#7/21 #朝顔 #ばら(黄)

 今日は終業式。明日から、夏休みだ。

 毎週月曜日は水やり当番で学校に来るけど、それ以外は自由な時間が増える。毎朝の早起きは大変だろうけど、心は浮き足立っていた。母さんのお見舞いと、やっちゃんと遊びに行きたい。それから、音無くんとの約束もあるし。

 やっちゃんが体育館から出てくるのを渡り廊下の端で待っていると、緑のカーテンを見つけた。二階まで届きそうな程、朝顔が隙間なくツルをのばしている。

 白、紫、ピンクとしぼみかけた朝顔を目で追いかけて、校舎を見上げた。梅雨明けした空はかんかん照りだ。目を細めていると視界が白くなる。

 後ろへ傾いた体は何かにあたって、ふらつくのをまぬがれた。

 上からのぞきこんで来た顔につられて顔を上げる。おでこのすぐ近くで、自分のではない黒髪がゆれていた。

 ぶつかった視線に息を吸いこむ。

 ふ、とやわらかく吐息をこぼした音無くんが映り、あぶないよと小さな声が耳の奥を震わせた。


「ち、ちか、近くない?」

「近くないと助けられんし」


 真剣な顔で両肩を握った手は、綿のようにやわらかかったけど、熱がわたしに移ってくる。

 夏の暑さに負けないぐらい、わたしの顔も熱くなった。あわてて両手で隠したのに手遅れだったようだ。


「保健室行く?」


 真剣な声がそう離れていない距離なのによく響いた。

 だいじょうぶと答えた唸りは悲鳴に近い。


「一緒に帰る?」


 心配そうな声がわたしの心臓を乱す。ああ、耳まで熱い。本当、やめてほしい。

 やっちゃんが来るまで、ほほを隠す手をはずせなかった。



𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒


7月21日(金)


誕生花:ばら(黄)

花言葉:献身


 一人で帰ると言い張ったのに、無表情な音無くんにたれた尻尾が見えたような気がして、結局、わたしが折れた。

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