#7/8 #こもれび #みやこ草
休日の朝は四時起きだ。父さんについて生花市場についていくけ、早起きせんといけん。
暗闇の中、あくびを噛みしめるわたしを見た父さんはやさしい顔で言う。
「来週、試験やろ。手伝わんでもええぞ」
「何言っとん。今日、配達三件あるけ、間に合わんよ」
そだっけ、と父さんはとぼけているが、何とかなるなると思いすぎなのだ。その時の店番だって、誰がする。
急いで仕入れを済ませて、二人で仕事車に乗り込む。
行きよりも増えた車とすれ違うのをぼんやりと眺める。店についたら、結婚式二件と葬式一件の花の準備をしなければいけない。しばしの休憩だ。
朝日をさけるために日よけを下げた父さんがぼやく。
「バイト、雇うかなぁ」
「そんなお金ないの知ってますー」
冗談まじりの声で返しても、父さんは心配顔を改めない。
「でもなぁ、ひなも来年、受験生だろ。クラスでいい子いないのか」
「いないこともないけど」
「あ、なんか、やだな。その言い方」
「何で」
エンジンを止めた真剣顔がわたしに向く。
「気になるヤツがいるみたい」
「それセクハラ」
イラッとしてドアを強めに閉めてしまった。
仕入れた花をかかえるわたしの後ろを父さんがついてくる。
「な、な、な? おらんやろ」
「……おらん」
「その間はなにぃ?!」
「この話終わり! さっさと仕事してッ」
母さん、はよ帰ってこんかなぁ。父さんの情けない声を無視して作業に没頭する。全てを終えたら、開店前だというのに体がくったくただ。
やっと顔を出した太陽が通りの木を照らし、葉をすかした。
ピーヒョンと朝の挨拶のような着信を耳だけが拾う。疲れはてた体には、こもれびがあまりにもまぶしかった。
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7月8日(土)
誕生花:みやこ草
花言葉:また会う日まで
絶対安静と言い渡された母さんはかかりつけの産院に入院している。働きすぎがたかったのだ。
予定日は7月31日。
「母さんも赤ちゃんも無事でありますよぉに」
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