、前が見えないっ!!」


「んあっ、ちょ、空澄くん!! 落ち着きたまえ!! そこはぁんっ!!」



 え? ちょっと待って!! 俺、黄鈴先輩のどこ触ってんだ!?


 右手には程よく手から溢れるくらいの柔らかい何か、左手にはすべすべした撫で心地の良い太さの温かいもの。

 そして、顔に謎の圧迫感。



「あ、あの、これ、何がどうなって?」


「んっ、こ、こら、空澄くん。今退くから動かないでくれ」


「あ、は、はい」



 そう言うと、黄鈴先輩が腰を上げた。


 視界が開けた俺の目に飛び込んだのは、黄鈴先輩の股。



「……空澄くん。胸と脚から手を離したまえ」


「うわあ!! す、すみません!!」



 どうやら俺は黄鈴先輩の股に顔を埋めながら、太ももを触り、おっぱいを揉みしだいていたらしい。



「まったく。まあ、今回は甲板にいる君を見つけてテンションが上がってしまった私が悪いんだけれどね。君が触れたものについては忘れたまえ」



 あ、テンション上がったから甲板に降りてきたんだ……。


 黄鈴先輩のはしゃぐ姿ってレアだし、少し得した気分かも。


 何より黄鈴先輩のおっぱいが柔らかかった。何故か凄く得した気分だ。



「……こら」


「な、なんですか?」


「君が触れたものについては忘れたまえと言っただろう?」


「す、すみません」



 多分、しばらくは忘れられないです。ごめんなさい。



「では、私は姉妹たちに挨拶でもしてこよう。あとで空澄くんの部屋にも遊びに行くからね」


「あ、分かりました」



 その晩、俺は黄鈴先輩とチェスをした。途中で藍奈ちゃんが乱入してきて、黄鈴先輩VS藍奈ちゃんで勝負になったりして楽しかった。まる。


 ってちがーう!! 逃げなきゃならないのに!! また一日を楽しく過ごしてしまったー!!



「明日こそは、明日こそは真面目に脱出する方法を考えよう……」



 そんなことを呟きながら、俺は一人ベッドで眠るのであった。

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