#7/15 #解く #ロサ・フェティダ

 しょぼしょぼする目をこすり付けて、ごまかしていると思いもかけない人を見つけた。

 私服姿の音無くんだ。砂色のノーカラーシャツにグレージュのチノパンとカジュアルな出で立ちだ。隣を歩いているのが妹のさやちゃんじゃなかったら、デートかな、ていうぐらい似合ってる。

 この前の蛍のときはTシャツにジーパンだったけぇ、服に興味ないと思ってたのに!

 自分の服を見下ろす。ボーダーシャツにごわついたジーンズ、それから黄色のエプロン。さえない、て言われなくてもわかる。見ようによっては蜂じゃないかな。やめやめ、かなしくなるだけだ。


「ひなちゃん!」

「ぅえ」

「ひなちゃんだぁ! なになに、お花屋さんなの? お手伝い? バイト? お兄ちゃん、知ってた?」


 ちょっと目を離している隙にさやちゃんが目の前に来ていた。目があった途端に顔が輝き、口が止まらない様子だ。

 音無くんの顔を確認すれば、無表情と無反応。当然、挨拶もない。

 ちょっと冷静になれた、ありがとう。わたしの格好なんて誰も気にしないよね。自意識過剰しちゃった。


「家の手伝いしてるんだ。よかったら見ていって」


 営業スマイルで言うと、音無くんの人差し指がのびてきた。その指がどんどん私に近づくけぇ、何を言われるのかと緊張する。

 前髪にかするかかすらないかの位置で止まった。指先はわたしより少し上。

 音無くんが口を開くのもスローモーションのように見てる。


「これ、シュシュ? かわ――」

「え、あっ、ぐしゃぐしゃやろ! うわぁ、見ないでっ」


 あわてて髪を解いたら、ジトリとした目を向けられた。二人ぶんのそれに、逃げ出したい気持ちになる。ひとつはいつもの無表情のはずなのに、不満そうに見えるのは気のせいでは、ない、はず。

 なんなんやろ。

 疑問に思いながら、髪を手ぐしですいて、落ちていた位置よりも高いところで結びなおす。

 ひとつはご満悦そうな顔。もうひとつは無表情。でも、なんだかうれしそう。

 わけはわかんないけど、わかったことがある。この二人、シンクロしすぎ。

 実は君たち、似た者兄妹だな?



𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒


7月15日(土)


誕生花:ばら(ロサ・フェティダ)

花言葉:あなたを恋しています


 胸がきゅっときつくなるのは、恋、なのかな……?



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