#7/14 #お下がり #フロックス

「なんか、ごめん。余計なことしちゃったわ」


 挨拶もそこそこに言われたことに、わたしはピンとこなかった。


日向ひなた、注目されるのイヤやん」

「……注目、されてたの?」

「え」

「え?」


 やっちゃんと目を見合わせる。

 数秒固まって、らちがあかないと思ったのだろう。目の前の眉間にしわがよる。


「昨日、ずーと気まずそうな顔しとったやん」

「……注目、されてた、から、じゃ……ない、ような」


 やっちゃんの目は疑問の色でいっぱいだ。

 言ったわたしも何を言ってるのか、さっぱりわからなかった。

 渋滞している言葉をひとつずつ選び出す。


「はずかしいのは、はずかしかったけど、たぶん――」

「おはよ」


 降ってきた言葉に顔をあげたら、音無くんがいた。言ってもないのに、聞かれてもないのに、顔に熱が集まる。

 通りすぎた音無くんの背を目で追っていたわたしに、やっちゃんは唐突に謝ってきた。


「すまん、うちらが邪魔だったわ」

「え?」


 意味がわからないと気持ちを込めたのに、やっちゃんは何度も頷いている。


「これね、由緒正しい縁結び神社でうけたおさがり御守り。必要ないかもだけど、受け取って」

「え?」


 まぁまぁまぁまぁ、と渡された。なぜか、クラスのみんなが頷いている。



𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒


7月14日(金)


誕生花:フロックス

花言葉:共感


 みんな、やっちゃんに共感してたの、かなと思ったけど、そのなかみは、やっぱりわからなかった。


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