第23話 迫りくる双子妹の手 1

「――うーん……」


 眠れない。というか、眠ったら悪夢を見てしまいそうな予感さえある。


 幼い頃に別れた四人の幼馴染と再会を果たすことが出来た――それはいいとして、まさか珠季があそこまで黒すぎる子だったなんて思わなかった。


 芸能に秀でていた子だからこそ、成長したら俺のことなんて忘れてそっちの道に進んでいるものとばかり思っていたのに……。再会したら俺との変な約束でこじれていたとか、シャレにならない。


 学園を長らく休んでいたのも俺や彩朱たちとの様子を眺めていたということも知ったけど、それはやはり珠季の父親が黒い関係の人だからとしかいえないわけで。


 せっかく成長した幼馴染の女の子たちと仲良く、そしてその中の誰かと付き合えたら――なんて思っていたのに、珠季は異常過ぎて俺には合わない。


 そうなると、珠季以外の三人の誰かと――ということになる。しかしこうして一人で悩んでいても寝られなくなるし、無理やりにでも寝るしかないか。


 ――――


「……?」


 何かおかしい。


 まだ浅い眠りであることは間違いないのに、何かが足下から近づいてくるような感じがある。どこかに触られているわけじゃないのに、どうしてこんなに気になるのだろうか。


 足下という時点で視線を感じられるわけでも無いのに、妙に気になってしまう。多分、珠季のことで悩みすぎたせいもあるだろうしとにかく目をつぶって寝るしか。


「――駄目なの?」


 え? この声……やっぱり幻聴でも無ければ夢の中でも無いよな。ここはまだ動かずに誰の声なのかを確かめなければ。


 そもそも時間を見れば、今は深夜4時くらい。家族だってとっくに寝静まっている。眠りが浅いままでこの時間になったのもきついとはいえ。


「ねぇ、ボクじゃ駄目なの?」

「――!」


 声の主が恋都であると分かったと同時に、恋都の手が俺の太もも辺りに触れていることも判明。


 俺は慌ててタオルケットをどかした。


 そこにいたのは、


「こ、恋都……俺のベッドの中で何してんの?」

「えっと、夜這い? なるべく気づかれないように潜りこんでたんだけど、我慢出来なくなって足とか触ってた」

「そうじゃなくて、家の中にはいつから?」

「んとね、ナカ兄のママさんのお部屋にいさせてもらってた! 自分が眠る頃に動き出していいよ! って言われたから待ってたんだ~」


 まさかの親グルか。そういえば再会した時も恋都を先に上がり込ませていたんだよな。どうして恋都だけ侵入を許しているのかは不明だけど。


「待ってた……って何でこんな……」

「そんなの決まってんじゃん! ナカ兄……うんん、あたるにはっきり決めてもらう為だよ! だからボクはもう実行するしかなかったんだ」

「決めてもらうっていうと?」

「最初に言ったのを覚えてないの? ボクと街香とどっちをめとるかって話なんだけど~」


 ああ、そういえばそんなことを聞いてたような。それにしたって行動が大胆過ぎるだろ。


 街香は俺の家に来ることは無いとはいえ、小柄だからと家に忍び込むなんて。


 しかもさっきから怪しげに動かしている手が問題だ。


「それは分かるけど、恋都のその手は?」

「ボクか街香か、それとも――ってことを決めてもらう為に、ボクはあたるの体に直接聞くことにしたんだ! だからあたる……覚悟しろ~!!」

「お、落ち着いて」

「嫌だ! ボクは本気だぞ!」


 急に金縛りでもあったかのように足下から迫ってくる恋都とその手の前に、俺はこのまま何も出来ないのだろうか?


「ふ、触れるもんね……」

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