音無くんの溺愛はつたない #文披31題

#7/28 #方眼 #なでしこ（八重咲き）

　遅めの昼ごはんを食べていると、着信が入った。アプリを開くと『夏日』と書かれた写真が飛び出した。

　規則正しく並ぶ方眼に埋め込んだように整った字は堂々としている。左下に書かれた名前も文句のつけようがなかった。

　でも、なんで、『夏日』と書いたんやろと頭をひねっていると、白熊スタンプのどや顔が送られてきた。よくできたと、でも言うように。

　ほめられるのを待っている子供みたいで、つい笑ってしまう。携帯越しの相手にはバレないことをいいことに、写真をダウンロードして、文字を打つ。

――音無くんが書いたの？

――そ

――字、きれいだよね。

　しばらく間が空くけぇ、不思議に思っていると、ぽすぽすと連投が返ってくる。

――夏海の字はかわいいよね

それから、自分の意見に賛同するようにうんうんと頷く白熊スタンプ。

　だから！　音無くんっ！　そういうこと、さらっと言わないで！　かわいいは心臓に悪いんだからぁ！

　心のままに叫ぶのもはずかしくて、携帯を握りしめたまま、机に突っ伏す。

「ぬうぅうぅぅぅぅう」

　意味のない声にかわいくないやろ、とセルフツッコミするぐらいには余裕がなかった。

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７月２８日（金）

誕生花：なでしこ（八重咲き）

花言葉：純愛

　数ページ前をめくって、同じなでしこでも花言葉が違うのはとても面白い。

　八重咲きのなでしこは、華やかさを持ちながらもかわいさもある。秘密話をするように真ん中によった八重咲きも味があっていいと思う。

「いろんな愛があるんだねぇ」

　この心にともった想いはなんて言ったらいいんだろう。