#7/25 #報酬 #エルダー

「作りすぎじゃないか?」


 父さんに声をかけられるまで、時間を忘れとった。手元にはラッピングペーパー二種類と、ショップカードが所せましと並べられている。


「……たぶん、来月の分まで終わった」


 すんごい集中力だな、とケラケラと笑われた。

 からかわれているわけでもないのに、どこかに隠れたくなる。ただ何も考えたくなかっただけ。机の上を片付けながら気をまぎらわす。

 片付けを手伝ってくれる手にラッピングペーパーの束を渡す。


「来月、なんか予定あるか?」


 思い付く限りはなかったので、特にはと返す。みんな、夏休みだから平日の暇なときを見つけて遊びに行けばいいし。来月の清掃作業草とりは丁度、月曜でいつもお休みにしてもらってる。


「夏休みじゃけぇ、千晴ちゃん、休ませてあげたら? 従兄弟たっくん達も夏休みだし、ゆっくりしてもらおうよ」

「部活ばっかりだから、気にするなって」

「サッカー部だっけ」

「そ。洗い物が地獄ってゾンビみたいな顔してた」


 父さんと見合わせて、つい笑ってしまった。

 ぶつぶつと呟く姿につられ、カレンダーを眺める。ひまわりのイラストが目につき、また音無くんのことを思い出してしまった。これは重症だ。誰も何もしとらんし、何も言っとらんのに、心臓が慌てだし始める。

 無性に叫びたくなったけど、我慢だガマン。隣に父さんおるやろ。

 手持ち無沙汰に携帯を取り出して、開きっぱなしのゲーム画面が飛び込んできた。ユーザーを増やすイベントなのか、ログインすると期間限定の種をもらえる。この種を友達にあげればあげるほど、ボーナスが増えていく仕組みだ。

 受信箱には何件かおきに、シロクマが並んでいた。音無くんのアバターだ。毎日くれるけぇ、シロクマがいない日がない。

 ありがたいのに、それ以上にはずかしい。クーラーをきかせているのに、顔が熱くて熱くてたまらんかった。



𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒


7月25日(火)


誕生花:エルダー

花言葉:熱中



 父さんがデザートのプリンを取り出してきて、いつもならいけんやろ、て注意するのに、無意味にまた思い出して、それどころじゃなかった。

 ずーと、音無くんループから抜け出せん。



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