音無くんの溺愛はつたない #文披31題

#7/2 #透明 #金魚草

　ピーヒョンという着信で携帯のロックを解除した。

　朝八時に『おはよう』と溶けかけている白熊のスタンプが送られてきた。クラスのグループから私のホームに飛んできたみたい。

　音無くんは見た目の十倍、おしゃべりだ。無気力な顔がすごーく読み取りづらいんだけど。

　スタンプを見る限り、暑いのだろうか。確かに暑い。……あの顔で溶けるって想像つかんな。

――おはよう

　本当は数時間前に起きてたけど、話を合わせた。

　スタンプを吟味してる間にぽすっと文字が飛んでくる。

――休みって何してんの？

　と、きょとんとした白熊

――家のこと

　拳（翼）を上げるペンギンを添える

――洗濯すんの？　ご飯作ったり？

――してない(／_-)

　メッセージはつかずに真顔の白熊が現れた。

　スタンプまで真顔なのがらしいとゆーか、律儀とゆーか、なんとゆーか。可笑しくて笑ってしまう。

　白熊のスタンプはアイスクリームメーカーをフォローしたらもらえるらしい。ダウンロードしているとピーヒョンと鳴った。

――透明人間になりたい

　スタンプは飛んでこない。きっと真顔で文字を打ってんだろな。

　ダウンロードついでにぺすりと真顔の白熊返しをした。

　観察したいけ、の文字と少し時間を置いてあわあわと沸騰した白熊が返ってくる。

　そんなに暑いのかな。

　でも、なんで透明人間。観察するのは……わたし？

――観察しても楽しくないと思うよ

――夏海が頑張り屋なん知っとるよ

　待って。どう返せばいいか、わかんない。

　今日ってこんなに暑かったっけ。

𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒○𓈒𓐍𓈒◌𓈒𓐍𓈒

７月２日（日）

誕生花：金魚草

花言葉：おしゃべり

「いっぱい、おしゃべりしちゃったな」