#7/5 #蛍 #ラベンダー

「お礼に、蛍か向日葵、見に行かん?」


 きれいにたたまれたハンカチを差し出しながら言われた言葉に、押し黙る。お礼なんていいよ、と遠慮したいのに、蛍か向日葵を選べだなんて。


「本当なんだ」


 表情は変えずに感心している口ぶりだ。思わず、何がと聞く。


「二択にして誘ったら、断れにくいって」


 新発見を語るような答えに二つ瞬いた。正直者な彼が面白くて笑ってしまう。


「それ、言ったらいけんやつやろ」

夏海なつみの悩んどる姿見たら、変なことしないで素直に行きたいって言ってほしいなって。ダメ?」


 すらすらと話す真顔が迫った。感情を読み取れない目なのに逆らえない感じがする。

 まっすぐに見つめ返すことが出来なくて、あわあわと動く口は素直じゃない。


「だダメなわけじゃないよ」

「じゃあ、今日ね」

「今日?」

「明日、雨だし」


 ぽん、とハンカチをおでこに当てられた。

 わずかに見えた口元は弧を描いている。


「行こ?」


 気付けば、こくりと頷いていた。



𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒


7月5日(水)


誕生花:ラベンダー

花言葉:静寂


 結局、音無くんの妹のさやちゃんも来て、何だかんだと楽しめた。会話ができんかったら、どうしようと悩んだけど、そんな心配はなかったようだ。



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