#7/11 #飴色 #おりづるらん

 図書室からの帰り道、開け放たれた窓の先で音無くんを見つけた。書道室の机につっぷしている。

 そういえば、書道部だっけ。文化祭で展示されていたきれいな字を思い出した。去年は顔さえ知らんかったのになぁ。

 そろりと近づいて顔をうかがう。

 飴色にかがやく机は寝心地がよくないはずなのに、すごく気持ちがよさそう。頬が色づきはじめた夕陽にほんのりと照らされている。


「音無くん、下校時間だよ」


 わたしの声に反応して、音無くんがうなる。寝ぼけ眼をうっすらと開け、まだ眠たそうだ。目の下にあるホクロが二つになっていた。墨でも散ったのかな。


「顔、汚れとるよ」


 頬を指差して言えば、素直に手でこすり始めた。いつもと変わらない無表情が幼く見える。


「寝不足?」

「はやおき、しとるから」


 眠そうな声で答えた音無くんは、とれた?と無防備に目を瞬かせた。

 水やりの時って偶然じゃなかったんかな。ひとりよがりなことを考えて、早起きの理由を聞くことができんかった。


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7月11日(火)


誕生花:おりづるらん

花言葉:子孫繁栄


 音無くんの寝癖、おりづるらんみたいにぴょんぴょんしとったな。

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