異世界を裏から支配する~表舞台は信頼できる仲間に任せて俺は無能を装って陰で暗躍する~

マーラッシュ【書籍化作品あり】

第1話 裏から異世界を支配する

 ここは異世界オフィールド。

 誰もが一度は望む奇跡、魔法が使える世界だ。しかしその代わりに科学は現代よりかなり劣っているため、中世後期くらいの生活水準しかない。

 どうして俺が現代や科学という言葉を使うかというと、それは前世の記憶を持っている異世界転生者だからだ。

 おっと、自己紹介を忘れていたな。俺の名前はユウト。12歳の少年だ。本当はもっと語りたいことがあるが、今はそれどころではないので後にしよう。

 俺は現在、馬車を追って暗闇の山中の街道を1人進んでいる。

 何故俺がこのような所にいるかというと、それは今日この場所で、さる高貴な者が暗殺されると情報が入ったからだ。

 この少年の姿だと、外套で顔を隠さないと相手にもしてくれないため、情報を手に入れるのは一苦労だった。だが地獄の沙汰は金次第という言葉があるように、いくらか金貨を握らせればこの手の情報を得ることができる。

 ただ情報の真意が正しいかどうかわからないため、前金しか渡していない。だから今俺は、本当に暗殺が行われるかどうか確めるために、こうして馬車の後を追っている。

 俺にはこの世界でやり遂げたい大望がある。

 それは裏からこの異世界を支配し、全ての悪を断罪することだ。

 そのためには俺個人の力だけではなく、どんな権力にも屈しない地位が必要となる。それを後から手に入れるなら、相応の労力と年月が必要になってしまう。

 だがその地位を自分が手に入れることができないなら、代わりを立てればいい。そして出来ればまだ汚れきっていない子供で、頼るべき者がいない子だとベストだ。その方が俺に依存して裏切られる可能性が少なくなる。まあその時はこちらも容赦なく対応させてもらうが。


「どうやら情報は本当だったようだな」


 突然馬がいななき、馬車はその場に急停止する。どうやら馬車の行く手を、黒い外套で顔を隠した5人組が遮ったようだ。


 さあ、行こう。

 今日この日この時が、異世界を裏から支配する第一歩だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る