第27話 姉と妹と元ギャル 彩朱パート

「……ふーん? それがあなたの望みってわけ?」

「そ、そうだけど……ナカくんのことはずっと本気なの! 本気じゃない珠季にだけは邪魔されたくない」

「本気、ね。わたくしにとっての本気は全てを投げだす覚悟があってのこと。それなのにあなたって、見た目とか言葉遣いとかで誤魔化す小賢しいことばかり」

「ウチなりに頑張った結果がそうだっただけだもん……」


 ウチだけじゃなくて、珠季は昔から誰に対しても見下す態度。あの子、恋都だけは気を許してるみたいだけど。


 そんなことはどうでもよくて、今は彼とのことについてをきちんと言っておかないと駄目。


「それで?」


 それなのに珠季は冷めたような目つきでわたしをじっと見ている。何で同い年なのにこんなに迫力があるんだろう。


 こんなんじゃ上手く言えないじゃない。


「えっと、だから――とにかく彼にちょっかいを出さないで!」

「選ぶのは彼の方だと思うのだけれど? そんなに言うなら告白すればいいのではなくて? それとも自信が無いからわたくしたちに釘を刺している……ってこと?」

「違うし……でも」


 上手く言葉が出て来ないし、言い返せないのも悔しいし。


「ふぅ。面倒な子ね、全く。それなら、学園祭で決めてもらうことにするわ!」

「え、何を決めてもらうの……?」

「それはクラスの発表の時にでも話すわ。それでいいでしょ? 彩朱」


 彼に対して手を出さないといったことは言われなかったけど、学園祭での出し物で具体的なことを言うつもりがあるのなら、わたしにとっても有利に働く気がする。


 ナカくん――ようやくあの頃の彼が近付いてきたし、わたしもちゃんと向き合わなきゃ。


 そんなことを思っていたのに、


「ハ、ハーレムカフェ!? そんなこと……」


 この発表には彼も、そして街香も目を丸くして驚いていた。いくら彼が超鈍感でも女子たちに囲まれてあんなことやこんなことをされたりすれば、彼の気持ちなんてますますあやふやな状態になるのは明らか。


 こんなことを考えていた珠季も大概だけど、その前にきちんと彼に気持ちを伝えたい。そうじゃないと、何の為にここまで努力してきたのか分からなくなりそう。


 彼と再会してからずっと厳しい態度を取ってきたとはいえ、よりにもよって彼の気持ちは何となく世羅姉妹に向いているような気がして嫌な気分になる。


 だからこそ、学園祭の前に彼と何とかしたい。


「……待って、あの――お昼休みに……屋上に」


 絞り出した言葉、そして何としても彼を引き留める。わたしは弱い力を振り絞って背中のシャツを引っ張り、何とか伝えることが出来た。


 お昼休みにお話をして、それから、それから――。

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