#7/29 #名残 #サボテン

 市場で花を探しとると、やっぱりというか、当然というか、黄色い色が目立つ。

 照明の下でも、ひまわりは太陽が咲いとるようだ。顔と同じものや膝の高さもない低いものまで、正確な名前はわからなくとも、たくさんの装いで輝いとった。

 足が止まりそうになるに気付いて、一緒に来た父さんを追う。何回か繰り返してもこりずに、また足が動かなくなる。


「ひな、そんなにひまわり好きやったっけ?」

「……この前、ひまわり、見に行ったけぇ、気になるようになったんかも」


 いいわけをするような形になって、何も言われとらんのに、そわそわとしてしまった。

 馴染みの問屋に挨拶をした父さんは段ボールに書かれた『向日葵』に目を細めて笑う。


「まぁ、名前も似とるし、仲良くしたらええやん」

「なん、それ」


 能天気な言いように、つられて笑っとった。


「今日の手土産はひまわりとプリンにするかなぁ」

「母さん、甘いものはだめって言っとったやん」

「ええ~、文句いーながら、食べとったやん」

「父さんがじぃっと見るけぇよ」


 注意半分、呆れ半分で指摘すると、だって、なぁ、とかなんとか、首をかきながら誤魔化している。

 音無くんが見てきたのも理由があったんかな。目も合っとらんのに、穴があくような視線を思い出した。

 胸が苦しくなる前に、照れくさそうに笑う父さんに聞いてみる。


「人が食べるん、なんでそんなに見るん?」

「だって、ほら、なぁ? なんか、幸せだろ?」

「よーわからん。ちゃんと教えて」


 まぁ、ほら、なぁ? と言い始めたけぇ、聞き流した。


𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒


7月29日(土)


誕生花:サボテン

花言葉:燃える心


 店に並ぶサボテンを思い浮かべて、はて、と首を傾げた。確かに、砂漠で育つ植物だけど、どんと構えた姿はどこか静かだ。

 そうか、あれで燃えてるのか。見た目だけで判断したらだめなんやなぁ。



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