第53話 調査結果

 俺はフローラと別れた後。さっそくウォードについての聞き込みを開始した。


「ウォードさん? ああ、知ってるぜ。この世界じゃ有名な商人だ」

「主に武器や防具を売ってる人だ」

「この王都には店はないわよ。けどあれだけの商会を持っているから、いずれ王都に店が出来てもおかしくないわね」

「今、街の北東部付近の土地を買っているらしいな」


 旅人や商人に話を聞くと、あっという間に情報が集まった。

 ウォードはどうやら、それなりに名の知れた男だったようだ。


 聞いた情報から推測すると、ウォードはこの王都で店を構えるつもりらしい。

 それで教会付近の土地を買っているのか?

 だがそれにしては範囲が広すぎる。

 教会だけでも五十メートル四方の土地があるが、その周辺も買収しているようだ。

 商店街でも作るつもりなのだろうか。

 だがそもそも店を構えるなら北東部は立地条件が最悪だ。

 商売をしている者なら、治安が悪い所に店を出すなどバカなことはしないはずだ。

 店頭に出した商品が盗まれたら、身も蓋もないからな。それに客が集まる場所でもない。

 そうなると他に目的があると考えるべきか。


 そして夕方になるとフローラがやってきたので、自宅へと通す。


「ウォードさんについてわかったかことは、大きい商会を持っている商人で王都進出を狙っているそうです。そしてすでに教会周辺の土地は買収が終わっているようですね」


 大体俺が調べた内容と一致しているな。


「南区画付近に屋敷を持っているため、普段はそちらで過ごしているみたいです。それと⋯⋯」

「どうした? 他に何かあるのか?」


 フローラが言葉に詰まる。これは何か悪い情報があるようだ。


「その⋯⋯噂ですけどあのウォードという人は、人身売買をやっているそうです」

「人身売買だと?」

「はい。ただこれはあくまで噂なので本当かどうはわかりませんが⋯⋯」

「もし本当だったら看過する訳にはいかないな」


 人を無理矢理支配するなど許されないことだ。だがここではそれがまかり通る世界となっている。

 専用の魔道具を使うことで、相手に言うことを聞かせることができるのだ。

 だが幸いと言っていいのか奴隷は国が管理しているため、登録制になっており、主人と奴隷、双方の確認の元契約が行われる。

 しかし登録されていない奴隷が数多くいるのが現状だ。そしてそのような奴隷は劣悪な環境で過ごしていることが多い。


 次は直接ウォードの屋敷へと侵入して探ってみるか。

 しかし今日はリアとオルタンシアに訓練を施す日なため、明日にするか。

 そして俺はじゃっかん恒例となりつつあるフローラの頭を撫でて、夜の城へと向かうのであった。


 城へ到着すると、裏庭へと足を向ける。

 すると既にリアとオルタンシアが木剣を手にし、俺を待っていた。


「「ユウト様こんばんは」」


 二人は俺の姿を見つけると頭を下げてきた。

 神武祭が終わった後、オルタンシアにはリアの主が俺だと話をしたら驚いていたが、すぐに理解を示していた。やはり事前に俺の実力を見せていたことが功を奏したようだ。

 そしてその結果。オルタンシアは俺のことを様をつけて呼ぶようになった。


「待たせたな」

「いえ、私達も先程来た所です」

「それでは初めるぞ」


 まずは二人の能力を解放するために、キスを施す。


「や、やっぱりこれは慣れませんね」


 まだ数回しか解放していないオルタンシアは、キスの度に顔を真っ赤にさせる。


「私はもう慣れましたよ。ユウト様とは数えきれない程口づけを交わしていますから」


 リアは自分の方が大人だとマウントを取りたいのか、じゃっかん上から目線で言葉を発する。

 だがその言葉とは裏腹に、リアの顔はオルタンシア以上に真っ赤になっていた。


「そ、そうですね」


 そのため、オルタンシアはリアの言葉に、苦笑いを浮かべることしか出来なかった。


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