#7/16 #レプリカ #ストック
待ち合わせはひまわり畑の最寄駅だった。ここからバスで移動して向かう。
予定通り早めについたけ、時間をつぶさないと。ホームで立ち尽くしてもしようがない。
改札口に向かう途中、鏡にうつる自分が目に入る。動きやすいようにサロペットにしたけど、大丈夫かな。上の部分がウエストまでしかないけど、腰の後ろにある編み上げが気に入ってる。昨日みたいに使い古したTシャツでもないし、大丈夫、大丈夫だよね。
服装を確認してひと呼吸。帽子からはみ出る三つ編みも崩れてないこともバッチリ確かめておいた。
改札口を出て、飲食店のレプリカを眺める。
そういえば、今日のお昼って決めてなかったな。学校でうまく話せなくて、家に帰ってもバタバタしてたから、すっかり抜けていた。音無くんに待ち合わせ場所と時間を送ってもらってなかったら、当日あわてていたと思う。
携帯を確認していないことを思い出した。
携帯のロック画面に着信の通知がある。誰だろと開いてみるとお父さんだった。
文面を読んで、血の気が引いた。信じられない気持ちと大丈夫と言い聞かせる気持ちと、ぐるぐると回って追いつかない。
ああ、でも、音無くんに言わないと。
――ごめん
その文字を打つだけに、指がふるえた。
「夏海?」
「おとなし、くん」
通路の向かい側にいる音無くんが駆け寄ってくる。気付いたら、目の前にいた。
デフォルトの真顔が近い。
「どした?」
「今日、行けなくなっちゃって」
父さんのメッセージで頭がいっぱいだったはずなのに、近さと、肩に触れた熱で余計に混乱した。
音無くんは律儀に待ってくれる。
楽しみにしていた気持ちと申し訳ない気持ちがごちゃまぜだ。
「ごめん」
何で謝ってるのかも追い付いていないのに、いいよと音無くんは目を細めた。
帰ると言う前に、手を握られる。
「送る、行こ」
きゅっ、と胸の奥が苦しくなった。
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7月16日(日)
誕生花:ストック(赤)
花言葉:私を信じて
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