第32話 ハーレムカフェでイこう! 

 いよいよ学園祭が始まった。幼馴染たちの狙いが気にはなったが、それを気にしていたら楽しめないので気にしないことにした。


 それなのに、


「……これ、学園的に大丈夫なの?」

「空上センセーも若い時に似たことをしてたらしいから平気。それともあたるは海外でもなかった?」

「ど、どうだろ。覚えてないかも……」

「ま、とにかくさ、あたるはこのまま大人しくソファに深く腰掛けていればいいよ。そしたらお待ちかねのハーレムを味わうことが出来るからね……」


 待っていたつもりは無かったんだけど、何故か俺が男子を代表してハーレムカフェを熱望していたことになっていたらしい。


 そして今、どこから拾ってきたといわんばかりのゴージャスソファに座らされたうえ、脱出不可能ってくらいに全身がソファに沈みこんでいる。


 すぐそばにいるのは今のところ街香だけのようで、他の彼女たちとクラスの女子たちは近東たちや普通の客を接客しているようだ。


 街香を含めた女子たちの格好は、珠季が手掛けているカフェの内のどこかから借りてきたらしきメイド服で、見ただけでこっちが顔を赤らめてしまいそうな露出をしている。


 露出度が高いせいもあって、いわゆる一般の男性たちは何かを勘違いしそうだ。そしてまさにその瞬間が訪れようとしている。


「ほら、見てみなよ?」

「あっ……」


 あぁ、言わんこっちゃない。格好が格好なだけに気軽に肩を抱いたり、女子との距離を近づけすぎる客がちらほらと現れ始めた。


 まるでどこかの怪しげな夜のお店と勘違いしているんじゃ?


「た、助けないと!」

「心配いらない。あたるはそのままここにいなよ。ああいう客の対処は黒い令嬢が片付けるってほざいてたから、マチたちは眺めるだけでいいんだ」


 黒い令嬢――あぁ、側の関係者が見守っている訳か。それも含めて学園祭、それもうちのクラスだけ別次元なのでは。


 一部始終だけしか見えなかったが、おイタをしそうになった男性客は気づかない間に片付けられたようで、カフェ自体の運営には何の問題も起きなかった。


「……さて、と。あたる」


 俺のそばに立っていた街香が俺の膝の上に手をついてくる。


「うっ? な、何かな?」

「ん、別に」

「あっ、あのさ、コーヒーとかジュースとかは無いの?」

「あたるは飲みたいんだ?」

「ハーレムの部分はともかくとしても、カフェなんだし飲食はしたいかな」


 珠季が絡んでいるといっても、さすがに学園祭で出来るカフェ程度なら最低限の飲食くらいは許されているはず。


「オッケー。あたる……ご主人様の望みを何でも叶えて差し上げるよ」

「えっ?」

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