#7/3 #文鳥 #オリエンタルポピー

 授業終わりのチャイムが鳴る。プリントを回収する時、ちらりと落書きが見えた。


「鳥、好きなん?」


 赤と黒、ほんのちょっとのオレンジの蛍光色だけの殺風景なノートを指差して聞いた。あんまりにもかわいかったから。軽い気持ちで。

 伏せていた瞼が上がり、真っ直ぐに見つめられる。


「好き」


 と真顔で言われた。

 破壊力がすごくて、耳の奥でエコーがかかっている。

 すき、好き……あ。鳥だよね、うん、鳥だ。

 うるさい心臓から目をそらして、そっか、とごまかす。にやけとらんよね。勘違い女痛いとか思われとらんよね。音無くんがわたしを好きとかありえんし。音無くんのポーカーフェイスを見習いたい!


「ぶ、文鳥って言うんだっけ。絵、上手なんだ」

「妹が描いたんよ。飼いたい飼いたいってうるさい」


 何を考えてるかわからない顔で音無くんは文句をたれる。不思議と冷たく感じなくて、少しうらやましくなった。


「いいなぁ。わたし、一人っ子だからさ。妹や弟の世話とか焼いてみたかった」

「いいよ」

「……んん? どゆこと?」

「俺の世話、焼いていいよ」

「そこは妹やろ!」


 真顔な彼に全力でツッコんでしまった。


「それはヤダ」


 ひっそりと口端を上げたのは一瞬だ。

 あ、これ、わたしをからかっとるやろ、全く。



𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒


7月3日(月)


誕生花:オリエンタルポピー

花言葉:夢想家


 音無くんの好きに夢見た恥ずかしさがぶり返した。




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