#7/26 #すやすや #カラー
――ひっなちゃーん!
シュポン、という音とともに白狐のスタンプが飛び込んできた。
メッセージに返信しようとしたら、通話の画面に切り替わる。迷ったのは一瞬で、すぐにボタンをスライドさせた。
『しーッ』
通話口から聞こえきた声に固まってしまった。
さやちゃんは、何かたくらんでいるのか、ふふふと一人楽しそうだ。もう一度、ふふふと笑い、ないしょ話をするようにひそめた声で、でもどこか楽しそうな調子で教えてくれる。
『お兄ちゃんがね、面白い格好しとる』
「どゆこと」
『ちょおっと、お口にチャックねー』
お口にチャック。また、なんてかわいらしい。
笑い声を我慢してると、画面がテレビ通話に切りかわる。予告もなく、画面に音無くんが写りこんできた。
心臓がはねあがり、呼吸も忘れてしまう。会話をしてなくてよかった。口がふるえて、きっとうまく話せん。
時間をおいて、やっと理解してきた。
音無くんが気持ちよさそうにすやすやと寝とる。机におおいかぶさるように、自分の二の腕を枕にして、筋ばった肘がかっこいいなと思ったりなんかして
『お兄ちゃん、携帯、立てらせたまま寝てやんの』
そう教えてくれたさやちゃんは小さな声でまた笑っとる。
顔にばかり視線がいっていたが、確かに、枕がわりの反対側の腕はゆるくのびていた。手におさまる携帯は机に立てらせた状態だ。ふらりと傾くが、また反対側にふらりと傾く。猫のしっぽのようにゆるやかに、ゆっくりと、絶妙に立っとる。
カーテンが作る影が風にゆれて気持ちがよさそうだ。
指が画面に触れて、待機画面が立ち上がる。画面越しではよく見えないけど、青い空と、生き生きとした緑の間に黄色が咲いとって、あ、と思った心の声はさやちゃんと重なる。
『待ち受け、この前行ったひまわり?』
写ってるの、ひなちゃん?と軽やかに聞かれたけれど、ちゃんと答えられなかった。
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7月26日(水)
誕生花:カラー
花言葉:軽やか
操作していなかった携帯を呼び起こす。待機画面には、青い空と生き生きとした緑の間に黄色がさいとった。
音無くんは写ってないけれど、同じひまわりを待ち受けにしとるとは……うん……うん。
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