音無くんの溺愛はつたない #文披31題

#7/19 #爆発 #とりかぶと

　朝起きると、よりにもよって、前髪が爆発しとった。他のところなら！　結んで簡単に隠せるのに！！　この前髪、水をつけようが、ワックスつけようが、なおらんし！　頑固すぎん？！　何本、ピンつけたらいいのぉ！　おでこがすぅすぅするぅ。

　なおすのに手間取っとったら、遅刻寸前だ。教室に行きたくなさすぎる。今日から夏休みにならないかな、無理？　無理だよねぇ。

　昇降口の鏡で最終チェックをしていると鏡ごしに覗きこまれる。

「おはよ」

「ぇ、ぁ、おはや」

　噛んだ、噛んじゃったよ。いつかの音無くんじゃん！！　音無くんに音無くん返ししてどうするん？！

　はずかしくてあわあわしていても、音無くんは涼しい顔だ。じっと見つめてくるその顔に笑われてしまうかもとイヤな方へ考えてしまう。

「似合うね、かわいい」

　言い訳しようとしたわたしより先に音無くんがつけ加える。

「シュシュもかわいかったよ」

　言葉を飲み込んでしまった。

　笑われると思って、確かに笑われたけど、やさしくやわらかい感じだ。勝手に予想したのと違う。

　あれ、もしかして、これ、夢なん？

　立ちつくしていると、手を握られる。

「遅刻する。行こ」

　引っ張られて、追いかけるように階段をのぼる。その状況に教室のみんなに見られてから、現実だと気がついた。

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７月１９日（水）

誕生花：とりかぶと

花言葉：騎士道

　とりかぶとの可憐な姿を思い出して、印象とは真逆といっていいほどの花言葉にちょっと驚いた。

　すっとのびた茎に、頭を下げるように花がついてるからかな。あとで調べよ。

　騎士……かぁ。休みの日も、今日も、音無くん、かっこよ……はずかしい、はずかしいから、考えるのやめよ！！