第22話 姉と妹と元ギャル 恋都パート

「ねえ、どうすればいいのさ~?」

「わ、わたしに言わないでよ~。ナカくんと彼女がどういう関係だったのかなんて分かんないし、そもそも彼女は昔から手に負えない感じの子だったし……」

「むぅぅ~」


 彩朱が言うように小さい頃、子がアタルの近くに潜んでいたのは知ってた。だけどあの頃はそこまで知らなくてもいいことだったし、気にすることでも無いって思ってた。


 だからこそ、ボクはボクなりに彼に少しずつ近づいていたというのに。


「あ! それなら街香に聞いてみたら? 何か因縁がありそうだったし、ナカくんを守ろうとしてたみたいだから教えてくれるかも?」

「あの人に? えぇ~? どうしてさ?」

「だってわたしは違うけど、恋都にとっては姉でしょ? 姉に聞くのが一番いいと思う~」

「嫌だよ。何でボクが……」

「つべこべ言わないで色々聞いてくればよくない? ナカくんのことも聞けるかもだし」


 彩朱の言葉のとおりに動くわけじゃないけど、確かにアタルのことやあのに立ち向かうには、あの人――街香に頼るしか無い気がする。


 嫌だけど話しかけるしかないのかなあ。


「あ、あのさ、ナカ兄と何かあった? それとその、タマちゃんとはどういう因縁があるの?」

「……珍しいことが起きるものだね。恋が話しかけてくるなんて。私を許す気になったとか?」

「許してないよ。でも、ナカ兄のおかげで他の子たちも大人しくなったみたいだし、ナカ兄に免じてちょっと許してる」


 ボクの姉である街香はずっと女子たちに手を出してきた。手を出された子たち全てが好意的とは限らなくて、中には妹であるボクに牙をむき出しにしてくる子がいた。


 ボクには関係が無いことだったのに、姉である街香のせいでボクは無関係な女子たちと話も出来なくなって、今では男子たちとしか話が出来なくなっている。


 同じ顔の姉が女子に手を出したせいで、同じ顔の妹であるボクが嫌われる――そんなのはあまりにも酷すぎた。


「ナカ兄、ね。ふふ。確かに彼のおかげでこれからの私は素直に生きられる。それはそうと、恋」

「何だよ?」

?」

「ボクは別にそんなつもりは……」

「もったいないよ? 私と同じつくりをしているのに、本音を隠したままなんてね。もし恋があたるに手を出しても、私は何も言わないよ?」


 何だよ偉そうに。今まで散々手や足を出してナカ兄を痛い目に遭わせてきたくせに。どうしてそんなに変わったんだよ。


「じゃあ手を出してボクとナカ兄がその……」

「構わない。姉妹だから、悦びも共有し合えるって思ってるんだ。とにかくさ、彼は恋に意識することは難しいだろうね」

「ど、どうすればいいのさ~?」

「護国はもちろん、私では出来ないことを恋は出来るはずだ。それを実行に移して、彼をその気にさせればいいだけ」


 彩朱も街香も出来ないこと……それって多分あれのことだよね。


「もう時間が無い。神城珠季が彼に近づいた以上、時間が無いんだよ。だから恋が先に動けばいい。いいね?」

「うう……ボクが動いたら変わるってこと?」

「そう思ってるよ。私――恋都の姉は少なくともそう思ってる。だから今夜にでも行っといで」


 初めてだ。街香がボクに微笑んで、しかもナカ兄のことを任されるなんて。それならボクがやれることは決まってる。


 タマちゃんに隙を与えないくらい、ボクがナカ兄――アタルを振り向かせてやるんだ。

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